特集 2025年7月23日

超レア!奄美の赤いカミキリと昼のハブ

「フェリベニ」と呼ばれる赤いカミキリ

梅雨明けの6月末〜7月、1ヶ月足らずの間だけ奄美大島の森に現れるカミキリムシがいる。フェリエベニボシカミキリという体長3cmほどの小さな虫だが、その鮮やかなもみじ色のボディは映えに映えて、見る人を魅了する。

そんなレアなカミキリに運良く出会えた。そして希少種がいる深い森では夜行性のハブも昼間から高架下の立ち飲み居酒屋のようにだべっているのだ。

 

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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奄美大島だけで見られる赤いカミキリ

6月の終わり、奄美大島の深い森の細い木を囲んで大人たちがひざまずいている。

笑顔だったり真顔だったり、新手の民間信仰だろうか。

彼らが御神木をあがめたてまつるようにしている先にはこのお方がいた。

赤っ!

体長3cmほどの小さなカミキリムシである。赤い体に黒い斑点、フェリエベニボシカミキリという。皆からは「フェリベニ」と呼ばれていた。高島屋でハンドバッグを売ってるブランドのようだ。

「そっちに行ったぞ!」虫の一挙手一投足に反応する。
そんな人間達を愚弄するようにゆっくりと木の裏側に回ったりする。

本州には似たようなフォルムでこれまたやばいくらい鮮烈なブルーが人気のルリホシカミキリという種がいるが、同じルリホシカミキリ属のなかまである。

比較のために並べたらニンテンドースイッチのコントローラーみたいになってしまった。

奄美大島のみに生息し、成虫が活動する期間も短い。この梅雨と夏の狭間に現れる貴重な森の宝石に会うために地元の生物好きは昼間の森へとやってくるのだ。

「フェリエ」という名は明治時代に布教活動をしながら奄美の昆虫採集・調査活動を行っていたフェリエ神父から来ている。
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今回集まったメンバーの大半は特に約束していたわけでなく、「そろそろフェリベニかな」と山に来て偶然居合わせたのである。そんな地元のファミレスみたいなことがあるのか。

皆適度に距離を取って虫に触れないようにしている。希少種につき県の条例で捕獲が禁止されているのだ。

それもあって民間信仰感が醸し出されている。
奄美空港に掲示してある鹿児島大学の啓発ポスターにもかわいいイラストで描かれている。持ち出しはもちろん捕獲もだめ。

このカミキリウォークに連れていってくれたのは、2月に企画した真冬のハブ探しでお世話になった認定ガイドの西真弘さんである。

新調したオリンパスのミラーレスで虫を撮る西さん。

しかしこのフェリベニを見つけたのは山の中を3時間ほど徘徊した帰り道だった。それまでに別のうれしい出会いがあったのでまあ見てやってください。

こうして私はまた奄美を目指した

「いつも夜に歩いていますがこんどは昼間に森に入りませんか?この時期にしか見られないカミキリに会えるかもしれません」

西さんからのメッセージを受け取り、祝日のない6月の疲労感に耐えかねていた私は「よっしゃ月末に行きますよ」と朝9時30分に奄美空港に勢いよく降り立った。出勤じゃねえか。

そして今年に入ってすでに3回目である。支社じゃねえか。(はじめて訪れた田中一村記念美術館)
選挙がはじまろうとしていた。
名瀬市街「さんどいっちカフェあまみ」で腹ごしらえ。具がパンパンに詰まったサンドイッチにチキンも絶品。パッと見チェーンぽさがあるが地元の人に愛されている地場カフェである。奄美に行ったら立ち寄るべし。
いざ森へ!※場所の特定を避けるために背景を架空のダム湖のほとりに差し替えています。

ひたすら谷をくだり、光るヤスデを見る

「成虫が見られるのはだいたい7月から1ヶ月足らず、森の深いところの立ち枯れ木によく集まるんですが、個体数は多くないので見つけるのがなかなかむずかしいです」

青すぎる尻尾のバーバートカゲがひなたぼっこをしていた。

近年よくフェリベニが来ているポイントを回るのだがそこで見られるかはわからない。

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「ここはよく来てたんですけどねー」今回はいなかった。

「奄美は降水量も多く湿度が高いので枯木が朽ちるのも早いです。去年までいい感じだった立ち枯れ木が倒れてボロボロになってしまったり、コンディションが変わりやすいのでそうなるとまた探さなければいけないんです」

3cm足らずの虫を探して谷を降りていく。皆さんの山への慣れ方がすごい。
アマビコヤスデを発見。UVライトを当てると......。
光る!クラブ生物!なぜ光るのかはわからないが、こんなスキルはモテるためだろうきっと。

⏩ 昼ハブあらわる!

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