薬味の新たな可能性
調べてみたところ、ビールの原材料にワサビを使用した「ワサビエール」なるものは、過去に岩手県のメーカーが開発していたらしい。別メーカーのもので、ジンジャーエールにワサビエキスを加えたドリンクも発見した。
薬味はそもそも、料理に独特の味や香りを足すためのものだ。スパイスとの組み合わせで、ソフトドリンクの次のスタンダードを生み出せるかもしれない。
ジンジャーエール。なぜ生姜でなければならないのだろう。スパイシーな薬味であれば他にも選択肢があるはずだ。
今まで食材の脇役だった薬味たちよ、その底力を見せてくれ!!
試行錯誤の末、ついにおいしいレシピが完成した。
長年気になっていたことがある。「ジンジャーエール」とは一体何なのか。
スーパーの飲料棚にも、ドリンクバーにもジンジャーエールはある。居酒屋やカラオケのソフトドリンクメニューにも必ずある。
今や「飲み会で酒が飲めない人はとりあえずこれ頼んどけ」というポジションすら獲得しているジンジャーエールだが、よく考えてみてほしい。ジンジャーとは、生姜なのだ。そしてビールでもないのに「エール」と名がついている。ノンアルコール生姜ビールとでもいったところか。
シュワシュワの生姜ジュースが日本全国でこれほど浸透しているのは、考えれば考えるほど奇妙なことだ。
きっと大葉や大根おろしはこう思っているはずだ。「こんなに一緒にいるのに、生姜だけずるいじゃないか」と…。
他の薬味にだって、きっとおいしい飲み物になれるポテンシャルがあるはずだ!
いてもたってもいられず、筆者はスーパーに走った。
薬味エールを考案するにあたって、まずはスタンダードなジンジャーエールを作ってみることにした。
ジンジャーシロップを作成して、それを炭酸水で割るだけで、とても単純だ。
レシピはこちら。
「自家製ジンジャーエール」のレシピを調べてみたところ、上記のレシピのように、生姜以外にもクローブやアニスなどのスパイスを使用したものが多く見受けられた。それでは「ジンジャーエール」でなく「炭酸カレー」ではないのか。
不審におもいつつ、まずは生姜を皮ごと薄切りにする。
鍋にスライス生姜と砂糖を入れてしばし放置。水分が出てビシャビシャの生姜になるまで待つ。
鍋に他の材料を入れ、沸騰する直前で弱火にし、10分ほど煮たら完成。
拍子抜けするくらい簡単だった。そりゃあ流行るはずよ。
荒熱をとったら、煮沸消毒した保存瓶にうつす。冷蔵庫で半月ほど保存が可能らしい。
さっそく炭酸水で割って、レモンを飾ってみた。
生姜の辛さと砂糖の甘さ、スパイスが絶妙に調和し、そこにレモンでも入れようもんならもう最高だ。
こいつは確かに強敵である。他の薬味たちの「やっぱ生姜さんは違ぇよ…」という声が聞こえてきそうなほどに。
そんなジンジャーエールに対抗できる素材を今回は探したい。
今回スーパーで購入してきた薬味がこちら。
ここで1つネタばらしをしておきたい。
全部おいしく飲めるように、あらかじめレシピを練りに練っておいた。
そんなわけで、「飲めないものができて捨てちゃうオチじゃない…?」と心配していた方も安心してほしい。筆者は絶対に食べ物を無駄にしない。
ちなみに今回は「ジンジャーエール」への対抗レシピ開発のため、水と砂糖(または蜂蜜)、スパイスを使用し、熱を加えてシロップを作るというポイントは全ての薬味で共通である。
さっそく作っていこう。
まずはミョウガ。なんかショウガと字面も似てるし、なんとかなるだろう。
今回考案したレシピがこちら。
こちらも生姜と同様、スライスしたミョウガを砂糖となじませておく。
ミョウガがビショビショになったら水、砂糖、蜂蜜、スパイスを加えて沸騰直前まで加熱。
10分ほど弱火で煮たら完成。最後に色を良くするためにレモン汁を投入。
炭酸水で割って、さっそくいただこう。ピンク色が映えてかわいい。
ミョウガとレモン、スパイスの香りが絶妙でおいしい!鷹の爪を入れたことにより、生姜っぽいピリッと感がうまれ、飲み飽きない味になった。
ミョウガの香りが好きな方には強くおすすめしたいが、1つ懸念点として、ものすごく素麺が食べたくなる。
今回は甘めで作ったが、もう少し砂糖の量を減らしてドライめにしたら、夏にごくごく飲めるドリンクになるかもしれない。
恥ずかしながらこの歳になっても大葉とシソの違いがよくわかっていない。とりあえずスーパーで4把買ってきた。
レシピがこちら。
まずは何も考えずざっくりと切る。
大葉は熱しすぎると香りが飛びそうなため、先に水、砂糖、蜂蜜、スパイスを投入して加熱。
沸騰直前に大葉を入れ、やさしく混ぜたら弱火にして5分ほど待つ。
青菜を茹でた時のおいしそうな色。まだ早いかな?くらいのところで火を止めて完成!
炭酸の力で、大葉の香りが爽やかに広がっておいしい!
冷たい緑茶などで割ってもいいかもしれない。大葉とカルダモンはやたらと合う。スパイシーな香りが楽しみたい方は、思い切ってカルダモンをごっそり入れてみよう。
煮出した大葉の出がらしは、さきほどのミョウガの出がらしと合わせて和風ピクルスにするとおいしい。軽くしぼってお酢と白だしに漬けるだけでできる。丸のままのカルダモンやクローブをかじりたくない方は、面倒だが1つ1つ取り除くか、あらかじめティーバッグなどにまとめて煮出すのがおすすめ。
今回は「紀州産つぶれ梅」を購入。梅肉はそのままドリンクに入れてもおいしいため、特に漉したりせず粗いペースト状にする。
レシピはこちら!
つぶれ梅を鍋に入れ、スパチュラなどで果肉をつぶし、種を取り除く。
そこに水と砂糖、蜂蜜を入れ、ティーバッグに入れたスパイスを投入。沸騰直前まで加熱。
木ベラで大きい果肉を潰しながら、10分ほど弱火で煮込んだら完成!
う、うまい…!これは……
あーーーー
梅肉エール、本当に美味しいから流行ってほしい。梅肉サワーがあるのになぜノンアルコールの梅肉エールが世に広まらないのか不思議でならない。
ネギをどうやって甘くておいしい飲み物にしたらいいのかと、発案した自分自身に怒りを覚える。
なにって、ネギのこの独特の香りである。鶏ガラスープのもとを入れてスープにしてしまいたい。
ネギを砂糖で煮出したネギシロップが美味しいとは思えないため、今回はスパイスの力を大いに借りることにした。また、ネギを煮出すと特有の味が出てしまうため、蒸留する。
レシピはこちら!
以前別の記事で、鍋を改造した簡易蒸留器でノンアルコールジンを作ったが、それの応用でネギの蒸留水を生成する。
まずネギをざっくりと切って
水が入った鍋の中網に載せる。
蓋を逆さにし、アルミホイルで隙間を埋め、重石代わりに袋に入った氷を載せる。
沸騰したら火力を調整し、蒸気が漏れでてこない温度をキープ。
ちなみに蒸留と煮出すことの何が違うかというと、蒸留水は基本的に無色透明で無味だ。また、水蒸気で蒸留することによって、沸点が100度を超える香り成分も取り出すことができる。つまりここにあるのは、無色透明で無味な、ネギのいい香りがする水だ。
ネギ蒸留水との合計が200mlになる量の水(今回は100ml弱)を鍋に入れ、砂糖と蜂蜜、各種スパイスを加える。他のシロップ同様、沸騰直前で弱火にして10分ほど煮る。
ここで秘密兵器登場。このままネギ蒸留水を加えたところで、飲めこそするものの、別にネギ要らなかったな…という出来になってしまう。全体のバランスを取るために、フレッシュミントを5g分用意する。
弱火の状態の鍋に、フレッシュミントとネギ蒸留水を加える。
全体をなじませるように、弱火で2〜3分煮たら完成。長く煮すぎるとネギの香りが飛んでしまうから要注意だ。
ミントを加えたおかげで、ちょっとネギらしい色になった。さっそく炭酸水で割ってみる。
正直に言おう。今回作った薬味エールの中でいちばん好きだ。
ネギ由来の青い、出汁のような香りを感じるものの、スパイスやミントと調和してまったく嫌な感じがしない。むしろ飲み心地に奥行きを出してくれている。
ミントが後味に清涼感を演出し、レモンを絞ったらさらにおいしい。ネギがこんなにオシャレっぽい飲み物になれるなんて。これを出してくれるカフェがあったら毎日通ってしまうかもしれない。
調べてみたところ、ビールの原材料にワサビを使用した「ワサビエール」なるものは、過去に岩手県のメーカーが開発していたらしい。別メーカーのもので、ジンジャーエールにワサビエキスを加えたドリンクも発見した。
薬味はそもそも、料理に独特の味や香りを足すためのものだ。スパイスとの組み合わせで、ソフトドリンクの次のスタンダードを生み出せるかもしれない。
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