池袋の変化を追ってきて、変わらないものと変わるものを見てきた。変わらないもの、それは池袋に根付く人々のこころだ、とか書くのも恥ずかしいので、「池袋で変わらないものは、ロマンス通りの門だった」という結論にしておきたい。
10年は、短いようで長いような、近い過去である。知っている街の、見ていたはずの風景でも、現在の風景に埋まってしまって思い出すことができない。
そんなかつての風景を思い出す旅が、この散歩である。
ストリートビューを使って、そんな近過去の旅行をしてみてはどうだろうか。
10年前の池袋を歩いている。
今回は最終回だ。今、池袋で大きな存在感を持つエリア、中華街を歩いてみよう。
れんさい企画「10年前の池袋を歩く」
足を踏み入れると、香るのはスパイシーな香辛料の匂い。
同行した西村さんが、「中国の屋台で同じような匂いを嗅いだことがある」と言っていた。目をつむればほとんど中国なのだ。
その匂いに誘われてあたりを見渡すと目立つ中華料理店。10年前はどうだったのか。
2009年
10年前は低層住宅にインド料理屋などが入っていた。変貌がすごい。変わらないのは「八丈島」である。
(2009年)ビデオ個室だった。「居酒屋 弁慶」だけ変わっていない
京劇のお面が大きく掲げられたここはなんだったのだろう。
(2009年)ネイルサロンだった
ネイルサロンから中華料理屋へ。大胆な居抜きである。
京劇のお面が描かれているところには、パブがあった。パブの記憶を上塗りするかのように、お面が描かれる。
10年前、多くの店はまだ中華料理屋ではなかった。この10年確実に中華街は中華街になっていった。
麻辣麺の後ろには、西口のシンボルマーク的存在「ロサ会館」がある。
このピンク色の建物がロサ会館である。驚くのはここの10年前だ。
(2009年)
10年前、タピオカ屋があった
タピオカってもう10年前のことか? と一瞬怪しんだが、第2次タピオカブームのころかもしれない。
しかし、ここには10年前からタピオカ屋があったのだ。こうなってくると、どっちが10年前でどっちが現在なのかわからなくなる。
西口歓楽街で、時間がごちゃ混ぜになる。
ロサ会館は映画館・ゲームセンターなどの娯楽施設がたくさん入居している複合レジャービルで、1968年にオープンした。スペースインベーダーの人気と共に来館者が増加し、現在まで続く施設になっているという。
その入り口。
10年前もほとんど変わっていなさそうだが、どうだろう。
(2009年)
看板が少し古い。10年の間に掛け替えたのだろう。
それと、傍にあった「iPhone修理」は、タバコの銘柄「LARK」とあった。タバコ屋だったのだろう。そういえば、この10年でタバコについての意識もかなり変わったのだった。それと、現在何も書いていない看板がある場所は、かつて「今宵もあっぱれ! 和風パブ スーパー越後屋」だった。もう、あっぱれしていない。
それと、実はこの場所、つい数ヶ月前でも店に変化がある。
去年(2020年)の写真。
スーパー越後屋はまだあるし、iPhone修理の店は、「iQOS」の看板だった。Lark→iQOS→iPhone修理という時代の変遷よ。
すでに一年前でこの変化である。
前にも書いたかもしれないが、池袋の変化は早い。早すぎる。この変化は常にカメラを向けていなければ気づかない。
ロサ会館を通り過ぎると、「ロマンス通り」と書かれた門が現れる。昭和っぽい字体がなんともいえず、良い。
ここを通り過ぎると、西口歓楽街の始まりなのだ。いわば、ここは現代の吉原大門である。
10年前はどうだっただろう
(2009年)
そのままだった。本当に、ほとんど変わっていなくてびっくりする。今回の旅でほとんど唯一変わらないものがこれだったかもしれない。
この門もいつ変わるか分からないが、しかし、ここだけは十年間じっと西口歓楽街の変化を見つめてきたのである。
池袋の変化を追ってきて、変わらないものと変わるものを見てきた。変わらないもの、それは池袋に根付く人々のこころだ、とか書くのも恥ずかしいので、「池袋で変わらないものは、ロマンス通りの門だった」という結論にしておきたい。
10年は、短いようで長いような、近い過去である。知っている街の、見ていたはずの風景でも、現在の風景に埋まってしまって思い出すことができない。
そんなかつての風景を思い出す旅が、この散歩である。
ストリートビューを使って、そんな近過去の旅行をしてみてはどうだろうか。
れんさい企画「10年前の池袋を歩く」
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