ファンシーじゃないタイプの貝殻集め
貝殻集めと聞くとファンシーな趣味を想像するだろう。南の島で小さなピンクの貝を小瓶に入れるイメージである。
しかしここに、そんな貝殻集めのイメージを大きく振り切ったブログを書いている人がいる。
この「貝殻爺の展示館」には貝殻の写真ばかりが6000枚以上アップされているのだ。ファンシーだけでここまでやれない。
しかもこのブログ、貝殻の写真とデータ以上のことがほとんど書かれていないのだ。
僕なんかだと「今日は貝殻を拾いに来ていま~す」なんていって海を背景に自撮りした写真から始めると思うんだけど、このブログにはそういった雑念が一切ない。おかげで海の広さだけを感じるミステリアスなブログに仕上がっている。
いったいどんな人がこのブログを運営しているのか。もしかしたらAIではないのか。自らを「貝殻爺」と呼ぶこのブログ主に連絡をとり、海の近くのファミレスで待ち合わせをした。
増倉さん
「貝殻爺」こと増倉さんは1944年生まれの75歳。とにかく海が好きで、生まれ育った栃木県から三浦半島へと引っ越してきたのだという。それから今に至るまで貝殻集め一筋である(たまに釣りもやる)。
僕も茅ヶ崎という海の近くに住んでいるのだけれど、今まで貝殻を集めてこなかった。増倉さんと貝殻とを引き合わせたきっかけはなんだったのか。
なんと、なにげないその一言が増倉さんを貝殻爺への道へといざなったという。
しかし拾い始めたらとんでもなかった。
35年やって1500種である。それでも十分すごいが、この勢いで見つけ続けても2000種達成までにはあと10年以上かかる計算になる。
この頃身につけたパソコンやインターネットの知識をもとに、増倉さんはブログ主「貝殻爺」になっていったのだ。
整理の仕方にもこだわりが
では実物の貝殻はどうやって管理しているのか。この日、いくつか増倉さんの手持ちの貝を持ってきてもらった。
増倉さんは拾ってきた貝殻をサイズと種類とで分類、ラベリングして小袋に入れていく。その後でデータベースとブログに入力。そういった作業を毎日毎日続けているというのだ。
このくらいになってくるとこれは趣味なのか研究なのかわからなくなってくると思うのだけれど、増倉さんはあくまでも自分を素人だと言い張っている。ただ好きで続けているだけなのだ、と。
沼である。カメラ収集している人はよく「レンズ沼」とか言うが、これはまさに貝沼である。その沼に心地よさそうに浸かる増倉さんがいる。
自分が可愛いと思うものに共感してもらえると人はうれしいものなのだ。この時の増倉さんの嬉しがり方が、失礼だけど貝以上に可愛かった。