特集 2023年2月11日

丸い玉になったり目玉焼きになったりする仕事~人形劇団の日常とは

三味線教室で怒られる

石川:かなりいろんなものをDIYしていたみたいですね。

とりもちうずら:はい。言われたら作るしかないっていう感じです。それ無理でしょってものとか、なんだかよくわからないものも。

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人形、大道具、小道具、衣装、音楽、何でも作るらしい

石川:例えば?

とりもちうずら:「回転しながら中から旗が出てきて、クルクル回りながら派手なやつ」とかふわっとしたことを言われたり。別のときは「傘でおならをやりたい」って言われて。ビニール傘のビニールを剥いで、布で傘を作り直して、ふわふわつけてとか。完成図がわからない状態で作るというのが基本ですね。

石川:それは今の記事に通じるものがありますね。

とりもちうずら:作り方が全然わからないようなものばかり言われるので、数こなすうちになんとなく慣れて作れるようになってきました。

石川:とりもちさん、わらじの着ぐるみとか、バクのバッグとかけっこう大きいものをわりとサクッと作るじゃないですか。サクッとじゃないかもしれないけど。経験が生きてますよね。

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化けわらじの着ぐるみ(「妖怪コンテストで優勝した」より)
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バクのバックパック(「バクのバックパックをつくる」より)

 とりもちうずら:着ぐるみとか作ったことがなかったんですけど、でも作れるだろうなって思えます。

石川:劇団生活で基礎工作力が上がってるんですよ。あとは習い事もしたって書いてあるじゃないですか。三味線って習ってすぐ弾けるものですか?

とりもちうずら:高校時代にギターを習ってたんです。経験者だからすぐに弾けると思っていたんですけど、師匠に「西洋かぶれが!」みたいな感じですごい怒られて。全然弾けなかったですね。あと地唄も歌ったんですけど、「J-POPの拍で歌うな!」って。

石川:あはは。目の敵にされてるじゃないですか。

とりもちうずら:厳しい師匠でした。でも1曲だけ弾きながら歌えるようになりましたよ。

石川:そういう教室って、「舞台のために1曲だけ弾きたい」みたいな需要もあるんですね。

とりもちうずら:そうですね。でも、小学生とかも習いに来てるようなところで、私は大人だからかなり厳し目にされたと思います…。

石川:しかも1ヶ月後に本番とか言うから。ビシビシいくしかない。

とりもちうずら:けっこうビシビシ。

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舞台で三味線を弾くとりもちさん

石川:舞台ではうまく弾けました?

とりもちうずら:三味線ってチューニングがすぐに狂うんです。一回シャンって弾いたらもう狂ってるみたいな感じ。それを上演中に影でずっとチューニング合わせてるみたいな。変なタイミングでは鳴らせないから、うるさいシーンとか爆音がかかったシーンで「ここだっ!」ってベベベンって鳴らして合わせるとか、チューニングが大変な楽器でした。

石川:あはは。効果音に紛れて。

 

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アンダーグラウンドの人形劇とは

石川:小学校でやることが多いって話でしたけど、海外の招待公演とかは大人向けのをやるんですか?

とりもちうずら:いろいろありますけど、そもそも子ども向け大人向けってそこまで分かれてないかも。昔話なんかも子供の前でよくやりますけど、わりと暴力的な話も多いじゃないですか。普通に人が死んだりとか。

石川:たとえば桃太郎って、絵本で読むと、戦いました、勝ちました、じゃないですか。それが実際人形劇にでやるときには格闘をちゃんと演じなきゃいけない、みたいなところ?

とりもちうずら:そうですね。最終的に暴力で解決する話なので。でも人間が演じるとショッキングなシーンも、人形劇ならちょっとだけ滑稽にできるところはあると思います。

石川:人間がやるよりはちょっと抽象化されるというか、コミカライズされてるみたいな。

とりもちうずら:そうですね。なので、映画とか見てて辛いシーンっていっぱいあると思うんですけど、人形劇でやると角が丸くなってやわらかい表現として安心して見れるんじゃないかなっていう。

石川:それは人形劇の良さですね。記事のなかで、「舞台ではかなりアンダーグラウンドの作品もあったりする」って書いてありますが、これはどういうものですか?

とりもちうずら:いちどR指定のやつを見たんですけど、人間の役者さんも出てて、裸だったりするんですよ。で、内容も怖くて、ちょっと難解な劇。怖すぎて隣の友達の手をずっと握ってました。

石川:人形のオブラートを通しても怖い。

とりもちうずら:あとは海外の作品で、人形じゃなくて、壁にマスキングテープを貼って人を作ったりするんです。こんどそれを取ると、その人がいなくなっちゃったって表現になるんですよね。そうやって話を進めていくという劇。

石川:それは面白そうですね。見たい気がする。そういうのまで含めて、人形劇なんですね。

とりもちうずら:座布団だけでやったりとか。ただの物を登場人物に見立ててやるというのもあります。

石川:人形劇の世界、広いですね。知らなかった。

 

生放送「記事の森」やってます

この対談は、先日放送したトーク配信『樹液でも飲みながら記事を振り返る「記事の森」』から抜粋したものです。番組ではこの2倍くらいしゃべってますので、対談をお楽しみいただけた方はぜひアーカイブをどうぞ。


次回は、2月後半に配信予定です!ぜひチャンネル登録をお願いします!

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