特集 2019年1月22日

バナナそっくり「バナナナメクジ」を捕獲&試食

カリフォルニアへバナナナメクジを採りに行ってきた。

バナナナメクジとはその名の通り、見た目がバナナそっくりなナメクジ。

それだけでも十分に魅力的なのだが、さらにこのナメクジ、食べられるとか食べられないとかいう話も聞く。うーん、試してみましょうね。
 

1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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バナナナメクジ求めてカリフォルニアへ!

バナナナメクジはアメリカのカリフォルニア州に生息しているという。カリフォルニアといえばウェストコースト、カラッと乾いた爽快な気候で知られる。ジメッとした環境を好むナメクジには似つかわしくない気もするが…。

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生息地はやや乾燥した山間の針葉樹林。空気が澄んでいてすごく気持ちいい。僕のプラシーボ器官が濃厚なフィトンチッドを感じる。

カリフォルニアといえばビーチ!…だが、そういう塩っ気のある場所には目もくれず。内陸を目指す。塩はいかんよ。溶けちゃうからね。ナメクジ。

バナナナメクジが生息するというキャンプ場へたどり着き、目撃例の多い針葉樹林を歩き回るが、なかなか見つからない。

乾燥しているから倒木の樹皮下でも潜んでるんだろう!いや、いない!

なら樹洞の奥だろう!やはりいない!

涸れ沢にバナナメ!

探し回ること数十分。無事に見つかったんだけどその環境が「ああ〜、そこっすかー」というところ。

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意外と乾いた環境でもそれなりに活動できるようだ。そのためか分泌する粘液が異様に濃い。触ると洗ってもなかなか落ちない。

それは涸れ沢の谷底。しかもそこにばかり密集している。

確かにここなら常に湿気があるよね。目からウロコ。少しナメクジという生物のことを理解できた気がする。

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バナナナメクジには三種がいるが、今回捕まえたのは黒斑が多く黄色がくすみがちなAriolimax columbianusという種。なるほど、熟してハニースポットの浮きまくったバナナに似ている。他の二種はもっと鮮やかで黒斑の少ないフレッシュバナナタイプ。いつかそっちも見に行きたい。

それにしても、カラーリング、形状、サイズと各要素ともなかなかにバナナ。それでいてナメクジ。

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大きいでしょう?長さは大型個体が身体を伸ばすと20cmほどになる。
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素晴らしいボリューム。だいたい日本本土にいるヤマナメクジと同程度の大きさかな。(※カタツムリやナメクジなどの陸貝類は広東住血線虫などの寄生虫を宿している場合があります。素手では触らないようにしましょう。触っちゃったら手を洗いましょう。)
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いっぱい採れた!みんな甲羅の後部に一つ黒いスポットを持ってるのがかわいいね。(※ナメクジやカタツムリは素手で触らないようにしましょう。カリフォルニアでは寄生虫の心配はほとんどないとも聞いたが、気をつけるに越したことはない。雑菌はいるだろうし、何よりバナナナメクジの粘液は手につくと取れない。)

…ヤバい。バナナナメクジずっと観察してたら妙な気持ちになってきた。グリグリ動くつぶらな瞳に、ボディーのうねりに、表皮のテカりに、胸がときめく。イメージ以上にずっとかわいい。

気持ち悪さやグロテスクさなんてみじんも感じない。バナナメかわいいよバナナメ。

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ベビーサイズのバナナナメクジも。か、かわいい…。この透明感…。持ち帰って飼いたいくらいだが、防疫法で輸入は禁止されている。

バナナカラーは落ち葉へのカモフラージュ?

実に面白く、見れば見るほどかわいいナメクジだが、なぜこんなバナナカラーなのか。
黄色なんて自然界ではとびきり目立つ色だ。ハチのように毒を持っているなら『警戒色』とも考えられるが、バナナナメクジに関してそんな話は聞かない。
本当の理由は林床を見ればわかる。

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林床にはこういう黄色い落ち葉がたくさん落ちている。ところどころが黒ずんだものもね。こんな中にバナナナメクジが佇んでいると本当に見逃しちゃいます。よくできてるわー。

あちこちに黄色い落ち葉が散乱している。カリフォルニアは日本と同じく温帯に属し、植生は落葉樹が多くを占める。その中には日本でいうイチョウのように黄色く紅葉して葉を落とすものも少なくない。つまり一見するとド派手なバナナナメクジの体色だがおそらくは落ち葉への擬態、つまり保護色であると考えるのが自然だろう。

バナナナメクジを食べる

ところで今回はバラエティー番組の撮影も絡んでいた。

で、試食したわけだがこれは決して悪趣味なゲテモノ食い企画で終わるものではない。

というのも、バナナナメクジはかつてネイティブアメリカンによって食べられていたという記録が残っているらしいのだ。なぜこれを食べるのか。どういう味なのか。彼らの食文化をトレースして何がわかるのか。知的好奇心を満たす高尚な企画なのである。僕の中では。

ちなみに現地の人に聞いてみると「そんな話も聞いたことがあるが、現代では考えられない」とのこと。でしょうね。

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サソリもいた。カリフォルニアフォレストスコーピオンと呼ばれる種。

まずは下ごしらえ。ネイティブアメリカンは酢で体表の粘液を落としていたということだったが…。酢をかけても粘液は白く泡立って凝固するばかりでなかなか落ちず、奇しくも皮を剥いたバナナのように。

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酢をかけて洗うと…。全然粘液は落ちないが、これはこれでバナナっぽい…。

これではいかんと、さら白ワインを使って洗うが、しごいてもこすってもしぶとく粘り気が残り続ける。こんなにしつこい粘液を持つナメクジは初めてだった(他のナメクジやカタツムリは酒で洗えばすぐぬめりが落ちるがバナナメには通用しない)。これはおそらく乾燥した気候に耐えるため粘液の粘度とストック量を増やす方向に進化した結果なのではないだろうか。

うん、まずい!!

きりがないのである程度のところで断念。ナメクジやカタツムリを調理する場合、この粘液が残ると泥臭さと生臭さが出てしまうのだが…。いたしかたなし。

ネイティブアメリカンたちはもっと上手い処理技術を持っていたのかもしれない。

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加熱するとあんなに大きかったバナナナメクジが『チートス』並みに小さくなってしまった。他種のナメクジなら柿ピーサイズになってしまうだろう。

内臓を取り除くと、やたらペラペラになってしまった。おい、筋肉どこ行った!?皮ばっかじゃねえか。…でも、筋肉量に対して皮が厚い理由は思い当たる。やはりカリフォルニアの乾いた気候に適応するための厚着ではないか。もしかしたら、そんなことはないと思うけど、この皮が意外といい食感を産むかもしれない。

串焼きにすると水分が抜けてみるみる縮んでしまった。体色のバナナ感も消え失せた非常に残念な見た目である。

気持ちを前向きに切り替えて頬張る。

ギョリッ、ギョリッ、ニチャァァ…。外皮しか残らず指サックを食べているかのよう。

味も粘液に由来する陸貝特有の生臭さが強く、美味しいとは言えない。不味いとは言える。決して食べられないことはないが。

そもそも単純なタンパク源として見れば捕獲と下ごしらえの労力にその量が見合っていない。

もしかするとネイティブアメリカンたちはこのナメクジにある種の薬効を見出し、食欲を満たす以外の目的で摂取していたのかもしれない。

その辺りについてはこれからもう少し資料を集めてみようと思う。


余談 : バナナナメクジマスクを手に入れた

その後、本サイトのウェブマスターである林さんからかつてアメリカで買ってきたというバナナナメクジのゴムマスクをいただいた。

バナナナメクジたちは生息地ではある種のマスコット(キモかわ系?)として妙な人気を誇っており、意外とグッズの種類が豊富なのだ。このマスクはその中でも代表的なものらしい。

いやー、ぜひこれを装備して採集に行きたかった。

残り二種に挑む際には忘れずに持って行こう。
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これさえあれば、キミも今日からバナナナメクジ!!

阿佐ヶ谷ロフトAでイベントやります

阿佐ヶ谷ロフトAで珍しい生き物についてお話しするイベントが開催されることになりました。
場所は阿佐ヶ谷ロフトA。
日時は2月23日(土曜)の13時より。試食品の提供も予定しています。何を持って行こうかね〜?
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とりあえずアリゲーターガーは持っていきます。

 

 

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