特集 2024年10月22日

歩きながら読書をした場合、どのくらい歩けば一冊読了できるのか?

号泣

妻に先導されるまま上野の山をくだり、不忍池を周回する。

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それにしても気持ちの良い朝だ。普通であれば

物語はコペル君の級友、浦川君へのいじめの話になっていた。コペル君が苦手にしていた北見君の取った意外な行動を読んだ途端、自分でも信じられないことが起きた。

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号泣

40過ぎてから涙腺が馬鹿になっているのだが、まさかここで…。路上で鼻水垂らして泣きじゃくる夫を写真におさめる妻。ランナー達が明らかに我々を避けて走っていく。

しかし、俄然この作品への興味が湧いてきた。ページを繰る速度も段違いに速くなる。これならいける!

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よ~し、ガンガンいこうぜ!​​

…と思ったが、1時間30分経過しスタート地点に戻ってきた時点でまだ半分しか読めてないことが判明し、へたりこむ。

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「急に胸が熱くなって来たと思うと、たちまち涙があふれて来ました」(吉野,同書,p231)

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谷中方面へ

犬の散歩にジョギング。8時を過ぎた頃から、上野公園も徐々に人出が多くなってきた。谷中方面に進んだ方が人がいないだろうと判断し、公園を離れることにした。

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日陰と日向で上着を脱いだり着たり。この頃にはもう表情が死んでいる

我々の予測は的中し、公園から離れるとまだまだ人影はまばら。そのまま谷中霊園に歩を進める。途中、妻がトイレに立ち寄ったのだが、出てくるなり待っていた私を見て言った。「なんで律儀に読んでないの?」。

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「座って待ってる間に少しでも読み進めろよ」と言いたいようだ。でもそれはルール違反
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あくまで歩きながら読まなければ
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あまりにキツくて(読了できませんでした、というオチにしちゃおうかな?)と考え始めた頃、物語はようやく終盤に。コペル君が固い絆で結ばれていた友人達を裏切ってしまい、心をかき乱される展開になってきた。

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墓地で感情を高ぶらせる筆者

思い悩むコペル君が叔父さんの力強い言葉に押され、勇気を出してある行動に出た瞬間。再びの号泣タイムが訪れた。

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良かった…。本当に良かった!墓地でむせび泣く

そして。9時を少し過ぎた頃、私は遂に本を読み終えた。「やったぞ~!」。久しく記憶にないほどの達成感に思わず両手を掲げたが、ちょうど公衆便所の前だったので物凄い快便の人みたいになってしまった。

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「そう一々答えながら、コペル君は、見る見る自分の顔が明るくなって来るのを覚えました」(吉野,同書,p261)

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「歩き読書」検証結果

『君たちはどう生きるか』本編294ページ

読了までの時間:2時間20分(6時57分から9時17分)
読了までの歩数:14,045歩
読了までの距離:9.8km

二宮金次郎スタイルを実際にやってみた感想としては、歩きながらの読書は不可能ではなかった。だが同時に「慣れるまでに時間が掛かる」「都会で1人でやるのはやめた方が良い」ということも分かった。

検証から数日経ち、今これを書いている段階でも身体中が痛い。結論としては「死ぬほど疲れるので、本は普通に読もう!」ということである。

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でも純粋にこの本、面白かった。さすが180万部!

 


誕生日の朝に

今回の検証を行うにあたり、「とにかく人に迷惑をかけない」をテーマに掲げ準備をした。だが一人だけ、大変な迷惑を被った人物がいる。妻である。

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妻は何を考え前を歩いていたのか?


どんなに疲れても、私は本を一冊読み切る達成感を味わえた。しかし妻はどうだろう?早朝に起こされ、ただただ10km近く歩かされただけなのだ。私は記事を書くたび彼女に付き合ってもらっているが、それでも今回ほど有難さと申し訳なさを感じたことはない。

この先の人生、私はどう生きるか?10月14日、月曜祝日。私が44歳になった日の出来事である。

「お互いに、この苦しい思いの中から、いつも新たな自信を汲み出してゆこうではないか」(吉野,同書,p257)

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