読んだよ 2023年12月1日

ネガティブなんですけど、暗さがないというか~短歌集「RERA(松木秀)」

デイリーポータルZのライター、関係者が愛読している本を語ります。

今回はとりもちうずらさん。レコメンドは「RERA」(松木秀)

聞き手は石川、べつやく、林です。

ではとりもちさん、お願いします。

(ここの文章は編集部)

イカをこよなく愛する人形劇人。特にコウイカが好きです。

前の記事:お菓子というより「きな粉を効率よく摂取するための棒」、吉原殿中

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RERA(松木秀) 

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短歌集なんですけど、作家は松木秀さん。
短歌が好きになったきっかけが松木さんなので、松木さんにしたんですけど、ちょっと紹介したくない気持ちもある。同担拒否の気持ちもあって。

大学で短歌の授業があったんですよね。近現代美術史っていう授業で、現代短歌を授業でやったんですけど、松木さんの

「夕暮れと最後に書けばとりあえず短歌みたいに見えて夕暮れ」

っていう短歌があって、短歌そんなとこまで行ってるの?!と思って、衝撃だったんですよ。
表現の向こう側に行こうとしているというか、ちょっとシニカルな感じの作風なんですけど、松木さんに興味を持って、まず買ったのがこれ。第2歌集です。
夕暮れの短歌が載ってるのは、第1歌集なんですけどもう入手できなくて。

読んでいくとめっちゃネガティブなんですよ。あえて悲しい面から全て見ようとする視点で。

「焼死した人を火葬するときにないのだろうか割引制度」

ネガティブなんですけど、暗さがない。暗い人のウェット感がないっていうか、ちょっと面白く切り取ってる感じ。

いったん広告です

「中央線ではなく、西武鉄道を自殺に選ぶ程度の個性。」

ネガティブなのに、どこかちょっと滑稽なものとして切り取ってる、そこの角度みたいなのがすごい好きだなと思って。

短歌としての特性もあると思うんですけど、それは悲しいことを言うときに、五七五七七のリズムに調整する必要がある。それで31文字に収まっちゃう悲しさ。それが滑稽な作業というか、距離感のある作業・客観的に見る作業で。
短歌の良さってそこかなと思います。悲しいことを滑稽なものにしてしまうみたいな、一回客観視する作業がある。悲しいことを、五七五七七にする必要ないじゃないですか。
でもそれを短歌にするっていうところに独特の明るさがあるって思ってて。

短歌についてうたった歌があるんですけど、

「短歌とはスーパーマリオが死ぬときのBGMのあかるさに似て」

もう本当これだなって思ったんですよ。短歌っていうのは。
マリオってトルットゥトルットゥトゥーと、滑稽な音で死んでいく。

悲しいものを31文字に切り取るということがすごいかっこいいなと思ってて。

松木さんに憧れすぎて、短歌を大学時代に作り始めるんですよ。私のツイッターのアカウントって、超暗い短歌をつぶやくだけのアカウントだったんですよ。それが溜まってきたんで、文学フリマに出るときにとりもちうずらっていう名前でやり始めた

桜前線開架宣言(山田航)

短歌に興味持った人が一番最初に読んだ方がいいのがこれ。
お風呂で読んでるんで、超ぼろぼろです。
山田航さんという歌人が読みまくって、いい作品を何人も選んだ本。

なんでこれをまず買って、推し歌人を見つけて、入ってくのがいいんじゃないかなって思います。
私、松木さんが本当好きみたいなツイートしたら、すぐフォロー返ししてきて。
暗くてジメジメしてない感じがかっこいいと思ってます。

こちらです

Rera―歌集

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後半で紹介した歌集です

桜前線開架宣言

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