まず、キャップがすごい
ペットボトルのキャップをまじまじと見たことがあるだろうか?僕はあんまりなかった。でも、よく見たら本当に細かい部分までよく出来ているのだ。
プリントがきれい。
まずプリントが超きれい。これを自分でどうにかしようとするとかなり大変だ。
でもって、内側もすごい。
メーカーによって形が少しずつ違うけど、どんな組み合わせでも水漏れはしない。
ネジが切られているのだけど、溝が掘られていて寸断されている。ガス抜きのためらしい。炭酸飲料以外もこのようになっている。
メチャクチャ細かい。ポカリスエットのキャップだがネジが寸断されている。
気密性はキャップの裏にある円形の出っ張りで保たれているようで、これが無いと水が漏れる。
この出っ張りが重要。ネジはボトルの口をこの出っ張りに押し付ける役割しかない。なのでガス抜きの溝があっても水漏れはしない。
最近のキャップにはスリットがない
ちょっと古めのキャップには、上部に横向きのスリットが入っていた。ガス抜きのスリットなんだけど、最近のキャップには見当たらなかった。
数年前のキャップ。登山用のボトルに使っていたのでスリットに汚れが入って見やすい。
ネジの溝で十分ガス抜き出来るという事になったのだろうか。新し目のキャップにはスリットがない。
下が今のキャップ。どう探してもスリットがない。
で、作ってみることにした
まじまじ見てると結構細かくてすごい。自分でも作ってみたくなったので3Dプリンターでやってみることにした。
デジタルノギスでサイズを計る。
サイズを計ったらCADで設計図を書いていく。最近のCADは簡単なので素人でも半日くらい本を読めば図面を書けるようになる。すごい。
丸をいっぱい描いて『押し出し』という操作をすると立体になる。
内側には例の出っ張りとネジを作り込む。ネジの作り方はこのページを参考にしました。
こんな形になった。
このモデルデータを3Dプリンターに送って作る。
1時間くらいで出来た。
この時点で、あっ、って思った。失敗。
滑り止めを忘れた
内側ばかり見ていたら、外側の滑り止めを作り忘れてツルツルのものが出来てしまった。
一応閉まるけど容易に開けられなくなる。滑り止めは大事だ。
かつてこんなに開けにくいボトルキャップがあっただろうか。
あと、内側のネジが浅すぎた。内径が大きすぎたんだ。
このあと、作り直すこと、3回
外側に溝を作ったり内径を変えたりしたりして2個目を作ってみた。
2個目の設計。
作った。
一応内側のネジもいい感じになった。
でも締めたら割れた。内径を大きくした分壁が薄くなって強度が下がってしまった。
あちらを立てればこちらが立たず。難しい。
なぜ僕はペットボトルのキャップをこんなに一生懸命作ってるんだろうか(もう分からない)。
再度の設計変更。
出来た。あっと言う間に見えて、設計して作るサイクルで1時間半くらいずつ経っている。
溝が細かいと造形時間が延びるので溝を減らした。
都合、3回の作り直し。
並べてみても違いがよく分からないだろう。0.1mm単位でちょっとずつ違う。
上手くいったかどうかは次のページ。
水漏れしませんでした
水を入れたボトルにキャップを付けて圧力を掛けてみたが、水漏れはしなかった。一応成功っぽい。
苦労してペットボトルのキャップが出来た。
みんなペットボトルは水漏れしないのが当たり前だと思っているだろう。完全に信頼しているはずだ。
でも、その信頼は当たり前のものじゃないのだ。水漏れしないようにするのはとても難しい。
ロゴ入りも作ってみた。
3Dプリンターでこういう細かい模様を描くのは難しいので、こんなもんで許してください。
単色のフィラメント(3Dプリンターで使う材料)しか使えない3Dプリンターで作ったので、白→青→白の順でフィラメントを手動切り替えしてます。
既製品の出来の良さよ。キレイにプリントするのはとても大変だ。
模様がそんなに細かくなければこういうのも作れます。白→青→クリアの3色を使ってます。
ペットボトルのキャップは本当によく出来ている。こんなに作るのが大変なものが大量生産されてポイポイ捨てられている。現代社会ってすごい。
3Dプリンターで作ると1個で1時間掛かります。
ボトルもすごい
キャップもすごいがボトルもすごい。完全に透明で薄くて軽くて頑丈。なにこのオーパーツみたいなやつ。
エンボスで模様が入ってたりしてすごい。
ボコボコになっていても穴が開かない。すっごい丈夫。
口の部分も超透明で精度が高いネジが作られている。とても美しい。
こんなちっちゃいボトルもある。明治のR-1というヨーグルト飲料のボトル。登山用に液体調味料を入れるのによい。
ボトルも作ってみた
キャップの方はなんとか出来たので、今度はボトルの方も作ってみることにした。
そのままのサイズは3Dプリンターで作れないので小さいボトルを設計した。
こんなボトルを作って無駄にレンダリングしてみた。背景を野原にしたらマグリット感出た。
で、3Dプリンターで出力。レンダリングの様な透明感は出ないが、形は同じ。
造形時間は2時間ちょっと掛かります。
素材はPETGという樹脂です。つまり素材的にもペットボトルです。
可愛いの出来た
キャップはきちんと締まるっぽい。丸っこくてちょっと可愛いのが出来てしまった。だが、問題は水漏れしないかどうかだ。
可愛い。
水を入れて横にして漏れないか試す。
漏れるかどうか試してみた。
だだ漏れ
結果、めっちゃ漏れた。目に見えて漏れるわけじゃないが、じわじわと漏れていって2時間くらいしたらボトルの周りは水浸しになった。
あらー。
密閉ボトルを作るのは無理かも
ちっちゃいのとか壁が厚いのとか色々試したが、完全密閉のボトルを3Dプリンター(積層型)で作るのは難しいと分かった。
こんなちっこいのも作ってみた。
素材はPETGやABS樹脂を試した。
2日くらい経つと醤油が沁みだしてくる。充填率を100%にしたり壁を厚くしたりしても、漏れは防げそうにない。
ちょっと大きめのミニボトル。これも漏れる。
ペットボトルがすげぇ。マジですげぇ。
ペットボトルやばい
フィラメントを散々ゴミにして分かったんだけど、完全に密閉された容器を作るのはとても難しい。
ペットボトルは薄くて透明で丈夫で完全密閉されていてすごい。なぜこれが毎日ゴミとして捨てられているのか理解できない。
もうちょい続きます。
もうちょい頑張ってみた
ペットボトルの口を小さくするキャップを作ってみることにした。ペットボトルからペットボトルに水を注ぐときに便利かなと思ったからだ。
こういう形。
キャップであり、ボトル側の口も付いている。
水を細く出せる。
設計して作った。で、漏れた。
こういうものはとにかく水漏れとの戦いだ。
一発で水漏れ無しに作れることはない。
またしても試作を4回。白ばっかは飽きたので色を変えてみた。
左から右へ、細かく違ってる。
4回目にしてようやく漏れなくなったが、コーラ以外のキャップだと漏れる。
ペットボトルではなく、プラティパスというソフトボトルに付けると漏れる。
普通のペットボトルキャップなら漏れないけど、僕が作ったやつとプラティパスの組み合わせだと漏れる。
普通のペットボトルキャップとプラティパスの組み合わせは、微妙に噛み合わないのだけど水は漏れない。
なぜあんなに漏れないのか、なにがどうしてそうなるのか分からない。既存のペットボトルすげぇ。
あらゆるキャップがすごい
ペットボトルだけでなく色んな容器のキャップがすごい。下の写真はステーキソースの瓶。
このキャップがすごい。
完全密閉されるし注ぎやすい。
ちょっと開いた状態。
押し込むとパチンと閉じる。よく見ても、どうしてこのクリック感が出るのかよく分からない。
パチンと閉じる。そして漏れないし液だれもしない。神のキャップだ。
それだけでなく廃棄するときの分解方法まで神がかっている。引っ張ると簡単に切れて取れるのだ。
すごいよく出来てる。
設計できる気がしない。どこの天才だ、これ作ったの。
簡単に取れて、プラスチックとガラスを分けられる。
100円ショップのコレもすごい
100円ショップで買ったプラスチックのボトルもすごい。2本で100円なので1本50円。液体を入れても漏れない。
超よく出来てる。
蓋の裏側の構造がすごい。強度と密閉性と作りやすさが考えられている。
既製品、ホントにすごい。
現代社会、マジですげぇ
日常、何気なく使っている消耗品をよく見るとすごい叡智の塊だったりする。そのすごさは自分で作ってみるとよくわかる。ペットボトルは超凄い。
100円ショップの製品もすごいし、パソコンもスマホも自動車も本当にすごい。僕らは大量のすごいものに囲まれて生きていて、それらを作っているすごい人たちがたくさんいる。
すっげーなー、この世。
で、僕が使ってる3Dプリンターは4万円、次世代機でも5万円くらいです。買うと楽しいのでみんなも買って色々作ったらいいですよ。
3Dプリンターも安いのによく出来ている。