特集 2020年9月29日

栓抜きを使わないドイツ人

ドイツの人は栓抜きをあまり使わない。

身の回りの適当なものを使って瓶をいとも簡単に開けている。

私も、いつでもどこでもかっこよく瓶を開けれるようになりたいものだ。

1986年東京生まれ。ベルリン在住のイラストレーター兼日英翻訳者。サウジアラビアに住んでいたことがある。好きなものは米と言語。


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語学学校で教えて欲しかったレベル

ドイツに引っ越して間もない頃、友人宅の台所でご飯を食べていた。そこに同居人が帰ってきて、彼は挨拶をするなり冷蔵庫から瓶ビールを取り出し、近くにあった木べらをサッと手に取り、一瞬で瓶を開けた。その一連の動作がまるで合気道の技のように、あまりにも素早く滑らかで、そのさりげなさに圧倒されたのを覚えている。

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その後、様々な場面で同じような光景を目にした。道具はスプーン、家の鍵、ライター、テーブルの端など様々。男も女も、適当なものでいとも簡単に瓶を開けていた。

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もちろん家では栓抜きを使う人もいるし、コンビニにも栓抜きは置いてある。存在しないわけではないのだが、ドイツでは基本的に「瓶は栓抜き以外のもので開けるべし」という暗黙のルールがあるようである。栓抜き以外のもので瓶を開けれることが、ビール大国ドイツの国民にとって「当たり前」であり、プライドなのだ。多分。

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また、外国人の友人達に聞くと、長く住んでいる人でも栓抜きでしか開けられない人が多かった。そんな人は開き直って栓抜きを持ち歩くか、人に開けてもらうそうだ。やはり栓抜き以外のもので瓶を開けることは、ドイツ以外の場所では学ばない特殊なスキルなようだ。

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私も随分前に諦めて栓抜きを持ち歩くようになった。でもなんだか悔しい。私も栓抜きを卒業してかっこよくさりげなく、栓抜き以外のもので瓶を開けてやろうではないか。

サバイバル手段としての栓抜き技術

いつでもどこでも栓抜き無しで瓶を開ける能力が必要になった背景には、私が考える限り2つの理由がある。

一つは、ドイツはガラス瓶に入った飲み物が多いこと。もちろんペットボトルやカンもあるが、スーパーやコンビニの飲み物コーナーでは、ビールや炭酸飲料、ミネラルウォーターなど、ガラス瓶に入って売られているものが圧倒的に多い。ビールに関しては、王冠付きガラス瓶に入っているものがほとんどだ。

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もう一つは、ドイツではいつでもどこでもビールを飲む習慣があること。公園での飲み会やピクニックが日常茶飯事なため、どんなものででも瓶を開けられるサバイバルスキルが自然と身についたのでは、というのが私の勝手な理論だ。

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使われる道具はというと、やはり外出中でも常備していることが多いライターや家の鍵の他、公園のテーブルなどが主流。また、瓶が2本以上ある場合は、一本の瓶を使ってもう一本の瓶を開ける人も多い。

試しにドイツ語で「瓶を開ける方法」を検索すると、検索候補にズラッと道具が出てくる。

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これだけあれば、きっと一つはうまく行くはず。ビールも飲みたいし、早速試してみることにする。

頼るべきはYouTube

用意したのは、瓶ビール1ケース(24本入り)、最もポピュラーな代用品とされるライター、そしてドイツ人のコーチ(夫)だ。

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まずは夫なりの方法を教えてもらう。

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何度もやってみるが、ライターが滑ったり、ライターと瓶の間に指が挟まったりして、一向に開かないどころか手がめちゃくちゃ痛い。手がしびれてきたので夫に瓶を開けてもらい、とりあえずビールを飲む。

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その日とその次の日、何度かチャレンジしたが一向に開かない。これはセカンドオピニオンが必要かもと、YouTubeで動画を検索してもう一度試してみた。

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なんと、あっさりできてしまった。手も全然痛くない。YouTubeでも「痛かったら何かが間違っている」と言っていたので、今までずっと間違っていたらしい。

動きがあったほうが分かりやすいので、GIFもどうぞ。(しくじりすぎてライターがガリガリ)

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ライターを下ろす時、左手の人差し指で一緒にライターを上に持ち上げる気持ちでやると、さらにうまくいく感じがする。

あまりにもあっけない習得だったため、まだ20本近くビールが残っている。ライター以外のにも9種類の道具を試したので、開けやすい順にまとめてみた。

リモコン

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開けやすさ ★★★★★
便利さ ★★★★★
丈夫さ ★★★★☆
手のフィット感が良く、とても開けやすかった。常備していることはないので、外では使えない。

A4サイズの紙

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開けやすさ ★★★★☆
便利さ ★★★★☆
丈夫さ ★★☆☆☆
壊れることを気にしなくても良いし、意外と開けやすい。ただ何回かしくじると紙が弱くなるので、一発勝負。

テーブルの端 

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開けやすさ ★★★★☆
便利さ ★★★☆☆
丈夫さ ★★★☆☆
丈夫で安定感があるので開けやすいが、跡がつきやすいのでちょうどいいテーブルを探すのが大変。公園の石のテーブルとかだといいかも。

他の瓶 

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開けやすさ ★★★☆☆
便利さ ★★★★★
丈夫さ ★★★★☆ 
2本目の瓶を開けるために1本目の瓶を使う時、中身が漏れないか心配だった。ペットボトルなどでも結構うまく開けられる。

炊飯器 

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開けやすさ ★★★☆☆
便利さ ★☆☆☆☆
丈夫さ ★★★★☆
数年前に成田空港の電気屋さんで買った230ボルトの日本製炊飯器。夫の次ぐらいに大事な存在だ。後ろに出っ張った部分があったので、それを使ってみた。意外と開けやすかったが、家でしか使えない。

自転車の鍵

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開けやすさ ★★☆☆☆
便利さ ★★★★★
丈夫さ ★★☆☆☆
家の鍵だと壊してしまいそうなので、自転車の鍵でトライ。小さいものはグリップが悪く、時間がかかったが開けられた。

割り箸 

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開けやすさ ★★☆☆☆
便利さ ★★☆☆☆
丈夫さ ★★★☆☆
面積が狭いので若干開けにくいが、頑張れば開く。割り箸なので壊れても大丈夫、という安心感はある。

2ユーロ硬貨 

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開けやすさ ☆☆☆☆☆
便利さ ★★★★★
丈夫さ ★★☆☆☆
2ユーロ硬貨は500円玉と同じくらい。面積が狭いためうまく力が入らず、開かなかった。あと、使った後に傷がついてしまった。

リップクリーム

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開けやすさ ☆☆☆☆☆
便利さ ★★★★★
丈夫さ ★☆☆☆☆
大体いつも持ち歩いているので便利だが、プラスチックが柔らかすぎて開かなかった。

まとめ

栓抜き以外のもので瓶を開けることは、思ったより簡単だった。そしてそこそこ丈夫で安定感があるものであれば、大体どんなものでも瓶を開けられることも分かった。一度コツを掴むと、身近なものが全て栓抜きに見えてくるが、指輪や家の鍵など壊れやすいものは使わない方が良いかも。

長年憧れていたスキルを習得できて嬉しかった。いざとなったらサッと適当なもので瓶を開けることができるんだぞと思うと、なんだかドイツ人度がレベルアップしたような気分だ。

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