海馬が来る
JUNERAY:
香りは新皮質を通らずに直接海馬にくる、みたいな話を読んだことがあります
石川:
海馬に来る。「龍馬がくる」みたいですね
JUNERAY:
『海馬がくる』だとSFですね
石川:
僕は鼻炎気味であんまり嗅覚良くないので、違う世界観でおもしろいなーと思いました。
そういった、自分とはちょっと違った世界観を、今後もJUNERAYさんの記事で見せていただくのを楽しみにしています。(きれいなまとめ)
月に1度、総集編として、先月人気だったライターへのインタビューと、人気記事のランキングをお送りしております。
この記事では、JUNERAY(ジューンレイ)さんにインタビュー。
5月は「ジンジャーエールがあるならば、ミョウガエールやネギエールがあってもいいじゃないか」が大好評でした。
インタビュアーは編集部・石川です。
石川:
JUNERAYさんは昨年10月から入ってくれた、新しいライターさんです。いきなり核心に入るんですけど、たぶん読者が全員思ってることがあって。
JUNERAYさん何者なんですか?
石川:
何者なんですか!?!?
JUNERAY:
ただの花屋です
石川:
本業はお花屋さんなんですよね。でもそれだけってことはないでしょう!?凡人の基準から考えて器用なことが多すぎる。
JUNERAY:
じゃあ、元IKEA店員、元バーテン、元ワインショップ店員の花屋です。
石川:
バーテンとワインショップ……だいぶ納得感のある答え。
これで飲み物全般に対する異常な強さの理由がわかった気がします
JUNERAY:
一応ワインエキスパートなので、「飲み物ちょっと分かる」みたいな感じですね
石川:
ネットスラングでいう「チョットワカル」ですね。
ワインエキスパートっていうのは、ソムリエの資格ですか?
※チョットワカル……Linux(リナックス。コンピュータのOS)の開発者リーナス・トーバルズが、「ワタシハリナックスチョットデキル」と書いたTシャツを着ていたことから生まれたネットスラング。つまり、「ちょっと」=ものすごく。
JUNERAY:
日本ソムリエ協会が認定する資格です。「ソムリエ」の試験はグラスに注いでお客様にサービスする能力も見られる一方、「ワインエキスパート」はもっと幅広い職種の人が受けられるようになってます。
石川:
職業ソムリエじゃない人用の、ソムリエ相当の資格?
JUNERAY:
そんな感じです!
ソムリエ協会の試験、ワイン以外の問題もめちゃくちゃ出るんですよ。
日本酒用の米の石高とか、カクテルのレシピとか、ミネラルウォーターの基準とか…
石川:
米の石高!
JUNERAY:
試験の対策問題集読むと、「20○○年度の山田錦の石高として正しいものを選びなさい」とか出てきます
石川:
それソムリエをやっていくうえで必要になる日が来るんですか?
JUNERAY:
協会が求める資格保持者って、飲料全般の知識が豊富な人らしいんですよ。たとえばレストランで働いたとして、ビールが飲みたいお客さんだっているわけじゃないですか。
石川:
「俺ソムリエなんでビールのことは…」とは言えないですね
JUNERAY:
そこで「料理人がつくるメニューがドイツの○○地方の伝統料理だから、じゃあここは伝統に則ってあのビールをすすめちゃおうかな」みたいなことができないといけない。
石川:
なるほどー
JUNERAY:
あと、日本酒って海外だとワイン扱いらしくて
石川:
へー!
JUNERAY:
何年か前にスペインで、偉いソムリエの方が集うサミットがあったのですが、そこで「いま話題にすべき3種のワイン」として挙がったのがジョージアのワイン、ギリシャのワイン、日本酒で。我々が思ってる以上に注目されている様子です
石川:
お酒の知識がとめどなく出てきますね、すごい
JUNERAY:
なので記事の話に戻すと、薬味エールたちはワインのテイスティングの要領でレシピを決めました。
石川:
なるほどー。完全に納得してしまいました。
いったい何者なんだ…っておもっていたのが、「元IKEA店員、元バーテン、元ワインショップ店員の花屋」で完全に回収されました。
JUNERAY:
レシピの作り方をもうちょっと詳しく話してもいいですか。アロマホイールというものがありまして。色相環てあるじゃないですか。色がグラデーションの輪っかになってるやつ。
石川:
はいはい
JUNERAY:
あれに香りを当てはめていく考え方があるんですね。たとえば赤はイチゴ、緑はハーブ、みたいな。
色と香りがある程度連動しているっていう考え方です。
一般的なアロマホイールをよりざっくり解釈した表みたいなものを個人的に作っていて。
石川:
これは環の反対側は対照的な香りなんですか?
JUNERAY:
そういう捉え方もできます!
飲み物のレシピを考えるときに近い色味のもので揃えるとだいたいうまくいくんです。大葉とカルダモンは同じ緑のカテゴリだから合うだろう、みたいな仮説を立てて、同じグラスに入れてテイスティングして、というレシピの決め方をしてました。
ミョウガ、赤唐辛子、スターアニス…みたいな、同じ色あつめゲームですね。
石川:
ソムリエというと、独特の香りの表現がよく話題になるじゃないですか、「濡れた犬の香り」みたいな。
ああいうのもここに入ってくるんですか?
JUNERAY:
入りますよ!ホコリとか貝殻とか。
石川:
ホコリ!
JUNERAY:
ホコリの香りがあるワインはけっこうあります。実は。
石川:
じゃあ、もしかしてホコリを使った飲み物や、濡れた犬を使った飲み物みたいなのも理論上は…
JUNERAY:
香りの抽出ができれば可能ですね。濡れた犬からどう香りをいただくかが難しいところですが…
石川:
ホコリを直接飲むわけにはいかないけど、ホコリの香りさえ抽出できればそれを飲み物にできるということですね。
濡れた犬の香りは…蒸留器の記事を参考にすると、毛を抜いて蒸留とか…
JUNERAY:
犬を洗った水を蒸留して…まで考えてました。
毛を抜いちゃうとハゲになっちゃうから。
石川:
飲み物のためなら倫理をも破るみたいな。
飲み物サイコパス。
石川:
これまでの記事でおすすめを3本ほどきいてもいいですか。
JUNERAY:
はい、まずはこれです。
JUNERAY:
デイリーポータルに入って2本目の記事なんです。
以前から野草を摘んだり、草むらに分け入ったりするのが好きだったのですが、この様子を人に見せることで記事が成り立つんだ!と思って、ショックでした
石川:
あはは
いままでインディーズでやっていた草むらに分け入る活動が
石川:
草むらが、普段づかいですね。
「草まみれになる」っていう記事どうですかね?
手段としてじゃなくて、草にまみれるところを主題として
JUNERAY:
めちゃくちゃいいですね
石川:
5人くらいで誰がいちばん草まみれになれるかの勝負。
これは夏か秋くらいの企画ですかね
JUNERAY:
全力で草まみれになるなら3月くらいがおすすめですよ
石川:
え、そうなんですか。意外。
JUNERAY:
刺す虫が少なくて、新芽も柔らかいので。普段から草むらで寝ているわたしが言うので間違いありません
石川:
JUNERAYさんが草むらに対してあまりにこなれてるので、草まみれ勝負は勝ち目がない気がしてきました
石川:
では次の記事お願いします
JUNERAY:
一番最初の、ビールのオルタナティブドリンクを作る記事です。いまやったらもっと上手にできるなって。
あらゆる飲み物に使えるソーダマシンを買ったので、炭酸を抜けさせることなくホップ水を作れるはずなんですよ
石川:
あー、それはいいですね、技術革新。
JUNERAY:
公開されてから、一番よく思い出すのがこの記事なんです。スーパーで食材見てるときとかにふと、これ使ったらあの飲み物良くなるんじゃないかな…みたいな。
石川:
いいなー、そういう記事があるのは人生を豊かにしますよね
JUNERAY:
いつかアルティメット完成版ができたらいいですよね、ビールと見紛うばかりのノンアルコールドリンク
石川:
僕は昔、枯れたつつじを見る記事を書いたので、つつじが枯れる時期になると毎年思い出します。
これは特に人生が豊かになってはいませんが。
JUNERAY:
枯れたつつじは物悲しいですよね
石川:
なんかゾンビっぽいんですよね。茶色く崩れてくるし、集団で枯れるし
JUNERAY:
あー、ゾンビ!たしかに。
しかもつつじの花、毎年大量に枯れ落ちてるはずなのに、いつのまにか綺麗さっぱりいないんですよね
石川:
たしかにそうだ……
あれはいったいどうなっているんでしょう
JUNERAY:
そういえば、家にドライフラワーを吊っていたら、ある日床に砂が落ちていたことがあって、よく観察してみたら朽ちたドライフラワーだったんです
石川:
砂…
JUNERAY:
灰は灰に…花は砂に…
石川:
花がさいご砂に変わるのロマンチックすぎる
JUNERAY:
バラなんかは内側から砂になるようです
石川:
それ花じゃなくて、最初からタヌキに化かされていた可能性はないですかね
JUNERAY:
タヌキに葉っぱのお金渡されちゃって、最終的に砂を握っている人
石川:
通常は葉っぱに戻りますが、長期保有により乾燥してドライフラワー→砂になるケース
JUNERAY:
つつじももしかしたら砂になっているのかも。
石川:
あり得ますね。解明しましょう
JUNERAY:
3本目は非常に悩ましいのですが、いい香りの街路樹の記事です
石川:
春への浮かれが出た良い記事でした
JUNERAY:
冬が苦手なんですよ、草むらがないから。
石川:
冬の草むらはどうなんですか?
JUNERAY:
冬は草むらよりも落ち葉が見頃ですね…
足首まで埋まるくらいに積もった落ち葉で大暴れするのは楽しいかもしれません
石川:
JUNERAYさんは落ち葉にも埋まられるんですか?
「埋まられる」っていうのは「埋まる」の敬語ですが。初めて使った。
JUNERAY:
あはは 落ち葉にも埋まります!
石川:
うかつに埋まると下の方が湿ってそうで怖いんですよね。
積もってるのに埋まるんじゃなくて、木の下に寝て埋まるまで待つとか
JUNERAY:
あー、それ楽しそう!!
すみません本筋から逸れました、街路樹の記事ですが、寄せていただいた感想の一つ一つが良くて。
「家の近くに咲いてる花の名前が分かりました!」とか、「こんな花もありますがどうですか?」とか。
わたし自身もそれ読んで、あー!その花もいい香りですよねえ!って思ったりして。
石川:
いいですねえ
JUNERAY:
話が最初に戻ってしまいますが、普段から花の香りをかいでると、お酒飲んだときに「金木犀みたいな匂いしますね」とか言って通っぽい雰囲気出せます
石川:
お花とお酒はJUNERAYさんの中ではつながってるんですか?
JUNERAY:
めちゃくちゃ地続きですね、花の延長線上に酒があるといっても過言ではない。
植物も酒も、香りを探したいっていう根本的な思いがあるんでしょうね。
石川:
香りに突き動かされてるんですね。
JUNERAY:
香りは新皮質を通らずに直接海馬にくる、みたいな話を読んだことがあります
石川:
海馬に来る。「龍馬がくる」みたいですね
JUNERAY:
『海馬がくる』だとSFですね
石川:
僕は鼻炎気味であんまり嗅覚良くないので、違う世界観でおもしろいなーと思いました。
そういった、自分とはちょっと違った世界観を、今後もJUNERAYさんの記事で見せていただくのを楽しみにしています。(きれいなまとめ)
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