特集 2021年6月8日

停めにくい駐車場選手権

どうやって駐車したらいいんだ? という駐車場たちを鑑賞していきたい

世の中には無数の駐車場がある。その大半はよく見慣れたオーソドックスな作りなのだが、なかには「停めにくい系」の駐車場なんてものが存在している。

駐車してもらうためにあるのが駐車場なのに、停めにくいとはこれいかに。そんな禅問答のような駐車場を観察してみよう。

1983年徳島県生まれ。大阪在住。散歩が趣味の組込エンジニア。エアコンの配管や室外機のある風景など、普段着の街を見るのが好き。日常的すぎて誰も気にしないようなモノに気付いていきたい。(動画インタビュー)

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白線一本で変わる印象

ここにアスファルトで舗装された土地があるとする。これは何か? と問われれば、「ただの空き地だ」と答えるだろう。

じゃあそこに直線的な白線が引かれたらどうか。きっと「駐車場だ」と思う人が多数を占めるに違いない。

これから分かるのは、駐車場の本質は「白線」にあるということだ。なにもなかった土地に意味を生むのは白線である。逆に考えると、白線には強い意味が与えられてしまうので、一本たりとも気の抜けない存在だといえる。

次の写真を見てほしい。

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明らかに一本余計である。この白線のありなしで印象がずいぶん違って見える

本当に些細な違い、白線一本あるかないか、それだけなのだ。この駐車場は、そこに白線を引くことを選択した。結果として停めにくいヘンテコな駐車場が誕生してしまったのである。

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やわからくて、スライムみたいに自在に潰れたり丸まったりできる車が停められる駐車場

駐車エリアが6ヶ所あるけど、停められるのは実質4ヶ所だけだろう。このアスファルトで舗装された無機質な平地を眺めるだけで、「無茶しやがって……」って感情が芽生える。これも白線の持つ力である。

こんな風に、白線の引き方の微妙な差によって「停めにくい駐車場」は誕生している。あんまり見たことないかもしれないが、実は人知れず誕生しているのだ。ほら、この瞬間にも。

クレオパトラの鼻のごとく、紙一重のバランスで生み出されたそんな駐車場たちを一挙紹介していきたい。選手権と銘打っているものの別に優劣をつけたいわけではなく、気持ちとしては選手紹介である。全国津々浦々から集まってきた(というか集めた)猛者たちの勇姿をご覧いただきたいと思うのだ。

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障害物に阻まれる駐車場

駐車困難な状況にもいくつかパターンがある。一番分かりやすいのは「駐車スペースに障害物がある」タイプだ。

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木と共生する駐車場。道路に面した側にも、行く手を阻む電柱の支線が

停めにくい。でもタイヤの跡があるので、写真の左斜め下の方から突っ込んで使用しているのだろう。一台でも多く駐車スペースを確保したいというオーナーの執念が感じられる。

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なぜか駐車スペース内に柵があった。どう見ても駐車不可能だが、それでも”7”という番号が与えられているのを見ると、反論の余地もなくこれは駐車スペースなのだ

白線と同じくらい大事なものがあった。それは「番号」。番号が振られることで、駐車場に生命の灯がともる。白線が肉体だとすると、番号は魂である。

番号があることで、ここは駐車場なんだ、という強い確信を持つことができる。

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「軽」って書いてある場所に立ちはだかるポール。そして左側のスペースには駐車禁止の領域があって、実質駐車できない。物理的な障害物+規則上の障害物の合わせ技だ

駐車禁止エリアのある駐車場。一休さんのトンチみたいになってきた。ここに駐車する方法をだれか編み出して欲しい。

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スペースが小さすぎる駐車場

駐車スペースは、おおよそ幅2.5m、奥行き5m前後が必要らしい。それ以下だと停めにくい駐車場と言えるだろう。そんな駐車場なんて……あった。

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ミニカーくらいしか駐車できなさそうな狭小スペース。でもちゃんと番号があるのが愛おしい
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ほんの少しだけ土地が余ってしまった。そんな状況で苦肉の策として生み出されたであろう謎のスペース。ネコ車やシルバーカーなら、かろうじて停められそう
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土地の形状から、手前側になるほど奥行きが短くなる駐車場。一番手前は奥行きがなさすぎると思ったのか、他のスペースよりも幅がとられている。面積をそろえていくタイプ

こういう白線を見ていると、妙に人間みを感じてしまう(もちろん白線を引くのは人間だから当然ではあるのだが)。

駐車に適さないような狭いスペースにも、どうにかして駐車させたい。勿体ない精神というか、そういう人間くさい部分が白線の引き方に現れていて良いなと感じる。思いのほか味わい深い世界である。

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なぜか8番だけ枠が狭かった。土地の広さは十分あったので狭くした理由は不明だが、これくらいだったら軽自動車なら収まりそう?
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駐車スペースを作ったものの、停められると逆に邪魔になるため封鎖されたと思われる駐車場。他と違って、ギリギリ駐車できそうなサイズだったのが災いしたのだろうか
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詰め込み型の駐車場

駐車場は、駐車スペースのほかに通りやすい通路が必要だ。でもそうじゃない駐車場も結構見つかった。

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マス目状になっていて、車がいっぱいになると他の車が出られなくなるタイプ

こういうのって、営業車の駐車場では普通に見られる。番号が振られていないところを見ると、上の写真もその可能性はある。とすると、これは停めにくい駐車場とは違うかなあ。後ろにも出口があって、ギリギリ出られそうな感じもするし。

なんて思っていたら、こんなのを見つけた。

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番号が振られている詰め込み型の駐車場。全体的に幅が狭く、奥の方ギチギチ
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しかし看板を見ると、普通に募集されている契約駐車場だった(ボカした部分には連絡先が書いてある)

奥の4番と5番で契約したらどうなるのだろうか。モルカーみたいな柔軟性のある車の登場が待たれる。

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こちらも似たようなタイプ。この土地の形状だと、こんな風に分割したくなる気持ちは分かる
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スカッとした潔さを感じる。間口が狭いので、たしかにこれ以外に2台以上停められるレイアウトはなさそうに思えるなあ
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一見ふつうの駐車場なのだが……ん?
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なぜここに5番が。どういう駐車を想定しているのだろう
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少しの隙間はあるのだが、現実的に奥の車は出られなさそうなパターン。手前のD番が黒塗りで消されているので、やはり出られなかったのだろう

こういうのを見ていると、駐車場ってパズルみたいなものだなと思う。「このような形状の土地が与えられたとき、一番多くの車が無理なく駐車できる白線のレイアウトを考えよ」っていう配置問題である。

なので問題を解く人によって個性が出るし、前提となる土地の形状も多様なので、ひとつとして同じ駐車場はないのである。

ところで、前々からこの題材ってゲームになるんじゃないかなあ? と考えてるのだけど、まだ実現していない。誰か作りましょう。駐車場の白線をいい具合に配置するパズルゲーム。

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狭い土地を現実的に使うには、これみたいに放射状に車が並ぶ配置が良さそうに思える
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もしくは出口が二ヶ所以上あれば、こんな縦横入り乱れたレイアウトも可能だったり
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長い駐車場

文字通り、やたらと長い駐車場である。

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停めにくいと言うよりは、こんな贅沢にスペースを使ってもいいのか? という戸惑いが生じるタイプである
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真ん中にスッと引かれた一本のライン。駐車場の自由さが感じられて格好いい
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この長さの車があって、ピッタリ収まったら面白いだろうなぁと夢想する。長い車を持っている人の聖地である

ひとつのスペースに何台も連なって駐車できるけど、そうなると奥の車は出られない。一種の詰め込み型とも言える。

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余談:番号のこと

ここで休憩がてら、駐車スペースの「番号」の多様性について見ていきたい。

いろんな駐車場を見てきたが、そのほとんどは1、2、3という風にアラビア数字が振られていた。体感としては99%がアラビア数字である。

でも残りの1%、ここに異端児がいる。個人的には、アラビア数字以外を見つけたらラッキー! という気持ちで探し歩いている。以前に出現確率1.4%の「右目室外機」を紹介したけれど、それと同じような街のレアキャラだ。散歩のお供に覚えておくと、楽しみが増えて面白いよ。

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 まずはアルファベット。これは順当な感じだ
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個性的なメンツとしては、「いろは順」があったかと思えば
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過去に一度だけ「あいうえお順」を見かけた。個人的にはこれを激レア認定したい
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駐車場番号とはちょっと違うのだけど、地下駐車場の目印に「ゐ」があった。ゐは「る」と見間違えやすいので、こういう風には使われにくい存在である

だからなんだと言われればそれまでだが、こういう人の手によって生み出された多様な無機物を「生態系」と捉えて探索するのは楽しいのでオススメである。

日本中で大多数を占める種は「アラビア数字」で、他にわずかながら観測例があるのが「アルファベット順」や「いろは順」。そして、八甲田山の奥地で探検隊が発見した超希少種の「あいうえお順」(これはウソだが)……みたいな妄想がはかどる。

ある意味、停めにくい駐車場

話は戻って、停めにくい駐車場である。

少し見方を変えて、「停められるんだけど、なんだか心理的に駐車しづらい」、そんな駐車場たちを見ていきたい。

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駐車位置を示すためにペットボトルが使われているパターン
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パイロンでも良さそうなところを、すべてペットボトルで埋めているのには執念を感じる

猫よけの意味を込めて置いてあるのはよく見かけるが、領域を主張するためのペットボトルは珍しい。なんにでも使える便利な道具、ペットボトルである。

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これは一見すると普通の駐車場っぽいのだが、
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先端の一部分以外は完全に道路である(消えかけているが白線の跡もある)。心理的にというか、物理的にも置けるのかこれは
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同じく一見すると普通の駐車場であるが、こちらは……
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物置の横に一台だけの駐車スペース。それなのに、なぜか5番

ただの個人駐車場のような気もするが、それにしても5番である。このメソッドを使えば、自宅の駐車スペースに番号を書いて月極駐車場風にすることが可能だろう。メリットはあるのか? ないな。

白線がないけど、ある駐車場

だんだん観念的になっていくのを許して欲しい。最後はついに白線がなくなった。

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最奥にある1番の駐車スペース。線が引かれてるんじゃなくて、2番や右奥にあるスペースの外側にある領域、そこ生じた余りのスペースが1番に割り当てられているのだ

プログラムに例えると、if文におけるelseみたいな存在、それが1番のスペースである。停めにくいかと言われると普通に停められるのだが、変に生み出されてしまった余分なスペースがあって、そこは物理的に停められない領域として残ってしまう。

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ここのことだ。この部分も埋めたくなってしまうが、埋まることは一生ないだろう。なんだかモヤモヤする
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もう少し分かりやすいのがこれ。一番左の駐車スペースは「それ以外」として割り当てられており、他の駐車スペースの前方の領域を含んでいる

白線に忠実に従うなら、他の車の出口をふさぐ形で駐車することも可能である。でも実質的には停められない。よって停めにくい駐車場の亜種ということにしたい。

このように、停めにくい駐車場にもいろんなタイプがあることが明らかになってきた。ここで紹介した選手(そういえば選手権だった)以外にも、日本にはまだまだ停めにくい駐車場があるはずだ。そう、あなたの街にも……。


空あり

いろんな駐車場を見ているとき、つい目が行ってしまうのは「空あり」である。もともとは みうらじゅん氏の影響を受けてのことだが、つまりはこういう話である。

「仏教の教えでは、『空(クウ)』は固定的な実体がない状態を指す。それなのに『空がある』という。難解だ」

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「空あります」
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「空有」

こういうのを見るたび、駐車場に空(クウ)を見いだした みうらじゅん氏に驚嘆するとともに、「空がある」ことの意味をつらつらと考えてしまうのである。

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