小出し記事 2021年5月23日

ビックカメラの数字が違う~10年前の池袋を歩く その1

街は生き物だ。新しくお店ができたり閉店したり、ときに再開発で大きく風景が変わることもあるし、ずっと変わらない場所もある。

それでも、言われてみないと変化に気付かなかったりもする。

100年前ならいざしらず、いわんや10年前をや、である。

1997年生まれ。大学院で教育学を勉強しつつ、チェーン店やテーマパーク、街の噂について書いてます。教育関係の記事についても書きたいと思っているが今まで書いてきた記事との接点が見つからなくて途方に暮れている。

前の記事:音楽の教科書に載っているロックの説明が詳しすぎる

> 個人サイト Note

池袋の10年前

10年前、ここになんの店があったっけ、と聞かれると、返答に困ってしまう。

今と変わっていないような気もするし、変わっているような気もする。遠くて近い、それが10年という月日ではないだろうか。

池袋には、生まれた時からお世話になっている。かれこれ20年以上の付き合いだが、池袋の10年前も、想像できるようでなかなか難しい。

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池袋。これは今

じゃあ、10年前と今の池袋を見比べて歩いてみよう、というのがはじまりだった。うれしいことに、Google Mapのストリートビュー搭載の機能を使えば、10年前ぐらいの風景を見ることができる。

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こんな感じで

Google Mapを手に、池袋に出かけよう。

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ちょっとずつ変わっている

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取材には、DPZウェブマスターの林さんとライター西村さんに同行してもらった。林さんも西村さんも、昔からの池袋ユーザーだ
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iPad片手に池袋を歩き回っていく

10年前ぐらいなら、あまり変わらないかな、と思っていた。しかし、よく見ると、ちょっとずつ変わっている。

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秀山荘がファミリーマートになっていたり

2009年

 

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ampmもファミリーマートに。ファミマが増えたことはよくわかった

2009年

iPadの中の風景は、2009年、今から11年前のもの。

建物自体は変わってないけれど、看板がそのまま塗り替えられていることに気が付くのだ。

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ビックカメラパソコン館の変転

歩いていて真っ先に話題になったのが、池袋東口のほど近く、ビックカメラパソコン館のこと。

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こちら。旧式の携帯の形になったビルが、池袋の中でもひときわ目立つ

携帯の形といい、建物の装飾の感じといい、どことなく”近過去感”を感じさせるこの建物、ずっとそのままなのかどうかがみんな気になっていたのだ。

Googleマップを覗くと。

あ、そのまま存在している。

10年前から、たしかにそこにあった。しかし、そのとき私たちは誰ともなく気がついたのである。

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ボタンの位置が違う

こちらが10年前。これが現在になると、

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ボタンの位置が変わったことに気づいただろうか。

10年前、ボタンの位置は、ホンモノの携帯電話の位置通りになっている。でも、現在は、その配置が変わり、なおかつフロアや売っているものなどが描かれるようになったのだ。携帯ではあり得ない「B1」というボタンまで登場している。

なんというマイナーチェンジ。

今の方が、より実用的になっていることがわかる。

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ボタンの位置に歴史を見た

ビックカメラパソコン館が完成したのは、1994年のこと。”近過去感”を感じるのは、ゆえなきことではない。

その当時、建築界では「ポストモダン建築」といって、過剰に装飾を付けたり、派手な外観を持った建物が多く作られていた(もっと複雑な定義があるが、ここではそれぐらいで良いと思う)。

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例えば、上野不忍池沿いにかつて存在した菊竹清訓「ソフィテル東京」はビックカメラパソコン館と同じ1994年に開業している。圧倒的な複雑さ
(ソフィテル東京ホテル:By Lover of Romance, CC SA-BY 3.0)
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今や東京の代表的観光地になっている江戸東京博物館も、同じぐらいの時期に建てられた。「ソフィテル東京」と同じ建築家の菊竹清訓の作品。高床式倉庫をモチーフにしている(江戸東京博物館:By Wiiii, CC SA-BY 3.0)

ビックカメラパソコン館も、こうした流れにあったのだろうか。よく考えれば、建物の側面に、ただ携帯電話のオブジェが付いているのだ。すごくチャレンジングではないか。

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見慣れるとなにも感じないが、始めてみると、たぶん驚く外観

しかし、ポストモダンな建築群は、時とともにだんだんすたれていき、その後はもっとソリッドで、実用的な建築がもてはやされるようになった。

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右の建物が、かつてソフィテル東京があった場所に立っている「パークタワー上野池之端」。今やすっきりとしたタワーマンションに。90年代は遠くなりにけり

パソコン館の携帯電話も、この流れに乗っていく。

携帯電話も、本物っぽさ重視の時代から

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商品紹介という実用重視の時代へ

マイナーチェンジかもしれない。しかし、ボタンの位置の変化は、ポストモダン建築の盛衰を刻んだ、歴史の生き証人である。

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歴史が、ここに、あった

池袋の些細な変化には、万物の生々流転が刻まれているのではないか。

そんなことを、ビックカメラパソコン館を見ながら思うのだった。


次回は、サンシャイン通り。いろんなお店の変遷をたどります。

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