靴について
僕が走り始めたのは15年くらい前だと思う。
たしか前の会社を辞めて、時間はあるけどお金がなかった時期のことだ。走るのはタダだから、くらいの軽い気持ちで始めた。
それが今では毎日のように練習に出かけ、フルマラソンからトレイルランニング、ウルトラマラソンまで走るようになった。
ここまでやるのに何が一番大切か、それは言うまでもなく靴である。
今回は僕がこれまでに履きつぶしてきた靴について、順を追ってお話したい。
注:ここからは走る人にとって、それぞれの段階に合わせた靴を紹介していきます。すべてが僕の経験上の話なので、全員がこれにあてはまるというわけではないです。
これから走り始める人へ
まずはこれから走り始める人へ。これから走り始める人は、まずはどれでも気に入った靴を買ったらいいと思う。正直どれを履いても走るのはつらい。だったらせめて好きな靴、かっこいい靴を買った方がいい。かっこいい靴を買えば履きたくなるし、靴を履いたら外に出たくなるだろう。
かといって最初から走るためだけに高い靴を買う必要はない。つらくてすぐにやめるかもしれないし、なにより高い靴はだいたいが上級者向けに作られているので、最初からそういうのを履くと走りにくいこともあるし最悪の場合ケガをするかもしれない。
そこで最初の1足はこのあたりの靴をすすめたい。
アシックスとかミズノの靴はすごく真面目に作られている印象がある。他のメーカーの靴が真面目じゃないとは言わないけれど、いろんな靴を履いたあとに改めてこの二つのメーカーを履くと、ほんとに細かいところまでこだわって作ってるなーと感動するのだ。最初はこういう真面目な靴がいいと思います。
10キロ止まらずに走れるようになった人へ
どうしたらフルマラソンを完走できるようになりますか?と聞かれることがある。そういう時にはよく「まずは時間を気にせず10キロ止まらずに走れるようになるといいですよ」とアドバイスしている。
歩くくらいのペースでいいので、なにしろ止まらずに10キロを走り切る。これはやってみるとわかるけど、なかなか高い壁なのだ。どんなにゆっくりしたペースでもだいたい5キロくらいで疲れてきて、7キロくらいで嫌になる。10キロ走り切るのは正直初心者にはかなり難しい。
最初の壁を乗り越えて10キロ止まらずに走ることができるようになったら、新しかった靴はいい具合になじんできて靴底もすり減っていると思う。できれば壊れるまでその靴を履き続けてほしいのだけれど、そのくらいの力がついたら次はこの辺りを買ってみてもいい。
ナイキのランニングシューズはとにかく速く走ることを目指して作られている。軽くて弾む。はじめて履くとどこまででも走れるような気分になる。でも今の実力だと無理をするとケガしかねないので、落ち着いて少しずつ距離を伸ばしていってもらいたい。
20キロ走れるようになった人へ
止まらずに10キロ走れるようになったら次はいよいよタイムを気にしていく。10キロを1時間で、これが目標である。10キロを1時間で(1キロを6分で)というのはすべてのランナーの基本となる速度といっていい。これをクリアしたあなたは晴れてシリアスランナーの仲間入りである。
これをクリアしたら次は距離を20キロに伸ばす。このとき、またタイムのことはいったん忘れてほしい。何時間かかってもいいからとにかく止まらずに20キロ走り切ること。気を付けてほしいのは、このくらいになってくると体のあちこちが痛くなってくるので、痛みがでたら消えるまでは走らないこと。走れば走るほど距離もタイムも伸びるけど、急に伸ばすと足がそれに付いていかないのだ。がまんの時期なのである。
20キロを止まらずに走れるようになったら次はまたタイムを2時間に縮めることを目指す。20キロを2時間で走る。これには正直かなりきつい練習が待っているし、達成するまでにそれなりの時間もかかるだろう。半年か1年か、もっとかかるかもしれない。それでも、やめなければほぼ全員がいつかは越えられる壁だと思う。
これで完成です
2時間で20キロ走れるようになったらそれで完成である。あなたはもうフルマラソンなら完走できるくらいの実力がついているはず。あとはマラソン大会にエントリーして、1ヵ月くらい前に何度か30キロくらいまで走ってみる。それで当日は完走間違いなしなのである。
え、40キロ走ったことないのにレースに出ていいの?と思うだろう。いいのである。実際どんなに練習しても35キロを超えてくると地獄が待っている。レースに出る前に地獄を見ると本番が怖くなっちゃうだろう。そこから先の世界はぜひレース当日に経験してほしい。
レース用シューズを買おう
ここまで練習するともう靴はボロボロだと思うので、いよいよレースシューズを買うことになる。僕がこれまでに履いてきた中で、とくにオススメのレースシューズをいくつか挙げておきます。こういう記事を書いておいてあれですが、ここから先は実際にお店で靴に足を入れて、しっくりくるやつを選んでほしい。人の足は思いのほかデリケートなので、フルマラソンくらいの距離を走るとなると靴との一体感がないと持たないのだ。
アディゼロシリーズはとにかく軽くて路面をがっちりとらえるイメージがある。流行りの厚底が苦手な人はこれがいいと思います。
ズームフライは同じ名前で種類がたくさんあるので迷うと思うんですが、初代よりも二代目以降がおすすめ。上位モデルのヴェイパーフライ(高い)とほぼ変わらないです。
フルマラソン完走しちゃった人へ
フルマラソンを完走しちゃったあなたは、少々の達成感では満足できない体になってしまったことだろう。おめでとうございます!同時に、あの達成感を得るための苦労ならば進んで引き受ける強さも手に入れたはずだ。
日々の暮らしの中でマラソンよりもつらいことってほとんどない。つまりこれからどんな嫌なことがあっても「マラソンよりはまし!」と思うことで耐えられるのだ。
あとはせっせと練習してタイムを縮め続けてください。そんなあなたにおすすめの靴がこちら。
ホカオネオネはソールが厚くてショックを吸収してくれるので、練習量が増えても蓄積される疲労が少ない。以前はもっと重かったのだけれど、最近は軽量化されてスピードにも対応してきた。ウルトラマラソンなんかを目指す人にもおすすめである。
さらなるスピードを求めちゃう人へ
注:ここから先はきりがない世界なので正直あまりおすすめしません。僕は楽しくてやってるけど、それには環境とか家族とか友だちとか仕事とか性格とか、いろいろな要素が関係してきます。
僕は最初にフルマラソンを走ったのがたぶん2005年くらいで、しばらくは順調にタイムを縮めていったのだけれど、2011年の東京マラソンを境にぱたりと伸びが止まり、その後長い低迷の時代にはいる。理由は明確で、たいした練習をしてこなかったのだ。
現実的に言うとマラソンには限界があると思う。たとえば市民ランナーがまず目指すサブフォー(フルマラソンを4時間以内に完走すること)は練習していれば誰でもいつかは達成できる。しかしサブスリー(3時間以内に完走)となると生半可な練習では達成できない。これまでとは全く違った練習が求められる。
僕は3時間15分を切ったあたりで伸び悩み、そこからの10分を削るのに本当に苦労した。というか今でも苦労している。ここ2年くらい練習方法をいろいろ変えてみて3時間7分まで縮めた。このくらいになってくると1分縮めることがどれだけ大変なことか。
その1分を縮めるために僕が履いた靴がこちら。
ナイキの厚底シューズは賛否両論あって、つまり反発力が高いのでレースで履くのはズルだという人がいれば、走り方が合わなくて逆に遅くなったという人や、体が高い反発力に負けてケガしちゃう人もいる。僕も最初はしっくりこなかったのだけれど、積極的にトラックでスピード練習をするようになってからは違和感なく履きこなせるようになった。
ここから先は履いたことないけど欲しい靴です。
この靴ならばあと5分は縮められると思う(でも高いから買えない)。
憧れのターサー。厚底シューズが流行る以前、速い人はみんなこれを履いていた。
ジョイナス!
というわけでマラソンは一度ゴールテープを切ってもその先にまだまだ辛く長いトレーニングの道が待っている。そんな辛いことをなんであえてやるのか、その理由は10年以上やっていても見えてこない。
ただ、厳しい練習のあと、レースを終えて、ボロボロになった靴を洗っていると(頑張ったなあ)と思えるんです。
トレイルランニングのシューズについてもいつかまとめますのでお楽しみに!