海外の出版社はデンマークを何色に塗っているか
ここからは海外の出版社の地図を見ていこう。
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日本製の世界地図と違って、ヨーロッパが真ん中にある。こうしてみるとグリーンランドとデンマークは結構近いことに気が付いた。
そしてどちらも薄い緑色だ。(画像では黄色っぽく見えるのですが、実際の地図にはもっと黄色い国があり、相対的にこれは緑なのです。)
(Times Books, 2007)
グリーンランド:緑
デンマーク:緑
海外の世界地図をもう一つ。
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国単位での色の塗り分けに地形情報が重なっている。グリーンランドは雪と氷に覆われているが、その下は黄色に塗られている。残念。
(Oxford University Press, 2012)
グリーンランド:黄
デンマーク:黄緑
地図にある通り、実際のグリーンランドは白いようだ。同じ地図にもっと分かりやすい写真があった。
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実際のところ、地球上の土地はグリーンランド以外が緑で、グリーンランドだけが白い。グリーンランドをグリーンと言うのには無理があるのではないか。
実は、これにはわけがある。グリーンランドの発見者は以前、別の島を発見したときに「アイスランド」と名づけたところ、入植する者が現れなかった。その反省を生かし、新たに見つけた大きな島を「グリーンランド」と名付けたそうだ。
いや、だましてるじゃん。誇大広告。景品表示法違反である。(もっとも、当時は本当に緑にあふれていたという説もある。)
学校の地図帳はどうか
そういえば学校の地図帳はどうだっただろうか。幸い、図書館には高校生用の地図帳が置いてあった。
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判定によっては緑と言えなくもない。しかし、ポーランドが「誰がどう見ても緑」で塗られている以上、グリーンランドを緑と呼ぶのは無理があるだろう。
グリーンランド:水色
デンマーク:水色
帝国書院は中学生用、小学生用の地図帳も出版している。図書館には置いていなかったが、編集部石川さんの子供たちの物を見せてもらうことができた。
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下 [中学校社会科地図 (帝国書院, 2024)]
ううう。帝国書院はかたくなにグリーンランドを緑に塗るのを避けている。
グリーンランド:紫
デンマーク:紫
中学校社会科地図 (帝国書院, 2024)
グリーンランド:青
デンマーク:青
学校でも使われる教材なので、ある意味これは「あるべき姿」だ。グリーンランドを緑に塗ったところで、誤解を招くだけである。本当は白いのに。小学生に「グリーンランドだけに、緑だってよ!」という冗談はおそらく通じない。
「冗談」で思い出したのだが、私が高校時代の思い出で印象に残っているのは、現代社会の資料集に載っていた「ユビキタス社会の写真」である。
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ユビキタス社会とは、ITネットワークが生活環境のあらゆるところに組み込まれる社会のことだ。指は関係ない。資料集では、ユビキタス社会を実現するマイクロチップの小ささを表すために、指先にマイクロチップが乗った写真が掲載されていた。ゆびキタスだ。
こういう、うすら寒いうえに気づいた人にしかわからないような、もっと言うと冗談なのか大真面目なのかさえわからないような小ネタは、日々勉強に励む学生にとって一時のオアシスであった。だからこそ、グリーンランドは緑であってほしい。私は強くそう願うのである。