特集 2019年1月24日

「あの頃の自分に伝えたい」を実際にやる

中学生の頃の自分が語りかけてきます

憧れの人に会えた時、うそみたいな失敗をした時、いろんな場面で「おい!昔の私!聞いてくれ!いまこうだぞ!」と言いたくなることがある。

「あの頃の自分に伝えたい」というやつだ。

でも実際、昔の自分を前にして喋ってみるとどういう気持ちになるのだろうか?

もしもに備えてシミュレーションしてみることにした。
 

1990年沖縄生まれ。現在はOLとして活動しています。営業日のお昼休みに毎日更新する「今日の休憩」というブログを運営しています。 (動画インタビュー

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> 個人サイト 今日の休憩

シミュレーションの仕方

今回は「昔の自分に語りかける」練習をする。どうやればいいだろう。考えたのが

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①学生の頃の写真をPC画面いっぱいにうつす
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②その写真を見ながら話しかける
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③友人に昔の自分になりきって声を担当してもらう

というデジタル腹話術方式(?)でやってみることにした。むかしの自分からビデオ通話がかかってきたようなイメージである。

あくまで影武者の方は見ず、PC画面だけを見て「むかしの私が喋りかけてきた」と思い込むことが重要だ。

実際にやってみる

大学の友人に、中学時代の写真データだけ持ってきてもらった。

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先輩の高橋遼さん(左)と、後輩の郡司典人さん(右)。


早速「どうやって昔の自分と喋るのか」と疑われる。私もうまくいくかわからないので言葉につまる。

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とりあえず自分の写真を持って来たよ、と先輩。
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「あの写真を画面に写すだけ?」と疑われながら、本人部分だけすごく拡大する。

さて、ここで昔の自分とご対面である。

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高橋さん(過去)「……コンニチハ……」
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「えっ!!!!!」
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「なにこれなにこれなにこれ怖い」

見ている方にはわからないが、先輩が見たことないぐらい取り乱している。

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高橋(現在)「こんにちは…あの…僕は…未来のあなたです…」

「おいこいつ本当に画面見てしゃべりはじめたぞ」と後輩と目くばせをした。

めちゃくちゃヤバい奴に見えるが大丈夫だろうか。

先輩がその気ならこっちも責任を持って、昔の先輩を演じなければならない。

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高橋(過去)「13才の高橋遼です。こんにちは…」

高橋さん(過去)と高橋さん(現在)は初対面である。とてもきまずい空気が流れる。

その空気を怖そうと高橋さん(現在)が喋りだした。

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高橋(現在)「あのー、あれだよ。平成が終わるよ。想像してないだろう、平成が終わるなんて。俺はもう30だよ」
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高橋(現在)「お前はいま野球やってんのかな? あ!お前、高校で急に左打者に変更させられるぞ。あと『バント職人』と言われる感じになるぞ。そしてそれに誇りを持つ自分もいるぞ」
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突然本格的な「未来人喋り」を見せた先輩を見て笑いが止まらない後輩。

対子ども向けの喋り方になるばかりか、めちゃくちゃ未来人として上から喋ってくるのでおかしくて笑ってしまう。

そんな後輩たちの目をよそに「弱かったから甲子園には出れないぞ」とありったけの情報を共有していく先輩。

さらに過去からの質問は続く「夢は叶えましたか」。

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高橋(現在)「夢もねぇ…見なくなってきたかなあ…。もっと夢を見たいっていう気持ちの方がつよいかなあ、って。何言ってんだろうね(笑)何が正解か俺にもわからないんだ。お前はわかってんのか?髪が多いなお前は本当に。30才の俺は坊主だ。逆にな」
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ひたすら「何言ってんだこいつ」が続き、初めて知る先輩の過去を横で聞かされる。ずっとニヤニヤする。

「これすごい体験では…?」と後輩が言う。

その間も先輩は「お金はあるから大丈夫だぞ。なんなら、お前の今の100円の感覚でおれはいま1000円を使うからな。それが幸せかどうかはわからないけどな」と喋り続けている。

笑いすぎて息ができない。なんだこれは。

「ぜひやりたい!」と後輩編もやってみることにした。

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郡司さん(過去)「コンニチワ……14才の郡司です…」
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郡司さん(現在)「あーーー!これすごい!こんにちは!26才の郡司です!!!!」

すぐにスイッチが入った。もうPC画面を前にすれば誰でもその疑似体験ができるようだ。

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郡司(過去)「身長はのびましたか?」
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郡司(現在)「あ!あれだろう。身長伸ばしてモテようといま牛乳一杯飲んでるだろう。残念ながら伸びないぞ。無駄な期待を持つな。骨だけ太くなってTシャツが少し着づらくなるぞ。あと授業中に胸の筋トレするのやめとけ。Tシャツがさらに着づらくなるぞ」
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初めて受け手側を経験した先輩が「なにこれすごい。めちゃくちゃしゃべるじゃん」と笑う。側から見たヤバさを理解したらしい。

後輩は「いまサッカーの市選抜に選ばれて調子に乗ってるだろうけど高校で現実を見るぞ、世界は広い」

「あと今かわいいって言われて喜んでるかもしれないけど、この年になると『狙ってる』とか言われて少し苦しむことになるぞ!」

などと一人で喋り、なんなら少し説教調になってきた。伝えたいことがたくさんあるらしい。

ネガティブなことばかり言われた郡司さん(過去)が「今なにが楽しいの」と聞いた。

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郡司(現在)「いまラップとか聞いてるだろう。エミネムとか!あれはすごくいいよ!君のおかげでいまもラップが好きで趣味として楽しめてるぞ、ありがとう。ただケミストリーは好きじゃなくなるぞ!そこは忘れて大丈夫だ」
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「ケミストリーに失礼」と笑ってしまった。初めて聞く話ばかりでおかしい。

自分も体験してみる

あまりに楽しそうにやるので自分も体験したくなってきた。先輩に声をお願いしてもらう。

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私(過去)「こんにちは、はじめまして。14才のひかるです」
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思った以上に「自分から話しかけらた」感がすごく拍手してしまった。

話しかけられた瞬間、不思議と「2004年を生きる中学生に伝わるように喋ろう」という思考に切り替わる。

私(過去)「いまはどこにいるんですか」

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私(現在)「今はね、東京にいるよ。ほら、いとこのさつきとかこずえ姉ちゃんが早稲田大学に行ったでしょ。それに憧れて、自ずと早稲田を目指すよ」
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「誰そのいとこ…」と言いつつ、この集まりは埼玉大学卒の集まりなので悲しい顔になってしまう先輩。過去の自分のやる気をそがないよう、結末は伝えないことにした。

私(過去)「いまはどんな仕事をしてるの?」

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私(現在)「あっそれが、いまあれでしょ、人のブログ読んだりテキストサイト見るのにハマってると思うんだけど、それを書く側にまわるよ。でもね、それが仕事というわけではないよ!でも毎日たのしいよ、大丈夫だよ」
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後輩「中学から趣味がそうなんだ…」先輩「なんかよかったね…」

私(過去)「海外旅行とかいってる?」

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私(現在)「最近韓国にいったよ!あっでも一人でだけど…ほら、今もあのー放課後とか苦手で一人ですっと帰ってると思うけど、いまも人が集まるところは苦手だよ。それはもう諦めて早めに切り替えたほうがいいよ」

過去の自分を目の前にし、ただまじめにアドバイスする人になってしまった。そのぐらい励ましたくなり、説教したくなり、いろいろあるけどとりあえずたのしいから大丈夫と伝えたくなるのだ。なんだこれは。

写真に語りかける手法は正しい

全員過去との邂逅が終わった。

感想をまとめると

・写真に語りかける手法は正しい、だいぶ体験として近い体験ができる
・昔の自分を見るとムズムズして諭したくなる
・実際に会うと気を使うし緊張する
・大したことを喋れずちょっとへこむ
・友達の全然知らなかった情報を聞く体験がとても面白い。飲み会でやりたい
・ガミガミ怒っていた親の気持ちがとてもわかる

などがあった。とにかく2時間ぐらいどっかんどっかん笑いっぱなしのすごい体験だった。

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先輩「なんかあれだね…人間って変わらないんだね…」後輩「本当ですね…」
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先輩「あと他人の話を聞いて俺もそれ言えばよかったってなるね」後輩「なった!もうゲートは閉じたから言えないのに……」

ご覧の通り、もう会話の後半には「ゲート」という単語すら出てきていた。こんなの「昔の自分に会った人間」からしか出てこない単語だ。そのぐらいの体験を私たちはした。

ぜひみなさんも、仲の良い人で集まる飲み会などで試してみてください。


最新テクノロジーに関わる説明が一番難しい

途中、先輩が「いま俺はスポティファイで音楽を聞いているんだけどな…」と言い過去から「それはなに?」と言われ戸惑っていた。

「まずはパソコンが手の中におさまるようになる」から説明していたので、ガジェットやネットに絡む情報を伝えたい時は工夫が必要だということがわかった。

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「あとNHKを面白いと思う時期がくる」と力説している後輩。人の意見に共感できるのもおもしろかった。
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