特集 2022年7月22日

沖縄の食堂でポークたまご定食を食べ比べてみた

ポークたまごとは、缶詰のポークランチョンミートに卵焼きを添えた沖縄の大衆的な料理だ。沖縄県外ではポークといえば「スパム」が有名だが、沖縄ではスーパーに行けば様々なメーカーの商品が売られていることもあり総じて「ポーク」と呼ばれている。

沖縄の食堂ではポークたまごにごはんと味噌汁などの汁物を添えた「ポークたまご定食」があるのだが、ポークと卵焼きの形状、またサラダなど添えられているものが店によってそれぞれ異なる。そこで今回、沖縄県民以外にはあまり馴染みのない「ポークたまご定食」をご紹介すべく、5店舗を食べ歩いてみた。

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食堂で注文するポークたまごは美味い

ちなみにこのポークたまご、基本的に切って焼くだけという簡単な調理法ということもあって朝食などに家庭で食べることが多く、わざわざ食堂で注文する人はどちらかというと少ない。しかしながら多くの食堂のメニューに存在しているということは、きっと沖縄県民には「今日はどうしてもポークたまご!」というタイミングがあるからなのかもしれない。たしかに、食堂で注文するポークたまごは家で食べるものとはひと味もふた味も違っていて妙に美味しいのだ。

ハイウェイ食堂(那覇市)

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バーのような外観だが食堂である

最初は那覇にあるハイウェイ食堂。なんと24時間営業で近隣にも全然別の名前だけど系列店がある不思議な食堂。

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メニューは和洋中、ステーキからチャンプルーまでものすごい数がある。色々目移りしてしまうが、ぐっとこらえてポークたまご定食を。値段は650円。

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ケチャップの量がものすごい

こちらがポークたまご定食。写真では分かりにくいがメインの皿にはマカロニサラダ、キャベツ千切り、たまご焼きにポークが2切れという構成。

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このポークの厚さ!自宅でポークを使う時は贅沢して厚く切ろうと思ってもなかなかここまで思い切って厚くできない。分厚いポークをたっぷりのケチャップで食べる…なんだか背徳感すら感じられる。

まんぷく食堂(南城市)

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続いては南城市にある老舗のまんぷく食堂。

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この看板だけでも沖縄っぽい。下の方に書かれているスラブ打ちとは鉄筋コンクリート造の家を建てる際の上棟式に相当する。沖縄では、この段階で職人さんや建設に関わる人たちをもてなし、お弁当やオードブルとともに汁物を振る舞いお祝いをするのだ。

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繁華街から外れたさとうきび畑の中にあるので、お客さんは地元の人が多い印象だが、壁には有名人のサインがびっしりだし、駐車場にはレンタカーもたくさん止まっているので観光客も多そうだ。

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メニューは多いが、当店自慢と謳われている、牛汁、山羊汁の注文率が以上に高い。

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その中であえてのポークたまご定食である。価格は650円だ。
この鮮やかさも美味しそう。

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カリカリに焼かれた三角形のポークに、フワフワのだし巻き卵がついてくる。
カリカリポーク、ふわふわたまご、カリカリ、フワフワと食感の違いも楽しいし、ポークの濃い味とだし巻きの出汁味の振り幅も絶妙で、シンプルメニューなのに飽きることなく最後までお箸が止まらないのである。

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お食事処 三笠(那覇市)

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那覇市のお食事処 三笠。沖縄の観光ガイドブックなどにもよく掲載されている有名店であり、地元客はもちろん観光客もよく訪れる庶民的な食堂だ。

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那覇の中心地に近い立地からビジネスマンの利用も多くお昼時はしばしば満席になるが、テキパキと厨房で働くおばちゃんたちのチームワークが素晴らしく意外と回転は早い。三笠といえば「ちゃんぽん」が名物で、この日も訪れた客の半数以上はちゃんぽんを注文していた。ちゃんぽんといっても沖縄のちゃんぽんは麺類ではなく、ごはんの上に野菜炒めがのったあんかけごはんのようなものなのだが、これがまた絶品なのだ。

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こちらがお食事処 三笠のポークたまご、650円。

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オムレツのような見た目の大きめの半円状の薄焼き卵に、カリッと焼かれたポークが4枚添えられたスタイル。
キャベツの千切りとマカロニサラダが添えられている。

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この薄焼き卵、箸で割ると少しとろっとした半熟部分が残っており焼き加減が実に素晴らしい。次々に入るたくさんの注文をさばきつつ、こんなに繊細に焼き上げるおばちゃんたちの熟練の技に脱帽だ。
ポークの厚みは1〜1.5cmほどだろうか。やさしい味付けの薄焼き卵と塩気の強いポークとがあいまって、箸がどんどん進んでしまう美味しさだ。

丸長食堂(沖縄市)

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こちらは沖縄市にある老舗食堂「丸長食堂」。看板には馬汁と書かれていて売りなのかもしれないが馬汁を食べている人を見たことがない(メニューにはある)。

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ポークたまご定食は600円。写真を見返していて気づいたのだがスープは500円。100円しか違わないスープとはいったい何なのだろうか。今度頼んでみようと思う。

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こちらがポークたまご定食。だいたいポークたまご定食を頼むとポークは偶数枚なことが多い気がするのだが丸長食堂ではポークは3枚だった。たまごは薄焼きでポークの下に隠れている。

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ケチャップはテーブルに置いてあるのでお好みの量をかけて食べることができる。

鳥と卵の専門店 鳥玉(中城村)

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最後は少し異色なポークたまごを食べるべく、中城村にある鳥と卵の専門店 鳥玉を訪れた。こちらは鮮度にこだわった鶏肉と玉子料理を提供する沖縄発の専門店で、沖縄県内5店舗をはじめ東京や千葉にも進出している。

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親子丼や唐揚げ、チキン南蛮、オムライスなど様々な卵料理のラインアップの中にポークたまご定食もある。

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こちらが鳥玉のポークたまご、650円。
明らかに他の食堂とはたまごの様子が違うことにお気づきだろうか。そう、ポークたまごのたまごが切られていない「だし巻き」なのだ。

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トレイがテーブルに置かれた瞬間、大きなだし巻きが「ぶるん」と震えるほど出汁がたっぷりと含まれている。

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こだわりのEM琉球卵を使用したというだし巻きは、崩れるか崩れないかギリギリのラインを攻めたぷるっぷるのふわっふわ食感。がつんとかつお出汁が効いており、単独で食べてもめちゃくちゃうまい。
かたやポークも今回食べたなかで最も分厚く、表面はカリカリに焼かれておりこれまたうまい。このポークたまごは昔ながらの沖縄の食堂の素朴なポークたまごとは少し異なる「進化系ポークたまご」と言えるのかもしれない。


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沖縄には大きなポーク缶も売られているよ

というわけで南は南城市から北は沖縄市まで、沖縄本島内5箇所の食堂でポークたまご定食を食べ歩いてみた。
普段何気なく食べていたポークたまご定食だが、こうして比べてみると店の個性は「ポーク」ではなく「卵焼き」の部分に色濃く出ることを感じた。
薄焼き卵や分厚い卵焼き、出汁を効かせただし巻など、様々な形状の卵焼きがポークに添えられていた。共通しているのはどれもやさしい薄味で、塩気と旨味の強いポークと合わさると絶妙なバランスになるということ。最初にポークにたまごの組み合わせを思いついた人に心からの拍手を贈りたい。

またポークの部分に関して言えば、家庭で使うポークは四角い形のものが一般的だが、食堂では業務用として売られている巨大な円柱形の缶に入ったポークを使っている店が多い印象だった。ちなみに店ごとの味の違いは特に分からず、総じて「ポークうまい」という知能が低い感じの感想しか出てこなかった。

ソーキそばやラフテーもいいが、この夏あえて「ポークたまご定食」を推したい。 

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