小学校を巡る旅公演
石川:大学を出て、さあ就職ってなったときになかなか人形劇団って出てこないと思うんですけど、なぜやろうと思ったんですか?
とりもちうずら:大学が人形劇サークルで、先輩達も卒業後は人形劇団に入る人が多かったんですよ。だからわりと身近に感じてて。当然のように入りました。
石川:人形劇団って代々の先輩が入るほどいっぱいあるんですか?
とりもちうずら:いっぱいあると思います。大きいところから小さいところまで。
石川:記事には、全国を回るって書いてあるじゃないですか。劇団が少ないから全国で引っ張りだこってことではないんですか?
とりもちうずら:営業をかけるんですよ。まず、だいたい旅で行くのって小学校が多いんです。芸術鑑賞教室という授業が年に1回あって、人形劇を見るから。それに向けて電話で営業するんです。それで例えば大阪の学校がとれたってなったら、通り道にある別の小学校にも営業をかけて、繋げて旅公演にします。
石川:あー、点でつなげて旅程を作っていくんだ。ほんと、旅芸人ですね。
とりもちうずら:繁忙期はずっと旅してますね。一回旅公演に出ると2週間~1ヶ月続きます。
石川:すごい大変な仕事だ。
とりもちうずら:でも私としては、サークルでやってたことをお金もらってできるっていう感覚だったから、最高だなと思ってやってましたね。
石川:確かにね。それ考えたらそうだ。天職じゃないですか。
着ぐるみをばらしてスーツケースに詰めて渡航
石川:海外に行くこともあるそうですね。
とりもちうずら:本当にたまにです。海外の人形劇のフェスティバルに呼ばれたりとか。
石川:人形劇というもの自体は海外にもあるんですか?
とりもちうずら:全然あるし、なんなら、チェコとかあそこらへんでは人形劇は日本の歌舞伎的みたいなポジションです。
石川:あーチェコだ。チェコありますね。
とりもちうずら:ロシアなんかは劇団員はもはや公務員みたいな感じらしくて。なので、すごい立派が劇場があります。私が行ったフェスティバルもロシアです。
石川:ロシア、どうでした?
とりもちうずら:その時は私たちが日本語で人形劇をして、向こうの役者さんが同時にロシア語でアテレコしてくれたんです。稽古の時に私が口上で「笑いすぎてアゴの骨外さないように」ってセリフを言ったら、そこでめっちゃウケて(笑)
石川:あはは、ただの慣用句なのに。
とりもちうずら:日本でウケたことがない場所なんですよ。一体どんな訳をしたのかがすごい気になっているんですけど。日本では全然リアクション来ないところに来るので、面白いなと思いました。
石川:その時はどういう劇だったんですか?
とりもちうずら:妖怪の話で。
石川:ウケそう~。
とりもちうずら:私は2役やっていて、ひとつは超巨大な2mぐらいある人形に入ってたんですよ。けっこう重い人形で、中に入って。
ロシアってレディファーストが異常な国で、重い荷物をすぐ持ってくれたりとか、ドアも開けてくれたり、バスを降りる瞬間に手を差し伸べてくれたりとかするんです。
石川:エスコート文化が。
とりもちうずら:そう、エスコートがすごくて。なので、私みたいな女性が重い人形を使ってると、それだけでけっこう驚かれます。
石川:文化の違いですね。中に入るっていうのは、着ぐるみみたいな?
とりもちうずら:着ぐるみみたいな感じで、手とかは動かせます。
石川:海外まで持っていくの大変じゃないですか?
とりもちうずら:大変ですね。分解して、スーツケース10個ぐらいに分けてギュウギュウに詰め込んで、現地で縫い合わせました。
石川:それは手分けして持っていくんですか?
とりもちうずら:はい、たしか一人二個までしかスーツケースを持っていけないので、まず私物を減らすんですよ。他の人と2人で1個のスーツケースをシェアして私物は詰めて、あとは全部人形。人形のスーツケースは荷物検査のときに怪しまれるんですよ。これはなんなんだ!って。
石川:あはは、移動も大変だ。