池袋の10年前
10年前、ここになんの店があったっけ、と聞かれると、返答に困ってしまう。
今と変わっていないような気もするし、変わっているような気もする。遠くて近い、それが10年という月日ではないだろうか。
池袋には、生まれた時からお世話になっている。かれこれ20年以上の付き合いだが、池袋の10年前も、想像できるようでなかなか難しい。
じゃあ、10年前と今の池袋を見比べて歩いてみよう、というのがはじまりだった。うれしいことに、Google Mapのストリートビュー搭載の機能を使えば、10年前ぐらいの風景を見ることができる。
Google Mapを手に、池袋に出かけよう。
ちょっとずつ変わっている
10年前ぐらいなら、あまり変わらないかな、と思っていた。しかし、よく見ると、ちょっとずつ変わっている。
2009年
2009年
iPadの中の風景は、2009年、今から11年前のもの。
建物自体は変わってないけれど、看板がそのまま塗り替えられていることに気が付くのだ。
ビックカメラパソコン館の変転
歩いていて真っ先に話題になったのが、池袋東口のほど近く、ビックカメラパソコン館のこと。
携帯の形といい、建物の装飾の感じといい、どことなく”近過去感”を感じさせるこの建物、ずっとそのままなのかどうかがみんな気になっていたのだ。
Googleマップを覗くと。
あ、そのまま存在している。
10年前から、たしかにそこにあった。しかし、そのとき私たちは誰ともなく気がついたのである。
ボタンの位置が違う
こちらが10年前。これが現在になると、
ボタンの位置が変わったことに気づいただろうか。
10年前、ボタンの位置は、ホンモノの携帯電話の位置通りになっている。でも、現在は、その配置が変わり、なおかつフロアや売っているものなどが描かれるようになったのだ。携帯ではあり得ない「B1」というボタンまで登場している。
なんというマイナーチェンジ。
今の方が、より実用的になっていることがわかる。
ボタンの位置に歴史を見た
ビックカメラパソコン館が完成したのは、1994年のこと。”近過去感”を感じるのは、ゆえなきことではない。
その当時、建築界では「ポストモダン建築」といって、過剰に装飾を付けたり、派手な外観を持った建物が多く作られていた(もっと複雑な定義があるが、ここではそれぐらいで良いと思う)。
ビックカメラパソコン館も、こうした流れにあったのだろうか。よく考えれば、建物の側面に、ただ携帯電話のオブジェが付いているのだ。すごくチャレンジングではないか。
しかし、ポストモダンな建築群は、時とともにだんだんすたれていき、その後はもっとソリッドで、実用的な建築がもてはやされるようになった。
パソコン館の携帯電話も、この流れに乗っていく。
携帯電話も、本物っぽさ重視の時代から
商品紹介という実用重視の時代へ
マイナーチェンジかもしれない。しかし、ボタンの位置の変化は、ポストモダン建築の盛衰を刻んだ、歴史の生き証人である。
池袋の些細な変化には、万物の生々流転が刻まれているのではないか。
そんなことを、ビックカメラパソコン館を見ながら思うのだった。
れんさい企画「10年前の池袋を歩く」