秘密のエレベーター
うなぎパイファクトリーの中に、隠れお気に入りポイントがある。
1階と2階を結ぶエレベーターだ。
なにがお気に入りかというと、エレベーターの中のにおい。
焼きたてうなぎパイのいいにおいが、このエレベーターにギュッと詰められている。
階段でも上がれるけど、あえて乗りたい秘密のエレベーター。
浜松銘菓・うなぎパイ。
現地で買って、またお土産としてもらって食べたことがある人も多いだろう。
しかし、うなぎパイの会社が作るうなぎパイ以外のパイを食べた経験のある人は、一体どれくらいいるだろうか。
今回は、そんなうなぎパイじゃないパイに光を当てたい。
以前デイリーポータルZで乙幡啓子さんが紹介されたように、浜松にはうなぎパイを全身で感じられる『うなぎパイファクトリー』がある。
観光客はもちろん、地元民にも人気のうなぎパイファクトリー。我が家も例に漏れず大ファンである。
特にうなぎパイファクトリー内にある『うなぎパイカフェ』のパフェが大好きで、パフェを食べたい時は必ずここを訪れている。
以前受付のスタッフさんが「いつもありがとうございます」と声をかけてくれたので「何度も来てすみません…」と恐縮したら、「毎日来てくれて大丈夫ですよ!」と神様のような言葉をいただいた。
というのもここうなぎパイファクトリーは、入場無料にも関わらず、お土産としてミニサイズのうなぎパイが人数分もらえるのである。
訪れるたびこんな素敵なお土産をいただけるので、スタッフさんに顔を覚えられるほど足しげく通うのも少し気が引ける…といったところだ。通うけど。
顔を覚えられるほど通い詰めているのに、毎度気になりつつ試していないことがひとつだけある。
うなぎパイじゃないパイを買って食べることだ。
うなぎパイを製造・販売している春華堂は、実はうなぎパイ以外のパイもたくさん作っている。お土産売り場で見かけはするものの、これまで手に取る機会がなかった。
しかし、今回は違う。
うなぎパイファクトリーで、あの有名なうなぎパイ…じゃないパイをたくさん買うのだ!
多くの人がうなぎパイをかごに詰めるのを横目に、総額4,000円弱うなぎパイ以外のパイを買った。
レジのスタッフさんに「こんなに買うのにうなぎパイを買わないんですか?」と言われている気がして、焦って小銭を落としそうになった。実際はPayPayで払ったので小銭はおろか財布すら出していない。けどひよこのメンタルなので、それくらい焦った。
こちらが共に帰宅したじゃないほうパイの皆さん。
パッケージもカラフルでかわいい商品が多かったので、外で撮影してみた。灼熱のウッドデッキに足をジュッと焼かれる。夏ですね!
先に結論を書くと、うなぎパイじゃないパイもこれまで食べずに過ごしてきた過去の自分を悔いるほどおいしかった。
正直な話、内心「とはいえやっぱりうなぎパイが一番うまい」みたいなオチになるんじゃないかと心配していた。
そんな心配もなんのその、個人的にはあのうなぎパイをも超える素晴らしいパイに出会えた。
ブラボー…春華堂、ブラボー!!!
早速ランキング形式で記録していこう。
第1位:厚焼きリーフパイ 浜松バジル
いきなり第1位から発表。
おかずも一番好きなものから食べるタイプです。
厚焼きリーフパイ 浜松バジルは、地元浜松で栽培されたホーリーバジルというバジルのパウダーを使用したパイで、名前の通り分厚く、食べ応えも抜群。
一口食べた瞬間、バジルの風味がブワァァァンッ!!!と広がる。
広がるというより、誤解を恐れず書くと“襲いかかる”というほうがしっくりくる。それくらいパンチのあるバジルだった。一瞬、バジルでぶん殴られたかと思った。
乾燥バジルをそのまま食べているのかと錯覚するくらい、圧倒的バジル。この遠慮のないバジル感が、バジル好きにはたまらなかった。
食感はもちろんサッッックサク。810もの層が折り重ねられているそう。ASMR配信したらウケそうだなとか、余計なことばかり考えながらあっという間に完食。
第2位:しらすパイ わさび
なんとこのしらすパイわさびは甘くないパイだった。
味はしらすとわさびでおせんべい系のしょっぱい味、だけど食感はサクサクのパイという不思議な一品。
わさびの風味もほんのりやさしく香る程度で、ツンとした辛さはない。わさび味のお菓子を食べる時、想像を超える辛さがくるのではないかと毎度ドキドキしてしまうが、これなら安心して楽しめそうだ。わさび味のお菓子で泣きたくないという変なプライドがある。
お酒にも絶対合うし、甘いお菓子よりしょっぱいお菓子が好きなわたしにめちゃくちゃおすすめ。
8枚も入ってる~と調子よく食べていたら、一番はじめになくなった。あれ、全部食べたの、わたし…?
第3位:大地のパイ 紅はるか
この大地のパイ 紅はるかは、通常捨てられてしまううなぎの骨や頭などを肥料に栽培した「うなぎいも」を使用している。浜松にはうなぎいもを使用した商品がたくさんあるので、浜松に立ち寄った際は探してみてほしいし、うなぎの味はしないので安心してほしい。
さつまいもをとてもダイレクトに感じるのでなにが入っているのか確認したら、干し芋と焼き芋、2種類の紅はるかが入っていた。
干し芋も焼き芋も、そのままでも一品として成立する立派なおやつ。それをパイで包むなんて、考えた人を今すぐ抱きしめたい。
第4位:大地のパイ キウイ
まずキウイのパイが珍しいのではないか。わたしは初めて食べた。My first kiwi pie.
ドライキウイとフレッシュキウイの2種類のキウイが入っていて、とてつもなくキウイを感じる。中の餡に具材を2種類盛り込むのがミソなのか。さては大地のパイ 紅はるかに干し芋と焼き芋を入れたあの人が考えたな。策士だ…
さらに驚いたのが、キウイ独特のつぶつぶ感。種も入っているので、種を噛んだ時のあのプチプチした食感まで味わえる。
パイひとつでここまで再現されているなんて、もう春華堂には足を向けて寝られない。今ちょうど足を向ける角度で寝てしまっているので、今夜から向きを変えたい。
第5位:大地のパイ パイナップル
キウイと同じく、ドライパイナップルとフレッシュパイナップル2種類のパイナップルが入っており、めいっぱい果肉感が楽しめる。そう、策士の仕業だ。
パイナップルがこれでもかというくらいゴロゴロ詰め込まれていて、シャキッとした食物繊維の食感もあった。
大地のパイシリーズはどれも餡がぎっしり入っていて、春華堂から「おいしいさつまいもを、おいしい果物をぜひパイで食べてください!!」というメッセージを受け取ったように感じた。
そのメッセージ、ちゃんと受け取りましたよと工場に向かって大きく手を振った。大人なので、心の中で。
第6位同着:厚焼きリーフパイ メープル・しらすパイ ザラメ
袋を開けた瞬間、メープルの甘い香りがフワッと香る。フワッと香った空気をビンに詰めて持ち歩いて、嫌なことがあった時にこっそり嗅ぎたい。
メープルシュガーとメープルシロップの効果で、表面がカリッとした食感になっているのもうれしい。メープルパイにしろ、メロンパンにしろ、人は表面がカリッとしているものが好きだ。
ザラメというとザラメせんべいのような庶民派お菓子のイメージがあったが、パイになることでグッとおしゃれに感じた。
ザラメならではの歯触りのよさ、やさしい甘み、そして持ちやすいスティックタイプ。これも気がついたらなくなっているタイプのお菓子だろう。おいしすぎるのも考えもんだ。
春華堂のパイは、うなぎパイ以外のパイもひとつひとつが名物になっていいくらい個性があってとてもおいしかった。
もちろんうなぎパイの素晴らしさは言うまでもない。うなぎパイはおいしさも知名度も群を抜いている。
うなぎパイは殿堂入りで、ほかのパイは現役選手ということでどうだろう。サンリオでいうところのキティちゃんみたいなもの、という例えを思いついたが、調べたらキティちゃんは殿堂入りも引退もせず、生涯現役でサンリオキャラクター大賞に参戦しているらしい。
うなぎパイも、うなぎパイ以外のパイも、キティちゃんのように慢心せずさらにおいしさに磨きをかけてほしい。
うなぎパイファクトリーの中に、隠れお気に入りポイントがある。
1階と2階を結ぶエレベーターだ。
なにがお気に入りかというと、エレベーターの中のにおい。
焼きたてうなぎパイのいいにおいが、このエレベーターにギュッと詰められている。
階段でも上がれるけど、あえて乗りたい秘密のエレベーター。
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