縦写真には愛がある
まずはブログ「月刊きのこ人」に掲載されているきのこの写真をいくつか見てもらいたい。
写真を教わるときによく「横は客観、縦は主観」なんて習う。いまはスマホが中心なので変わってきたのかもしれないけれど、カメラをあえて縦にして撮るということは、そこには撮影者の意図が現れる、ということだ。
上のきのこの写真はすべて縦である。つまりこの写真を撮った人はきのこをなんとなくではなく、明確な意図をもって撮っているのだ。意図というか、愛をもって。
僕のこの勝手な想像が合っているのかどうか、確かめるために撮った人に会いに三重県にやって来た。
小島さんとは最寄りの駅で待ち合わせをしたのだけれど、直前までブログを見ていて、たぶんこういう感じの人(やせ型、薄着、笑顔)なんじゃないかな、と思っていたらそのままの人がやってきたので驚いた。
突然会いに来てすみません。ブログがあまりにもよかったので話を聞きたくて来ちゃいました。小島さんがこのブログを始めたきっかけを教えてください。
ありがとうございます。きのこ自体は、たぶんテレビの教育番組がきっかけで小学校くらいから好きだったんです。中学高校の頃にいったんきのこからは離れるんですが、大学で農業の勉強をしだしてから菌類の講義なんかを受けて、また熱が再燃しました。あのブログはその後はじめて、もう10年以上やっていますね。
小島さんのブログではなにしろきれいな写真に目がいくんですが、文章がまたたまにふざけていて笑っちゃうんですよね。お正月には「菌賀新年」って書いてありました。
文章も前から好きでいろいろ書いていたんですが、ブログみたいな場があると好きなことが書けていいですよね。菌賀新年っていうのはきのこ好きの間では新年のあいさつのテンプレートみたいなものです。
小島さんがいま三重県に住んでいるのもきのこが目的なのだろうか。
三重に越してきたのはきのこではなく就職が理由です。住む場所には特にこだわりがないんですが、三重って、はっきりと東海地方でも関西地方でもない、なんとなくあいまいな感じがしないですか。そういうところがいいなと思うんです。
確かにどこと言われると「三重」としか言えないですね。
きのこも植物なのか動物なのかあいまいじゃないですか、あいまいなのが好きなのかもしれないです。きのこ好きにはカエル好きも多いんですが、あれもきっと両生類っていうあいまいな特徴が一つ理由にあるんじゃないかなー。笹なんかも好きですよ、木か草かわかんなくて。
好きなきのこはカンゾウタケ
カンゾウタケは5月の終わり頃っていう、きのこ的には中途半端な時期に生えるんです。生える場所もちょと変わってるし、あとなにしろ色が真っ赤で肝臓みたいで、あ、だからカンゾウタケっていうんですけどね。これがまた食べるとすごく酸っぱいっていう、もうなんだかわからすぎて。
それは素人的に聞いてもわけがわからないきのこですね。
そうなんです、そういう中途半端な上に個性ありすぎるところが好きです。
うちの夫婦はもともときのこ好きつながりで結婚しているんです。だからクリスマスツリーにもきのこを飾るくらいで。そういう意味では理解があってよかったです。
なるほど、きのこが取り持つ縁とでもいおうか。趣味というのはお互いが思う以上に大切な要素なので、理解してくれるか放っておいてくれる人と一緒になるのがいいと僕は思っています。
このあと小島さんがよく行くという森へ、一緒にきのこを探しに連れて行ってもらった。
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