お腹が痛くなる
何を隠そう僕のことである。コーヒーを飲むと胃が痛くなるのだ。味も香りも好きだが、飲めない。
コンビニのコーヒー売り場。僕を3人殺せる致死量である。
よっぽど仕事が忙しいときにだけ、「今日は気合を入れるぞ!」という気持ちでカフェインを摂ることがある。しかしそんな時もエスプレッソを飲むと死に至るので、これが限界である。
牛乳75%使用
本人としてはバリバリの気合全開モードなのに、傍目には優雅に午後を満喫しているようにしか見えない。(ちなみに栄養ドリンクも飲めない。カフェインに弱いのかもしれない。)
胃弱の救世主
まあそういう、人にどう見られるかみたいな話はさておき。僕は普通にカフェオレが好きで、飲みたいのだ。でも体質がそれを許さない。たまに我慢しきれなくて飲むと、必ずほどなくして腹痛と後悔にさいなまれる。しかしこのたび、そんな僕のもとに救世主があらわれた。
デカフェ、つまりカフェインレスコーヒーである。
Amazonで届くタイプのメシア
スタバやタリーズにデカフェがあることは知っていたが、家で手軽に飲めるインスタントコーヒーのデカフェがあるなんて知らなかった。即買い、しかも2本買った。いま家に100杯分のデカフェがある。
今までずっと我慢していたカフェオレが、飲み放題なのだ。この喜びをどう表現するべきか。自分に舞踏の素養さえあれば、喜びの舞のひとつでも奉納したい気分である。
しかし残念ながら僕には舞踏の素養がなかったので、電子工作で表現することにしました。
カフェオレのための装置
マグネティック・スティーラーという装置がある。ビーカーの中身を混ぜるための機械だ。ビーカーの中に混ぜたい液体と、小さい部品を入れる。この小さい部品は磁石にくっつく素材でできている。そしてビーカーの下で磁石を回転させると、ビーカーの中の部品も回って、液体をかき混ぜてくれるのだ。
液体が混ざる。まさにカフェオレにうってつけの装置。これを自作して、喜びの表現と代えさせていただこう。
磁石を回転させるために、PC用のファンを使った。ファンのまわりに枠があるので、コップを置く台を作らなくて済むのだ。(すごい名案を思いついたような顔をしていますが
こちらを参考にしました。)
磁石をファンに貼り付け、透明下敷きでカバーをする
磁石は2個使うのだが、ネオジム磁石は強すぎて、パッケージから出すとすぐに磁石同士でくっついてしまう。小さいのでファンへの接着も難しい。パッケージの台紙ごと切り抜いて貼るのがコツである。
コップに入れる方の部品。ストローと、こちらも磁石×2、あとゴムチューブの破片
磁石がくっつかないようにゴムチューブをスペーサーに使う
混ぜるだけならこのままでも行けそうだけど、飲み物に使うので、できるだけ衛生的な状態を保ちたい。ということで…
ダメもとでストローの両端をアイロンがけしてみたら、バッチリ密封できた
これで完成だ。15分くらいであっさりできてしまった!
電源をつないで、動かしてみる。
コップの中に静止していたストローが、ファンが回転しはじめると同時にクルクル回りだした!
クラッシュした
コップの向き不向き
このあとしばらく試行錯誤したのだが、何のことはない、問題は単にコップの形状だった。上のGIFのコップは100均で買ったプラコップで、底が山型に盛り上がっている。それにストローが引っかかっていたのだ。
コップの底が平らで、かつ磁石に近すぎず遠すぎずの適度な厚みである必要がある。その結果、選ばれたコップがこちらだ。
この厚みがベスト
あと、コップを乗せるとフタがたわんで磁石を押さえつけてしまうので、スペーサーとして四辺にゴム板を貼った
回る回る!!
スゲー!渦巻きができた!
マグネティック・スティーラー、普通は研究室とかにあるやつじゃないですか。これが家で、こんなに簡単にできてしまうとは!
これを動かしておけば、家にインテリアとして渦巻きを常備することさえできるのだ。昨日までは全く想像していなかったタイプの贅沢である…!
カフェオレという奇跡
興奮のあまり本来の目的を忘れそうになってしまった。
マグネティック・スティーラーを作ったのはあくまでデカフェの喜びを表現するためであった。いまこそこれでカフェオレを作り、デカフェの喜びを表現するのだ!
すごい。粉、お湯、牛乳の順でコップに注いでいくだけで、みるみるカフェオレができていく。
二つの液体を一つの容器に注ぐことを「混ぜる」というが、それをなじませるために棒でグルグル回すことも「混ぜる」という。つまり日本語において、二つの液体を一つにすることと、棒でグルグルすることは不可分だったのである。それが、注ぐだけでグルグル不要でカフェオレに。日本語という言語が想定していなかった事態が、ここに起きているのだ。
言うなれば奇跡である。デカフェに出会った喜びのあまり、奇跡を起こしてしまった…!
……と、ここで一つ、脳裏にある不安がよぎった。
1.空のコップにインスタントコーヒーを入れます
2.お湯を注ぎます
3.牛乳を入れます
4.カフェオレの完成
うまい…
そうなのだ。べつにマグネティック・スティーラーで混ぜなくても、インスタントコーヒーは十分溶けるのだ。俺の奇跡がインスタントの利便性に負けた。なんだよー!
もう俺は全自動にする
工作は成功、しかしまさかのどんでん返しである。果たして僕が作ったのは、混ぜなくてもできるカフェオレを無駄に混ぜる装置であった。これで、電子工作でデカフェの喜びを十分に表現できたと言えるのだろうか。
否、である。こんなことではデカフェに申し訳が立たないのだ。
同じく100均で買った小物入れ
ここにモーターを取り付けます
コップも付けます
これがなんだかわかるだろうか。上にコップが付いていることでだいたいの察しが付いたのではないかと思う。
全自動カフェオレメーカーである。
こうやって材料をセットして使います
なんの試運転もなしに適当に作ったので、液体を入れて動かすのは正直ものすごく怖い。こんな時に必要なのは、失敗を想定しない、心の強さである。電子工作は意外とむこうみずな趣味なのだ。
全自動カフェオレ、成功!!!
正直なところカフェオレのおいしさよりも、熱湯や牛乳がこぼれなかった安堵のほうが大きいのだが、なんにせよ全自動でカフェオレができたのである。めでたい。
「電子工作でデカフェの喜びを表現する」という目的は、十分に達成できたのではないだろうか。
次のページでは、マグネティック・スティーラーを使ってもう少し遊んでみます。
おまけ:マグネティック・スティーラーが面白い
というわけで本来の目的は果たしたのですが、作ったマグネティック・スティーラーがおもった以上に面白かったので、いくつか実験の模様を掲載して締めくくろうと思います。
1.紙を入れてみる
小さく刻んだ紙を入れてみると、水の流れがよくわかって面白い。
水だけを入れても上の方に小さな渦巻きが見えるだけだけど、紙を入れてみると水中に吸い込まれてクルクル回転し始め、底の方まで竜巻状の渦が発生していることがよくわかる。
2.コショウを入れる
紙は大きすぎて、強い水流にしか反応しない。もうちょっと細かいものを入れたら、渦巻きの全体像が見えてくるのではないか。そう思って選んだのが、水に溶けない粉末である、コショウ。
最初はかなりはっきりした竜巻が生まれていて、砂っぽい色も相まって本物のハリケーンみたいだった。
しかし次第に拡散してしまって、ただの薄茶色の水になってしまった!
3.ゴマを入れる
回転を止めるとさっと浮いて、再度回すとまたすぐ竜巻になる
結果的に、うずまき観察にベストだったのがこのゴマである。
投入後わりとすぐに縦長の渦巻きにまとまり、しかもこれがずっと維持される。
うずまきの芯の部分からはぐれた粒たちが、周縁部をクルクル回っているのも可愛い。まるで蜂の群れのようである。
うずまきを観察するには、ゴマがベスト!
4.玉子
最後に、マグネティック・スティーラーを使ってカフェオレ以外の調理ができるか試してみた。液体でたくさん混ぜなければいけないものと言えば、玉子。水よりかなり抵抗が大きい気がするけど、混ぜられるだろうか?
ちょっと時間はかかるけど、玉子は確実に混ざるみたいだ。
最序盤。かなりゆっくりの回転に見えるが、下の方で白身が撹拌されていて、回転が黄身まで届いていない状態
あとはじわじわと全体が混ざっていく
最終的に、できた卵液がこれである。
わりとよく混ざっている
美味しい、だし巻き卵になりました
デカフェはいいぞ
なんかどんどん話が逸れてきてしまったが、とにかくデカフェのインスタントコーヒーが見つかってよかった!という喜びをお伝えすべく書き始めた記事である。おなかは痛くならないわ夜中でも飲めるわ何杯飲んでも大丈夫だわ、いいことづくめ。この知識が皆様のコーヒー生活の一助となれば幸いです。