存在としては知っている一般的な食材でも、丸のままで買ったことのないものを捌いて食べると、意外な発見があってとても楽しい。まさかホッキガイにモヤシが入っているとは。 そして本体がとてもうまかった。
活きたホッキガイが近所のスーパーで売っているのは年に数回だけだと思うが、よく見れば同じクラスのレアアイテムが季節に合わせて売られている。そういうのをおもしろがって買う人がいないと、魚売り場の品揃えの幅は狭くなっていく一方なので、今後も積極的に攻めていこうと思う。
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お寿司のネタでいえば十指に入るくらい好物のホッキガイ(北寄貝)。ホッキガイという呼び名は通称で、標準和名はウバガイ(姥貝)で、寿命がとても長く、30年近く生きることから、この名前になったとか。
珍しく生きたホッキガイが売っていたので捌いてみたら、なぜかモヤシが出てきて驚いた。
夕飯の買い物が遅くなったので、簡単にすませられる弁当や総菜でも買おうと思ったのだが、青森県産の「活ほっき貝」が半額で売られていた。特大と思われる立派なサイズが、二個で税別250円である。相場がまったくわからないが、これはお買い得なのでは。
この近所のスーパー、たまに「誰が買うんだこれ?」という海産物を売っているのだが、まさに今日のこれがそれである。埼玉のスーパーで誰が買うんだ、生きたホッキガイを。
「誰って……俺だろう」と思ったので、迷わず購入させていただく。夕飯を簡単にすませるという方針なんて放棄だ。
薄い刃のアサリ剥き(カワハギ釣りのエサのアサリを剥くのに使う)を差し込み、刃を殻に沿って入れて貝柱を切断する。
貝殻をパカッと開けると、それはもうぷっくりとした見事な身が詰まっていた。
「ホッキガイってこういう匂いだったよな~」と思い出させる独特の海臭が素晴らしい。やっぱり買ってよかった。
二つ目を剥きながらニヤニヤしていると、はらわた部分から半透明の突起が出ていることに気がついた。
え?
なんだこれはと思いつつ、とりあえず引っ張ってみると、するっと抜けた。
これは……モヤシ?
モヤシにしか見えないけれど、まさか貝からモヤシということはないだろう。
寄生虫だったらちょっと嫌だなと調べてみると、「桿晶体(かんしょうたい)」という、消化酵素を分泌して食べたものの消化を助ける器官らしい。正体がわかってもまったくピンとこない。
もしやと思って先に捌いたホッキガイを確認すると、こちらにもモヤシこと桿晶体が入っていた。漏れなく入っているのだろうか。自分で捌いてこそ得られる驚きと知識が嬉しい。
桿晶体はパリっとしたハリがあって持ちやすい。
なんだかおいしそうな気がしてきたので、せっかくだから食べてみることに。
生で食べるのはちょっと不安だったので、サッと茹でてみることにしたのだが、なんとナマコが内蔵を吐き出すみたいに、ニョロニョロと白い紐状の物体が出てきた。
ホッキガイからモヤシが出てきたことだけでも驚きなのに、さらにそこから出てくるものがあったとは。
軽く水で洗ったら、ニョロニョロと出てきた部分は流されてしまい、乳白色になった「いまにも動き出しそうななにか」が横たわっていた。
わざわざ食べなくてもいいものなのだろうなと思いつつも前のめりで食べてみると、表面がツルンツルンでマロニーちゃんのような質感。噛み応えは記憶に残らない程度で、味はうっすらホッキガイ。
まあまあ。たくさん集めて軍艦巻きにしたら美味しいかもしれない。30個くらい捌かないといけないが。生で食べればよかったかな。
残った本体を捌き、身を刺身で、紐部分はさっと茹でて食べたら、こちらはすごくわかりやすくおいしかった。
弾力があってツルンとした足先、柔らかくほぐれる内側のホタテっぽい部分、見た目が謎生物の弾力があるヒモ周辺と、甘さや食感の違いがすごく楽しい。自分で捌くからこそ食べられるフルコースだ。
活きたホッキガイ、見かけたらまた買おうと思う。
存在としては知っている一般的な食材でも、丸のままで買ったことのないものを捌いて食べると、意外な発見があってとても楽しい。まさかホッキガイにモヤシが入っているとは。 そして本体がとてもうまかった。
活きたホッキガイが近所のスーパーで売っているのは年に数回だけだと思うが、よく見れば同じクラスのレアアイテムが季節に合わせて売られている。そういうのをおもしろがって買う人がいないと、魚売り場の品揃えの幅は狭くなっていく一方なので、今後も積極的に攻めていこうと思う。
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