インドはおもしろかったです
ということで、インドの思い出話をあと何本か寄稿すると思います。しないかもしれませんが。
現地からリアルタイムで雑に更新した「南インドの私的見聞録」という日記もあるので、有料ですがよろしければどうぞ。ローカルな店でミールスを食べたり、薄暗い公営酒場でハラハラしたり、犬に吠えられたりしています。

インド旅行中に立ち寄ったゴアの市場で、不思議な形の果物が売られていた。カシューナッツの果実、カシューアップルだ。
一度食べてみたかった憧れの食べ物なので買ってみたところ、ものすごくおいしそうな見た目と香りなのに、渋柿のように甘渋くて驚いた。
二月中旬、インドのバンガロール、マドゥライ、ゴアを旅していたのだが、その最終日の朝に訪れたゴアの市場で、パプリカに取っ手を付けたような形の果物をみかけた。
目に入ってから一瞬遅れて、それが前になにかの本で読んだカシューナッツの果実、カシューアップルだと気がついた。あ!
加工前のカシューナッツがこういう形をしているというのは知識として知っていたけれど、実物を見ると違和感がすごい。なんだこれ。
パプリカ型をした艶のある果実のヘタ部分に、勾玉みたいな硬い木の実が、ちょこんと乗っかっている。どういう構造だ。
この果実部分はカシューアップルと呼ばれるらしいが、形は洋梨のほうが近い。
このうっすら緑がかった灰色の硬い種の中に、我々が知っているカシューナッツが入っているのだろうが、パパイヤやバナナと並んで売られているので、これは果物として売っているのかな。
こんな機会はもうないだろうから、一つ買わせていただいた。ちなみに「4つで100ルピー(約170円)」と言われたが、食べるのは一口で十分な気がしたので、1つを20ルピーにしてもらった。
少しまけてもらったところで、きっと観光客価格だが、仮に1つ100ルピーだと言われても、前のめりに買っていたと思う。
手に取ってみると、見た目的にパプリカの重さをイメージしてしまうのだが、ずっしりとした重量感があってびっくりする。リンゴやナシよりも一回り重く感じるのは気のせいか。
ツヤツヤのテカテカだけに、触り心地もワックスっぽさがあって少しペトペトする。
鼻を近づけてみると、その色から想像されるように、よく熟れたマンゴーやパパイヤのような南国特有のフルーツっぽい芳香を放っていた。これは食べるのが楽しみだ。
そういえばゴアの街中で、「KAJU」と書かれたナッツを売っている店をよく見かけたが、あれはカシューのことだったのか。
市場の散策は早朝だったので、ホテルの部屋に戻ってカシューアップルをよく洗い、朝食のついでにみんなでいただいてみることにした。
まず果実から種の部分を外そうとしたのだが、こんなに簡単にとれそうなの見た目なのに、ひねったり引っ張ったくらいでは外れない。種がしっかりついている、それだけでもうおもしろい。
やっぱりこれはとってつけたものではなく、こういう植物なのだと納得する。
種を取ったカシューアップルをナイフで二つに切ってみると、中はカスタードクリームのような果肉がみっちりと詰まっていて、果物なら必ずある種の部分がまったくない。
そうだった。種は外に出てしまっているのだ。それで見た目よりも重いのか。つくづく不思議な植物だ。
果肉を一口サイズに切り分けると、クリーム状だけどしっかりと形を保っている不思議な硬さだった。繊維のあるプリン。
見た目も質感も文句なくうまそうである。
おそらく日本では食べることができないであろう完熟の生カシューアップルをいただいてみると、予想ほどは甘くない汁がたっぷりと口の中に溢れてきた。
そして一瞬遅れてやってくる違和感。あれ?
あー、渋を抜いていない渋柿を食べたときみたいに口の中がシブシブザラザラする。まさかの渋カシュー。
ジャックフルーツに似た南国のフルーツらしい甘さと爽やかな酸味がうっすらあるんだけれど、それがどうでもよくなるくらい渋い。そして食感はホヤっぽい。
好き嫌いはあまりない方だが、どうやら私はカシューアップルが苦手のようだ。ただこれは私の感想で、一緒にいた人に少しずつ食べてみてもらったところ、渋さの感じ方が結構違った。
「食べられなくはないけど、舌が渋くなる」、「おいしいといえばおいしい」、「口がモケモケする」、「汁がおいしい」、「うわー!」などなど。
カシューアップルは甘さのある南国のフルーツだけど、不思議と柿にも通じる渋味が多かれ少なかれあるようだ。もしかしたら渋を抜いて食べるものなのかもしれない。あるいはもっと完熟すれば抜けるのかも。品種によっても違うのかな。
渋柿の渋抜きのように、ヘタ部分にアルコールをちょっとつけて数日密封して味の変化を試してみたかったが、残念ながら今日は帰国日なのである。
せっかくなので種の部分を割って、中身のカシューナッツを食べてみようと思ったのだが、見た目通りものすごく硬かった。
食事用のナイフではまったく歯が立たないので、同行者がマドゥライのスーパーで買ったナイフを借りて、どうにか二つに割る。
こういうことで自分は怪我をしがちだというのをよくわかっているので、ものすごく慎重にやった。
中身は見覚えのある木の実で、今更ながらやっぱりこれはカシューナッツなのだと納得する。
なぜか殻の断面が琥珀のように美しかった。
その中身を取り出して食べてみると、味自体は記憶にあるカシューナッツそのものでおいしい。やっぱりカシューはアップルよりもナッツを食べるべきなのだ。
でも歯ごたえがすごくフニャフニャしていて頼りない。ナッツというよりも胚乳という感じ。植物の種。
生の落花生とか椎の実(食べられるドングリ)が近いだろうか。当たり前の話なのだが、これをローストしたらおいしいんだろうなという食感である。
食べてからスマホで調べたところ、カシューナッツは加熱しないと有毒という情報が出てきて焦った。あらまあ。
さすがに一粒程度で体がどうにかなるという強さの毒ではないと思うが、皆様におかれましては決してカシューナッツを生食しないようにご注意いただければ幸いです。
そういえば前日、レストランで「Cashew Feni」と書かれたお酒を注文したところ、泡盛のような透明の蒸留酒が出てきたのだが、カシューナッツっぽい味ではなく、どちらかというとフルーツ感のある風味だったのは、果肉部分を発酵させて作ったお酒ということなのだろう。
特に渋くはなく、ゴアの気候によく合った酒だった。
ということで、インドの思い出話をあと何本か寄稿すると思います。しないかもしれませんが。
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