アフタヌーンティー
アフタヌーンティーというものがある。イギリス発祥の喫茶習慣らしく、アフタヌーンスタンドなどと呼ばれる、3段くらいにお皿が重ねられた独特の道具を使う。そのお皿に生菓子や焼き菓子などが並べられる。
まっさらなアフタヌーンスタンドに自分の好きな美味しいものばかりを並べられたら、さぞ幸せだと思う。自分で並べるものを選ぶのだ。市場で買ったものをご飯の上に置いていく「勝手丼」のアフタヌーンティーバージョン。甘いものが好きなら天国のような試みだ。
私は甘いものが大好きだ。弟がパティシエをやっているくらいなので、地主家として甘いものが好きなのだ。そうなると理想というか、最強のアフタヌーンティーを作ってみたくなる。そこで帯広なのだ。帯広には六花亭の本社があるのだ。和菓子も洋菓子もあるお店だ。
六花亭と言えばマルセイバターサンド。私はこれが大好きでして、北海道土産でもらうと少し踊り出すほど好き。味が濃厚でたまらない。そんなマルセイバターサンドを作っている六花亭は帯広が本社で本店もあるのだ。そこで好きなものを買ってアフタヌーンスタンドに並べたいと思う。
本店で買う
六花亭はいろいろなところに店舗があるけれど、わざわざ本店に来たのは、ここでしか買えない商品もあるから。厳密には帯広本店や札幌本店など限られた店舗でしか買えない商品があるのだ。そのひとつが「マルセイアイスサンド」だ。
アイスクリームにホワイトチョコレートとレーズンを加え、ビスケットでサンドした一品。こちらは溶けるので、今回のアフタヌーンティーでは採用できないので、店内で食べた。濃厚で美味しかった。六花亭は濃厚なのだ。
他にも3時間以内に食べることが推奨されるサクサクパイなどがある。もちろん生菓子も並んでいる。ショートケーキとか、スフレチーズケーキとか。空港のお土産屋さんで見かける商品以外が豊富に並んでいた。
砂糖の話
六花亭の本社が帯広にあるのはなぜだろう? と考えるとやはり砂糖と関係があるのではないかと思う。日本における砂糖の歴史は実に面白い。歴史は比較的新しいと言える。古くは輸入に頼り、18世紀、徳川8代目将軍吉宗の時代になって国内での砂糖生産が始まる。この頃はサトウキビを使った砂糖だった。
明治になると甜菜(てんさい)を使った砂糖作りが始まる。現在の国内砂糖生産量の約8割が甜菜から作られている。砂糖を作るための甜菜はそのまま食べるとエグ味がすごいそうだけれど、砂糖は甘いから驚く。6キロの甜菜で1キロの砂糖を作ることができる。
最初に製糖所ができたのは北海道の紋鼈村(現在の伊達市)だった。しかし、甜菜栽培が上手くいかなかったこと、精糖技術が今のように発達していなかったことから、甜菜糖事業は北海道から姿を消す。
しかし、甜菜の試験栽培は続けられ、1918年に帯広の「北海道農事試験場十勝支場」で当時としては画期的な15.4%の糖分を得ることに成功する(現在と言っても1984年の資料だけれど糖分が18%以上あるので、15.4%は低い)。1919年にはご存じスズラン印でお馴染みの日本甜菜製糖株式会社の前身となる北海道製糖株式会社が帯広工場を作る。当時は世界的な砂糖不足と高騰があった。
六花亭は帯広千秋庵として1933年に開店するので、帯広という砂糖を手に入れやすい環境も六花亭が今なお続く要因の一つになったのではないだろうか。つまり帯広は砂糖の聖地でもあるのだ。そんな地域の六花亭のお菓子、美味しいに決まっているのだ。