特集 2020年11月9日

タイムズパーキングの看板、でっぱってるか? でっぱってないか?

見慣れたこの看板には、同じように見えて微妙に違うバージョンが混在している

街を歩いていると、かなりの頻度で「タイムズパーキング」(正式名称は「タイムズパーキング」だが、以降は読みやすさのため「タイムズ」と表記)の看板を目にする。

ご存じだろうか。あの看板には、「でっぱってる」バージョンと、「でっぱってない」バージョンがあることを。さらには、100個に1個の確率でしか遭遇できない激レアなバージョンもあることを!

タイムズの看板について知っていれば、街を歩いているときに探す楽しみが増えて面白い。もっと知ろう、タイムズの看板。

1983年徳島県生まれ。大阪在住。散歩が趣味の組込エンジニア。エアコンの配管や室外機のある風景など、普段着の街を見るのが好き。日常的すぎて誰も気にしないようなモノに気付いていきたい。(動画インタビュー)

前の記事:街で発見! ゲームっぽい風景

> 個人サイト NEKOPLA Tumblr

でっぱってるタイムズ看板の存在

「タイムズ」といえば、言わずと知れた時間貸駐車場界のパイオニアである。1991年に1号物件「タイムズ上野」をオープンしてから約30年。目立つ黄色い看板の効果も相まって、街でおなじみの存在になっている。

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いたるところで見られるこの光景。もはや日常の一部である

散歩を趣味にしていると、本当にタイムズだらけなのが実感できる。あそこにタイムズがあったかと思えば、そのすぐ隣にも、さらに向かい側にもタイムズがあったりする。歌手の森山直太朗氏は、このような状況を『どこもかしこも駐車場』という曲にして発表している。世はまさに、大駐車場時代なのである。

そんなタイムズが気になりつつも、あまりに見慣れすぎていたせいで、深く考えることをしなかった。しかし、あるマンガを目にしたのをきっかけに、その意識が一変したのだ。星井さえこさんがTwitterに投稿した、タイムズの看板に関するマンガである。まずは、これを読んで欲しい。

 

 

「ロゴがでっぱってるかどうか」という視点! 全部おなじ看板だと思っていた自分の観察眼のなさよ。

これを見てからというもの、私の暮らしは、でっぱりを知っている方の世界線へと大きく分岐した。タイムズを見る目がまるっきり変わってしまい、街で見かけるとまず「でっぱり」を確認する体になってしまった。

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探してみるとたしかに、でっぱってない看板(新しめ)と、
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でっぱってる看板(古め)がある。実感として、でっぱってる方がレア度は高い

マンガを描かれた星井さえこさんに話をうかがった。ある日タイムズの看板を見たときに、なんとなく「にせものっぽい」と違和感を覚えたのが発見のきっかけだったという。それ以来じっくりタイムズの看板を見るようになり、やがて違和感の正体が「でっぱりの有無」だということに気付いたそう。

「違いに気付いた時はハッとしましたね! だからなんなんだという気はしますけど」と星井さん。たしかに、「だからなんなんだ」とは真理である。でもこの何でもない発見で、街を歩くときの楽しさが段違いに変わってくるのだ。すばらしい発見をありがとうございました。

でっぱってる方がレア?

看板のでっぱりを気にしながら街を歩いてみる。するとよく目にするのは、でっぱってない方(以降、「フラット看板」と呼称)である。なんとなく、でっぱってる方(以降、「でっぱり看板」と呼称)がレアな気がしている。

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なので個人的には、でっぱり看板を見つけたときに「あ、あった!」って喜んでしまう

でっぱり看板は見るからに古びている場合が多く、渋い見た目になっている。おまけに数が少ない(気がする)ため、いつしか自分のなかでは「でっぱり看板を見つけられたら今日はラッキーな日」という存在になっていた。

でも、あくまでそんな気がするだけだ。本当に数が少ないのかは分からない。やがて、「本当にでっぱり看板がレアなのか、確かめる必要があるのでは?」という謎の使命感が芽生えてきた。でっぱり看板を語るからには、ちゃんと調査して裏付けをすべきである。

そうして私は、大阪市内のタイムズを巡って、看板のでっぱりを調査する旅を開始したのであった。

タイムズ看板、一斉調査

都市部にはタイムズが密集している。どれだけ密集しているかは、タイムズの駐車場検索サイトを見れば分かる。それによると、大阪市内中心部では、半径2kmの円内に約100ヶ所のタイムズがあるようだ(見たところ、東京都心よりも大阪市内の方が密集率は高かった)。チェーン展開している物件としては他に類を見ない、まさに桁違いの数である。

しかし言い換えると、ちょっとの移動で大量のタイムズを巡れるということだ。入れ食い状態である。ウハウハである。

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大阪市内で自転車を借りて、さっそくタイムズ巡りを開始した

街によって看板の分布に違いがあるかも? という仮説のもと、調査は2エリアに分けて行った。

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ひとつ目は「ビジネス街」。淀屋橋や本町を中心としたエリアを探索した。東京だと大手町周辺のような街である
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もうひとつは「繁華街」。道頓堀や新世界などの「いかにも大阪!」という場所を含む、難波周辺を探索した
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バインダーに挟んだ地図を見ながら、しらみ潰しにタイムズを巡っていく。こういうときには、やはりアナログな手法が強い
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ひたすら、巡る、巡る、巡る

地図を見て、次に行くタイムズを決めて、自転車で進む。場所にもよるが、早ければ数秒、平均して1~2分もあれば次のタイムズに到着する。本当にこの密集率には驚くばかりである。しかしもっと驚くのは、その移動中にだいたい2~3ヶ所はタイムズ以外のコインパーキングがあるのだ。どこもかしこも駐車場である。

タイムズに到着したら、まずは看板をチェックし、その後は周辺の写真を撮影。一通り堪能したらまた次に行くタイムズを決め、自転車で進む……。その繰り返しだ。

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星井さんのマンガにも登場した、一番新しいタイムズ看板がこれ。2019年のリニューアル後の新参者である。でっぱっているが、件のでっぱり看板(旧ロゴ)と区別するため、ここでは「新ロゴ看板」と呼ぶことにする

調査1日目は5時間半(休憩除く)かけて、117ヶ所のタイムズを訪問。2日目も同じようなペースで、5時間かけて103ヶ所を訪問できた。合計220ヶ所である。平均すると2~3分に1ヶ所巡れたことになる。写真撮影時間も含めてこの時間なのだ。まさに入れ食い!

各タイムズ間をひたすら最短経路で辿る行動を取っていたので、やがて「自分は『巡回セールスマン問題』のセールスマンなのではないか?」と思ったりもしたけれど、「いやいや、『中国人郵便配達問題』の配達員の方じゃないか?」などと思考は混迷した。

ともあれ、これだけサンプルがあれば、なにかしらの傾向が見えてくるに違いない。さっそく結果を集計してみよう。

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でっぱり看板はレアだったか?

まず分かったのは、必ずロゴ看板があるわけではない、ということだ。

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こういった狭小地は、置く場所がなかったのかなと思うけど、
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かなり広めの駐車場でも看板がないパターンがあった

だからどうした、って感じではあるが(というか終始そんな感じだが)、あの看板はタイムズの象徴だと勝手に思っていたので、少し意外であった。

あとは店の駐車場がタイムズになっているパターンもいくつかあった。

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独立したロゴ看板がなく、店の看板にタイムズのロゴが印刷されているだけのことが多い

この場合は少し形態が違うため、「対象外」として集計からは除外した。

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さて、まずはビジネス街の結果から見ていこう
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でっぱり看板は、全体の8%。10数個に1個という、絶妙なレア加減だと判明

予想通り「でっぱり看板」は少なく、「フラット看板」が多数を占めていた。そのなかで予想以上に多かったのは「新ロゴ看板」。まだ登場して1年しか経ってないのに、約2割は新ロゴなのだ。すごい健闘ぶりである。

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続いて繁華街の結果はというと
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あれ? でっぱり看板が多いぞ。なんと3個に1個はでっぱり看板であった

「フラット看板」は同様に多いものの、こちらは「新ロゴ看板」が少なく、そのぶん「でっぱり看板」が多いという結果になった。ビジネス街と繁華街で、これほど違いが出るとは……。

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場所によっては、かなり年季の入った駐車場も見られた
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ガタガタの地面を見ると、この駐車場が歩んできた歴史を感じることができる

繁華街は駐車場の需要が高いため、昔から重点的に設置が進められていたのだろう。そのせいもあって年季の入った駐車場が多く、結果として古いタイプの看板である「でっぱり看板」が集中していると推測できる。

これまでの体感として「でっぱり看板はレア」だと勝手に思っていたけれど、調査してみると予想以上に地域差があることが分かった。ビジネス街ではレアだけど、繁華街ではそれほどでもない。何でも調べてみるもんだなあ、と一人で満足感を得ていた。

ともあれ、でっぱり看板=古い看板であることは明らかになったので、今後数が減っていくのは確かである。たまに見かけたら、「お、でっぱり看板がんばってるな!」と心の中で称えていきたい。

……いや、ちょっと待てよ

そんな感じでこの原稿を締める予定だった。だったのだが、いやいや、なんか違和感があるぞ。このまま終わってはいけない気がする。

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違和感のある看板を見比べてみる。あれ? この2つって、違う種類の看板なんじゃないか?

黄色の色味が違う看板があるのには気付いていた。でも「退色して色が変わったのだろう」と、当初は軽く考えていたのだ。実際、明らかに退色して白っぽくなっている看板は結構みられた。

でもよくよく見ると、この2つはロゴ自体が違うじゃないか。どういうことかと言うと……

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特に分かりやすいのはこの部分。立体感を出すために付けられているテカリの部分が違う!
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ほらほら、全然違う。ちなみに新旧は判明しており、左が旧、右が新である

さらにさらに、もっとすごい第三勢力も現れた。

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うわーーー!

エウレカー! って叫びながら、風呂から飛び出したい気分である。よく見るまでもなく、他の看板と全然違うじゃないか。

整理しよう。予想では、最古の看板は「でっぱり看板」である。それがリニューアルによって、実際にはでっぱっていないが、イラスト上で凹凸を表現した「フラット看板」が生まれたのだ。これは、看板や駐車場の古さを見れば明らかである。ここまではいい。

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問題はこれである

お気付きかと思うが、ロゴにまったく陰影がないのだ。立体感がまるでないため、タイムズ看板に共通する「でっぱり」の文化から外れている。これを便宜的に「完全フラット看板」と呼ぶことにする。どの時代のものなのか、現時点では不明である。

ちなみにこの看板、タイムズを220ヶ所巡って、発見できたのはたったの2ヶ所! 激レアもいいところで、遭遇率は驚異の0.9%である。発見できれば超ラッキーと言えるだろう。真のレア看板は、「でっぱり看板」ではなく、この「完全フラット看板」だったのだ。

次々と明らかになる新事実。だんだんと、タイムズ看板を見る解像度が上がってきたのを感じる。この「完全フラット看板」の時代を推測するためにも、もう少し考察を深めてみることにしよう。

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ロゴ看板以外に注目してみる

タイムズを巡りながら、ロゴ看板の他にも、「ロック板」や「満空表示器」といったパーキング設備も同時に観察していた。後からどんな事実が判明するか分からないので、気になったものはとりあえず気にしておくという精神である。

それらを見ていると、設置された時代ごとに特定の様式があることが分かってきた。

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まずは、「でっぱり看板」時代の代表的な駐車場様式を見てみる
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ロゴ看板の下に付いている、パーキング名の表示板(以降、「店名ボックス」と呼称)に注目。でっぱり看板の場合は、これが箱形になっている
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おさらいだが、フラット看板の場合は、少しでっぱった板状の看板だ

さらに、パーキング名そのものについても特徴がある。都市部の場合、現在は上の写真のように「地名+○丁目+第△」(○丁目がない場合もある)という命名が一般的なようだ。ひとつの地域に大量のタイムズがあるため、ここまで記載しないと区別できないのである。

一方で古いタイムズはどうか。

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地名オンリーである。設置当初は、ここまで物件が密集するとは思っていなかったのだろう。そういえばタイムズ一号物件も「タイムズ上野」というシンプルな名前だった

以前、当サイトの「自由ポータルZ」に、ライター・パスカさんによる『長い名前のタイムズを集めました』という記事が掲載された。そこに掲載されているタイムズは、とにかく名前が長い。名前が長すぎて面白いパターンである。一方、古いタイムズはとにかく名前が短いのだ。

名前が長くても短くても面白い。タイムズのパーキング名は、なんと奥深いことよ。

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ほかの設備も見てみよう。車が勝手に出られないようにするための「ロック板」。でっぱり看板には、「フロントロック式」と呼ばれるタイプが比較的多く見られた
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このように、文字通り車のフロント部分をロックする。最近ではあまり使われないようで、これがあれば古い駐車場という可能性がある
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フロントロック式の駐車場には、レーンを仕切る紅白のバーがセットになっていることも多かった
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「満空表示器」は大半がこのタイプ(青枠+タイムズロゴ+空車時は「P」表示)だが、
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一部の(おそらくかなり古い)設備では、縦長のP看板が見られた。「一時預り」という語句から、まだ時間貸駐車場が一般的ではなかった時代の名残を私は感じ取った
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「精算機」は、操作パネルにタイムズのロゴが入っているのが古いタイプのようだ。筐体の色は黄、青など何種類かあったが、特に法則性は感じられなかった
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そのほか、車両の有無を検知する「センサーポール」の存在も印象的だ

以上の特徴を持つのが、「でっぱり看板」時代のタイムズだという予想である。設備の古さを見るにつれ、でっぱり看板が古参タイプであるというのは確信に変わりつつある。

相変わらず、だからなんなのだ、と言われればそれまでだが、この同定方法が後々効いてくるので、うっすら覚えておいて欲しい。

「フラット看板」時代の駐車場様式

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フラット看板の時代になると、周辺設備も様変わりする
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まずロック板は、現在いたるところで見られる「センターロック式」と呼ばれるタイプに。青+黄のタイムズ的配色だ
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満空表示器は、おなじみのこいつ
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めちゃくちゃ細かい話で恐縮だが、満空表示器に描かれているロゴも、よくみると1種類ではない。ロゴ看板と同様にリニューアルされている
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精算機は、パネル部にグラデーションがかかっているタイプ(左)と、一部では電子マネーも使える最新型(右)が設置されていた
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センサーポールなども姿を消し(埋込式になった)、パッと見た感じかなりスマートになっている

「フラット看板」時代の様式は、まさに現代の駐車場といった風情である。こうして比べてみると、「でっぱり看板」時代の古めかしさが際立っている。ともあれ、これでパッと駐車場を見渡すだけで、なんとなくの年代感を推定できるようになった。

ところで、タイムズの歴史は、すなわち時間貸駐車場の歴史でもある。普通だとそういった歴史は、本を紐解いたり、専門家に聞いたりしないと分からない。でもこの場合は、街にたくさんの生き証人が存在している。

街を歩いて観察するだけで、その歴史の一端に触れることができるのだ。タイムズ巡りは、実は歴史探訪の旅でもある。そんなことに気付かされたのであった。

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ちなみに「新ロゴ看板」の設備はこの通り。満空表示器は「P」ではなく「空」表示に変更、精算機はタッチパネル式に、ロック板は白と黄色の配色に変更されている

余談だが、タイムズの設備は多くが「日本信号」製である。

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様式が分かると見てくるもの

先に紹介した設備などは、老朽化による取り替えも発生しているようだ。様式が分かってくると、「あ、これも取り替えられたんだな」っていうのが分かるようになる(なってしまった)。

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たとえばこちら。「店名ボックスが箱状」+「パーキング名がシンプル」なので、かなり老練の駐車場と見受けられる。なのに、看板はフラットだ。もちろん元々は、でっぱり看板だったのだろう
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ロック板については、フロントロック式が撤去され、センターロック式に付け替えられている場合も多かった。跡が残っているのですぐに分かる

そして私が一番興奮したのは、この駐車場である。

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その名も「タイムズ船場」

設備面でも、「フロントロック式」「縦長のP看板」「センサーポール」「紅白の仕切りバー」というオールスターが揃っており、まさに役満!

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それだけでもすごいのに、なんとロゴ看板がないのだ。あるべき場所には、駐車の注意点が書かれていた

おそらくだけど、ここはタイムズの中でも最古参に近い駐車場なのではないか。ほとんどの人が「ただのタイムズ」だと思って利用している駐車場だろうけど、なかにはこんな歴史ある物件も紛れているのだ。

まさに、知識が何気ない日常を面白いものにしていく、それを実感した瞬間であった。いろんな観察を積み上げていくことで、初めて見える風景もあるのだ。

「完全フラット看板」の年代考察

ようやく役者はそろった。ここまでの知識を総動員して、遭遇率0.9%、2個しか見つからなかった「完全フラット看板」の年代を推定してみよう。

まず1個目。

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「タイムズ南久宝寺」。パーキング名は短いので、古い可能性あり。店名ボックスは新しいため、取り替えられた後だろう
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満空表示器は、いつものやつ
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当初はこの看板の希少性に気付かなかったので、肝心の駐車場写真がこれしかなかった。分かるのは、精算機が「フラット看板」時代のもの(パネル部にグラデーション)ということだ

ロック板についてはストリートビューで確認したところ、「センターロック式」であった(取り替えられた痕跡なし)。「センサーポール」あり、「紅白の仕切りバー」なしであった。

これから察するに、「でっぱり看板」ほど古くはない雰囲気である。しかし「フラット看板」の中では設備面や路面の状態に古さがあった。

続いて2個目。

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実は2個目が問題児なのだ。なんと、店名ボックスが板切れなのである。こんなの初めて見たぞ……
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設備面では、旧型の精算機、センサーポールをはじめ、センターロック式のフラップも旧式に見えた。少し年代が古そうだ

以上の2例から推測すると、「でっぱり看板」よりは後の時代に思える。そして「フラット看板」の中では、一番古いものだろう。「フラット看板」は、最近までロゴが立体的に縁取られているものが主流だった。なので、「完全フラット看板」が最新である可能性はなく、最古参でしかありえないのである。設備面に若干の古さが見えるのも辻褄が合う。

よって、古い順に「でっぱり看板」「完全フラット看板」「フラット看板」という結論だ。

最後まで謎のまま残ったのは、板切れみたいな店名ボックスだけであった。あれ、本当に何なんだ……。

看板の新旧、答え合わせ

謎は謎のまま残しておいた方が、想像する余地があって面白い。なので、いつもならここで終わるところだけど、こと看板の新旧に関しては明確な答えが存在する。できれば正確な情報を残しておきたい。

そこで、タイムズを運営する「パーク24」に問い合わせたところ……親切にも看板の年代を教えていただくことができた。ありがとうございます! 見よ、これが正真正銘の答えである。

看板は古い順に、

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1. でっぱり看板(登場年:1996年)。やはり最古参はこれであった。厳密には1996年以前にも何らかのシンボル看板はあったようだが、残念ながら写真なども残っていないとのこと
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2. 完全フラット看板(登場年:2003年)。これも正解。フラット看板の最初期に存在したデザインのようだ
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3. フラット看板(登場年:2003年以降、複数回のリニューアルを経て、2013年に最終型)。私が気付いたのは2種類であったが、背景にグラデーションをかける、外形調整をするなど、細かい変更が複数回入っているとのこと。これは気付かなかった……
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4. 新ロゴ看板(登場年:2019年)。これは言わずもがな、昨年のリニューアルである

そして問題の、板切れ状の店名ボックス。これはなんと、でっぱり看板時代よりも前の、一番古いデザインとのこと。

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つまり店名ボックスについては、上の板状が最古参で、下の箱状はその次、ということになる。かなり古くみえる駐車場でも箱状が使われているため、板状は希少な激レア物件だと思われる。総当たりで訪問したとはいえ、よく見つかったなあ

まとめよう。タイムズには、まず「でっぱり看板」があった。調査した限りでは、後の「フラット看板」よりも現存数は少なく、また取り替えにより今後ますます数が減っていくと考えられる。

純粋なレア度でいえば、すぐにリニューアルされたと思しき「完全フラット看板」に軍配が上がる。単純に生産数が少なそうで、見つけたら喜んでいいレベルだろう。

「タイムズの看板がでっぱっているか、でっぱってないか」を調査するのが目的だったのに、思いがけず遠いところまで来てしまった。ここまで読んで下さったならば、きっとタイムズの年代推定がある程度できるようになっているはずである。

なんの役に立つのかと言われれば、特に役に立たない。でも知っていることで、街でタイムズを見かけたときに、ちょっとした楽しみを得ることができる。散歩のお供に、ぜひタイムズ観察を!


変わり種のタイムズ

220ヶ所も巡ると、中には「おっ!」と思う、変わったタイムズも存在していた。

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1台しか停められないタイムズ

当サイトでも以前取り上げたことのある、『1台しか停められないコインパーキング』に該当する駐車場。ギュッと凝縮された感じが素敵だ。

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繁華街にある白看板タイムズ

京都など、景観に配慮した看板が必要な地域に多いのが白看板。でもなぜか、大阪の繁華街に設置されていた。

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タイムズ公式の「小便禁止」看板

大阪の繁華街では、わりと見かける小便禁止。しかしタイムズが公式に書いているのには驚いた。

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ついに見つけた、日本一のタイムズ!

ちなみに日本一とは、日本橋一丁目の通称である。

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第2もあった

日本一なのに第2。脳がバグりかけたところで、さようなら。


お知らせ

大阪・西九条の「シカク」で、グループ写真展『いろんな塔』を開催します。私は「銭湯の煙突」で参加。他にも「火の見櫓」「団地の給水塔」「ラジオ塔」「群れ鉄塔」といった、塔状のモノが勢揃いです。ぜひお越し下さい!

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シカクプロデュース写真展「いろんな塔」
会期:2020年11月21日(土)~12月6日(日)
場所:大阪・西九条 シカク
http://uguilab.com/exhibition/202011/
※店休日などはサイトでご確認ください。

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