特集 2023年1月11日

銀座ウエストのお菓子で打順を組む

桃源郷。それはきっとこんな景色

東京銀座で70年以上の歴史を積み重ねてきた洋菓子屋、銀座ウエスト。幼いころから私の大好物だ。アソートのクリーム色の箱を開けた瞬間に広がる、幸せな光景。

どのお菓子もしっかりとバターが効いていて、重厚な味わい。人生で一番最初に味わった「高級感」が、銀座ウエストだったかもしれない。

今回は大好きな銀座ウエストのお菓子の打順と守備位置を考えてみたので、発表したい。
 

1980年、東京生まれ。片手袋研究家。町中で見かける片方だけの手袋を研究し続けた結果、この世の中のことがすべて分からなくなってしまった。著書に『片手袋研究入門』(実業之日本社)。

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> 個人サイト 片手袋大全

なぜ野球チームにする必要があるのか?

オーダーを発表する前に、「なぜ銀座ウエストを野球チームに見立て、打順や守備位置を考える必要があるのか?」という根本的な疑問にお答えせねばなるまい。答えは簡単。銀座ウエストと野球には意外なほど共通点が多いからだ。

①銀座ウエストのお菓子はバターの風味が魅力。“バター”という響きは“バッター”に似てて、野球を想起させる。

その他の共通点は、皆さま自身で考えてみて欲しい。いまやウェブ記事は書き手と読み手がともに作り上げる時代だ。

意外に知らない人もいる?

私の考えたオーダーを聞いてもらう為、林編集長とライターの月餅さんに球場(DPZ会議室)に集まってもらった。だが試合開始前、2人ともウエストのお菓子を食べた記憶がはっきりとはない、という事実が判明。え~っ⁉

興味津々で見つめながら、「職場で退職者が挨拶の時に持ってきそう」と月餅さんと林さん

後で調べてみたら基本的には関東圏だけで販売しているようだし、知らない人は知らないのかも。全人類共通の好物だと思っていたのでいきなり出鼻をくじかれたが、野球も世界中で行われている競技ではないし、まあ良い。むしろ普及する余地がまだまだあるってことだ。

ちょうど箱に選手名鑑が入っていたので、それぞれの選手の特徴をザっと2人に説明する。

選手名鑑としか言いようのない小冊子。ウエストさんもこういう日を想定していたのかも
 
手塩にかけて食べてきた選手達。説明にも力が入る

秘密兵器登場!

ちなみに今回用意したのは、銀座ウエスト公式オンラインショップのみで購入できる、自宅用の全種類セット。ウエストのパイとケーキ(ドライケーキと呼ばれている)が全種類入っているのは、このセットだけのようだ。

箱にはお菓子の切り抜き画像がプリントされてる。この柄のTシャツを作って欲しい

さらに!なんと林編集長が、グラウンドと打順を書き込める欄が印刷されたシートを作って用意してくれた。これなら守備位置にお菓子を実際に配置することができる。 

ホワイトボード仕様なので書いたり消したりできる
チーム名はウエストなので「オールウエスタン」に決定

いよいよオーダーを組んでいく

さあ、まずは守備位置から考えていこう。

事前にオーダーは組んでいたが、監督として本当にそれで良いのか、もう一度熟考する

野球をほとんど見たことがない月餅さんには、ウエストのお菓子と野球の説明を同時進行でしていく。 

「この守備位置を守るのはこんな選手なんで、その特徴を兼ね備えたこのお菓子を選んだんです」という説明をしている

最後の方は「野球、見に行ってみたくなりました」と言ってくれた。かつてウエストのお菓子から野球に興味を持った人がいただろうか?

ファースト→セカンド→ショート…とオーダーを発表していくにつれ、球場(会議室)の熱気も高まっていく。 

林さんからの意見を取り入れて守備位置変更も
「ピッチャーはアンダースローのコイツだ~!」
「ポンッ!」

守備位置が決まったら、今度は打順だ。

「勝ちたいんや!」。監督の視線は真剣そのもの
「この選手は多分、変則的な打法だと思うんですよ」

そうして遂に、私の考える「銀座ウエストのお菓子の打順と守備位置」が決定した。それでは発表致します。 

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オーダー発表

全体的にバターとナッツ類がしっかり使われている重量打線。うまくバランスを取れなければ名将とは言えない

1番 セカンド 塩クッキー 

小粒ながら守備や走力が高い。しかし甘味の中にある意外な塩気は、思わぬタイミングでの長打も期待させる味だ。

 2番 ショート チーズバトン

エダムチーズの風味漂う曲者。ウエストの中では珍しく甘さがあまりなく、お酒にも合う。チーズ“バトン”という響きは“バント”の上手さを感じさせる。塩クッキーとの二遊間コンビは鉄壁の守り。

3番 サード カシューナッツ 

ココア生地とクッキー生地の対比が、陰と陽を思わせる。右へ左への広角打法。食べる時はどちらか片方ずつ楽しんでも、真ん中をガブリといっても、どちらも楽しい。

 4番 レフト ヴィクトリア

私の中で不動の4番。この美しい見た目。生まれながらのスター選手。今回のチーム編成はヴィクトリアを4番に据えるところから出発した。

ウエスト創業75周年である2022年に限定で作られたのは、ヴィクトリアのチャームであった。やはりウエスト側としても代表的な商品なのであろう。

「私、ヴィクトリアのガチ勢なんで」。月餅さんは「初めてウエスト食べる」って言ってるのに、限定チャームを自慢する迷惑な私 

ただ、「天性のスター選手なので守備は手を抜きそう」という意見が出た。監督としては当初、ヴィクトリアがセンターに鎮座まします光景を見たかったのだが、レフトにコンバートとなった(イメージとしてはバレンティン)。

5番 ファースト ウォールナッツ 

ガツンと長打を期待できる選手。イメージは『巨人の星』のオズマ。

6番 ライト バタークッキー

繊細で柔らかな食感、でもバターの風味はしっかりとしている。見た目以上にナッツクランチが効いてる。細身だが肩が強い、イチローのような選手。

7番 センター サブレスト

“サブ”レストなんて名前だけど、十分メインの実力を持ってる、なにしろサブレストという響きが、パリーグの助っ人外国人っぽくて良い。 

 8番 キャッチャー ガレット

マカダミアナッツが丸ごと一個入った存在感。力強いチームの司令塔。近年はクリーンナップを任される捕手もいるが、昔気質の頼れる選手。 

9番 ピッチャー マカダミアン

マカダミ“アン”ダースロー、ということで、下手投げの変則フォームの投手。さっぱりした見た目だが、意外なスタミナで完投も多い。 

応援歌も作ってみた

スタメンに入ったメンバーそれぞれに応援歌も作ってきたので、月餅さんと林さんに披露する。


 

歌詞カードを手に、録音してきた私の歌声を聞かされる2人

 

それぞれの選手が持っている特徴を歌詞に込めた

林さんが「石井さんって…」と何かを言いかけてやめた気がするが、気のせいだろう。

ちょっと待て!リーフパイは?

さて、このスタメンを見て疑問を抱いたウエスト愛好者もおられると思う。そう、リーフパイが入っていないのだ。

リーフパイは選手名鑑でも一番最初に紹介されている

これこそが私のチームの最大の特徴であり、問題点でもある。実は私、お煎餅もザラメが苦手、つまり砂糖の結晶でコーティングされたお菓子が食べられないのだ。

ウエストを代表する選手なのに、使いどころが分からない。「そんな俺が監督なんてやって良いのか?」。自問自答の日々。リーフパイが一番好きだという妻からも「あなたは監督失格だよ!」と罵られた。

でも、今の私にはカズを外した岡ちゃんの気持ちが分かる。それでもチームを前に進めなきゃいけない時があるんだ。そう、これは私のチームだ。何かあったら、私が責任を取る!

…ここまで野球の例えで来てたのに、急にサッカーが入り込んできてしまうくらい、辛い決断だった。

スタメンに入れなかった選手にも役割を考える

とはいえ、さすがにリーフパイほどの大選手をまったく無視するわけにはいかない。そこでリ“リーフ”パイということで、リリーフを任せることに。なんか、ダジャレ頼みになってきた気もする。 

ブルペンで投球練習に励むリーフパイ

スタメンに入れなかった他のお菓子にも役割を考えてたら、楽しくなってしまった。 

パルミエは何かの形に似てる…あ、審判のプロテクターだ!
早速パルミエには捕手であるガレットの後ろに陣取ってもらう
ブランデーなどが香るダークフルーツケーキは「少年野球にヤジを飛ばす酔ったオヤジ」に
プチサブレストは双子っぽいのでポップコーン正一・正二に

プレイボール(実食)!

オーダーも無事に発表し終えたので、いよいよ実食。ここからが本当の試合なのだ。

隣で撮影していたDPZの石川さん、ナミノリさん、ほりさんにも加わってもらう

口々に「美味しい~!」と喜ぶ皆の様子を見て、思わず「ンフフフ。そうでしょう~」と長嶋みたいになってしまう私。 

得意気に再びオーダーの説明も始める

そこで気付いた。「最初っから、ただ食べてもらうだけで良かったんだ」と。でも、この野球場シートを使ってワイワイ議論してる時間が最高に楽しかったので、「皆さんのオーダーも聞かせて欲しい!」と強烈に思った。

「ウエスト好きだけど、お前のオーダーはおかしいよ!」でも「コンビニおでんでオーダー組んでみました」でも良い。あなたの采配、見せて欲しい。

記念撮影したら「M-1に向けて1人が変なキャラ付けに手を出してしまった漫才コンビっぽい」と言われました
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