はじめに
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ライターの地元のうまいものを紹介してもらいます。今回はスズキナオさんから、地元のイチ推しの食べ物の紹介です。
スズキナオ
ソースなしで食べるのが基本
「うまい屋のたこ焼き」大阪府大阪市
大阪に引っ越してきて10年ほどになるのだが、移住当初、大阪育ちの友人が「遠くから来た友達に『たこ焼きの美味しい店どこ?』と聞かれるのが困る」と言うのを聞いて驚いた。
大阪を代表するご当地グルメといえば、たこ焼きかお好み焼きか、まあ本当は他にも色々あるけど、それらがかなり上位に挙がってくるだろう。私が見てきた限り、たしかに大阪の人はたこ焼きを愛している。
しかし、その愛し方は、「どこどこの店がうまいらしいから食べに行こう!」みたいな感じではなく、家で作って食べたり、散歩のついでに見つけたテイクアウト専門店にふらっと寄って買って帰ったり、日常的な愛し方なのである。その美味しさに点数やランキングをつけるような感じではないので(そういう人もいるかもしれないけど)、「どこで食べるといい?」と言われても困ると、友人はそう言っていたのである。なるほど、そういうものか。
つまりたこ焼きはどこで食べてもそこそこ美味しくて、それでいいのだ。しかし、そんな中、本当にいくつかだけ「あそこのたこ焼きはすごい」と大阪の人にも特別視されているらしき店があることもまた、月日が経つごとに徐々にわかってきた。
その一つを今回紹介したい。私が住む町からもほど近い“天満”という、賑やかなエリアにある「うまい屋」というお店だ。
創業は1953年。もう70年になる老舗で、天五中崎通商店街の一角にある。
軒先で店主がひっきりなしにたこ焼きを焼いているのが歩いていても見える店だから、目立つ。できあがりを待っている人、店内で食べていく人の姿がいつもある。
私はいつもテイクアウトして食べるのだが、今回、初めて店内で食べてみた。5つほどテーブルが置かれ、できたてのたこ焼きをそこで食べていくこともできるのだ。メニューには瓶ビールもある。ちょうど焼き上がりまで少し時間がかかりそうとのことだったので、ビールを飲みながら待つことにした。
うまい屋のたこ焼きの特徴といえば、“ソースもマヨネーズもかけずに食べて美味しい、いや、むしろ、何もかけない方がいい”という点である。
生地にしっかり出汁の味がきいていて、ほのかな塩味もあるので、そのまま食べて十分美味しいのだ。店内のテーブル席にはソースが置かれているし、持ち帰りを注文する時も「ソースどうします?」と聞いてくれるのだが、まずは「なしでお願いします」でいいと思う。
さあ、ようやくたこ焼きができたようだ。
外側はパリッと硬めに焼き上げられていて、アツアツのまま食べると、中は絶妙にもちもちとしている。出汁の風味、紅しょうがのアクセント、そしてタコの歯ごたえ……ああ、最高。決して濃くないから、何個でもいけてしまう。今回、最小単位である“8個入り”を注文したが、倍でよかったな。
「そのままで美味しいわー!」と何個がパクパク食べていって、「いや、せっかく目の前にソースが置かれているんだから、かけてみてもいいのでは?」と思った。一個だけ、刷毛でソースを少し塗って食べてみる。うまっ!甘いソースと出汁の味が絡み合ってうま!
店内で食べると、ソースなし・ありをその場の気分で変えられるのがいいな。ビールとの相性も抜群だし、と、改めてこの店のたこ焼きの魅力を知ることができた。やっぱりたまにはこうやって、本当に美味しいたこ焼きを食べに出かけてみるのもいいものだ。
みなさんも大阪にお越しの際はぜひお立ち寄りを!
終わって解説です
以前拙攻さんにコラムをお願いしたときにも、大阪のたこ焼きを紹介してもらいました。ナオさんは、ソースなしで食べるたこ焼きを紹介してくれました。大阪在住の二人ともがたこ焼きを推すという「リアル」さを実感しました。
今から入会しても、過去に掲載したコラムのバックナンバーは、はげます会専用ページで全部読めます。(はげます会担当 橋田)