大人二人分のスペースをとる
わりと軽いし、大容量だし、普段使いに良さそうなのだが、大きいのでかなり置き場所に困る。
満員電車には乗れなさそうなので、バクが喜びそうな、自然溢れる広い土地に連れていくのがいいかもしれない。
バクのバックパックが欲しいけど、探しても売っていないので自分でつくることにした。
私は荷物が多い。ちょっと出かけるだけでも、2泊3日旅行ぐらいの量がある。
量を減らすのは無理そうだったので、大容量でかわいいバックパックを探すことにした。
ふと思い立ったのだが、背中にしがみついている感じのバクのバックパックがあったら可愛いのではないか。
リュックサックではなくバクのバックパック。私は言葉の戯れと呼んでいるが、つまりダジャレである。
気まずい初対面の人とも、バクのバックパックをもっていれば話題が一つ増えて助かるかもしれない。
しかし、そんなものはどこにも売ってなさそうだったので、自分で作ってみることにした。
出来上がったのがこちら。
なりゆきに任せて作っていたら、自分で想像してたより1.5倍くらい大きくなってしまった。どういうなりゆきか、説明していこう。
ぬいぐるみをつくる要領で作っていけばいいのだろうけど、カバンなので収納も作らなくてはいけない。
そのときたまたまニトリでマットを買っており、入っていた袋がわりと丈夫だったので、それをバクの胴&収納スペースにすることにした。
頭とおしりの素材はスポンジみたいな素材がいいのではないかと思い、いろいろ探すも、大きいサイズのスポンジを取り扱っているところが見つからない。
試しにマットレスなどを作っているウレタン会社に電話をかけてみた。
直接取りにきてくれるなら、個人にも必要な大きさに切って販売できるとのことだった。やった!!
このウレタンという素材、全部で12000円ぐらいした。
ちょっと多めに頼んだとはいえ、高い……!! 牛丼なら30杯分である。
想像していたより高級感あふれるカバンになりそうだ。
電車で運ぶと言ったら、
「え!? 車じゃないの!? 嘘でしょ!?」と言い、工場のおじさんが絶句していた。
軽いけど、長距離を手で運ぶのは大変だからといって、急遽背負えるようにしばり直してくれた。おじさんありがとう!
部屋の真ん中でウレタンを削ったことで、部屋中に静電気が満ちた空間となってしまった。
壁のあらゆるところに張り付いて全然取れない。
私が移動するたびウレタンが舞うので、トイレも台所も全てウレタンが散りばめられた空間となってしまった。
どんなにコロコロをしてから出かけても、職場に行くたび
「ウレタンついてますよ」と言われる日々が続いた。
どうしよう。あだ名がウレタンになってしまうかもしれない。
手縫いということもあって全然作業が進まない。
1日中縫い続け、完成したのは早朝5時であった。
徹夜作業に気が遠くなりつつも、朝の薄暗い明かりで完成したバクをみて、なぜか笑いが止まらなくなくなった。
疲れているのか、徹夜でハイになっているのか、バク自体が面白いのか、全くわからなかったが、ひとしきり笑った後、気絶するように寝てしまった。
徹夜して作業するのは学生時代以来してなかったので、疲れたけど久々に没頭できて楽しかった。
サイのリュックを背負った通りすがりの子どもに、「それちょっと大きすぎじゃない?」と言われた。たしかに大きい。
誰かをおんぶしている感覚に近く、ずっと背負っていると前屈みになって背中が辛い。
普段使いにするには、斜めがけバッグにもできた方がいいのではないか。
は……っ!!
でも、「バク」だから「バックパック」にするという言葉の戯れで始まった企画なのに、
「バッグ」にしたら濁音だからコンセプトがブレるのではないか……??
……いや、濁音を追加すればきっと大丈夫だ!!!
バクのバッグになった。
でも中に入れている荷物が重いと背負った方が楽なので、いい感じに使い分けていこうと思う。
入り口で並んでいると、動物園にくる人たちは皆動物好きなのか、
「見て! あのリュックかわいい!!」
「欲しい」
というざわめきが聞こえてきた。
暑すぎてみんな木陰に隠れているらしく、全然見えない。
あまりにもバクがいなくてぐずっている子どもに、
「ほら! バクいるよ!見てごらん!」
と言って私のほうを指差しているお母さんがいる。
その他にも、
「わぁ〜! バクだ〜!」
と言ってカバンに抱きついてくる子どももいた。
本物のバクを見たときと、ほぼ同じリアクションを向けられているのかもしれない、と思った。
そのとき、
「あの〜、そのカバン、どこで売っているんでしょうか」
と話しかけてきたお母さんと、小さい女の子がいた。
「自分で作ったんです」
と説明すると、
「え!すごい!どうやって?」
とさらに突っ込んで聞いてきた。
どうやら娘さんがバクがとても好きらしい。
バクエリアでずっと私のことが気になっていたらしく、キリンエリアでもう一度会ったので話しかけたそうだ。
「もしよかったら背負いますか?」
「え!いいんですか!じゃあ、背負って写真撮らせてもらう?」
お母さんが聞くと、女の子が小さくうなずいたので、バクを貸してあげた。
子どもが背負うとかなりかわいかった。
バク好きの子に背負ってもらえてうれしい。
実は、布が余ったので、小さいバクの赤ちゃんポーチも作っていた。
園内のレストランでお金を払うとき、バクバックパックからこれを取り出すと、レジの人に、
「もしかして、バッグインバックですか……?」
と突っ込まれた。
夕方になり、少し涼しくなってきたので、もう一度バクに会いにいくことにした。
ついに会えた……!! 実際見ると思っていたよりさらに大きい!!
見れば見るほど、なんだこのユニークな生き物は!!
今回バックパックを作ったことでバクに対してかなり愛着が芽生えていたため、好きな芸能人に会ったような感動があった。かわいいぞ、バク!!
何かを好きになるには、大きいバックパックを作ればいいのかもしれない、と思った。
わりと軽いし、大容量だし、普段使いに良さそうなのだが、大きいのでかなり置き場所に困る。
満員電車には乗れなさそうなので、バクが喜びそうな、自然溢れる広い土地に連れていくのがいいかもしれない。
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