新たなまくらの姿を求めて
低反発まくらの名前を聞くようになったのは15年くらい前だろうか。
ある種のブームのように広がって、今や定番のまくらになっている。
低反発まくらと言えば、テンピュールだ。
テンピュールのチラシには睡眠の質を高めてくれそうなことがたくさん書いてある。
一方低反発まくらのブームに反抗するかたちで、高反発まくらというのも広まってきている気がする。
そのメーカーの1つであるマニフレックスのまくらを使っているのだが、
箱にデカデカと香川真司がプリントされていた。
まくらを使えるだけでなく香川真司といつでもツーショットが撮れるのでお得である。
低反発と高反発、どちらも質のいい睡眠を提供するために生まれたはずだが、「反発力」というテーマで対照的なアプローチになるのが面白い。
だが「反発力」をテーマとしたときに、まくら業界がまだ手を出していない領域があることに気が付いた。
「猛反発」である。
図に表すとこういうことだ。
円の大きさは市場規模(筆者の根拠のない推定)である。
完全に競合のいないブルーオーシャンだ。今ここに参入したらまくら長者待ったなしである。
なんとなくのイメージとしては、寝たら頭が吹っ飛ぶくらいの反発力は持たせたい。
睡眠の質どころではない気もするが、こんなまくらはまだ世の中にないだろう。
圧倒的反発力を持った猛反発まくらを作ってみることにした。
こちらが猛反発まくらです
試行錯誤の末に完成したのがこちらだ。
まくら本体と、装置である。
反発力を生み出すところは専用の装置を作った。
この組み合わせで猛反発を生み出すのだ。
早速装置のスイッチを入れてみよう。
スイッチオンで飛んだ…!
これが反発力の為せる技なのかはわからないが、とにかく飛んだ。
想像していた2倍くらい吹っ飛んだので満足度が高い。
しかしまくらが小さいのが気になる方がいるかもしれない。重かったのだ。
軽量化のために中綿をひたすら抜いていたらえらく小さくなってしまった。
地球の重力がもっと小さければ良かったのに…と思わずにいられない。
先ほどの装置単体だとちょっとまくらっぽさが伝わりづらいかもしれない。
そこでマネキンの頭を寝かせてみよう。
寝かせたらそれっぽさが出た。
一見して就寝風景になっていないだろうか。マネキンを使っているのは僕の首を案じたためである。
この状態で猛反発まくらを動かしてみよう。
バーン!
めちゃくちゃ飛んでいった!
首の根っこごと刈られていった感じである。
飛んだ瞬間。
躍動感がすごい。普通のまくらでは得られない体験だ。まったく安眠出来そうにないという点も斬新である。
完全にまくら業界に一石を投じるモノが出来てしまった。
通常のまくらと猛反発まくらを比較するとこうなる。違いは一目瞭然だ。
猛反発のさせ方
かなり軽くしたとはいえ、まくらを吹っ飛ばすにはパワーが必要だ。それも瞬間的に大きなパワーを起こす必要がある。
バネを縮めて一気に解き放つ、という方法もあるが、今回はこれを使った。
よく曲がるプラスチック板である。厚さ1ミリ。
小学生の頃に下敷きを曲げて遊んだりはしなかっただろうか。
僕はよくベコベコ曲げるのに熱中していた。それに熱中するの、ちょっとヤバい小学生かもしれないな…と今さら思った。
それはさておき、下敷きを曲げた上で力を加え続けると、ある点で急にベコッと逆方向に曲がることになる。
この状態でぐーっと指に力を込めると、
ベコッと逆に曲がる。
この時に大きい力が瞬間的に発生するのだ。この力をまくらを飛ばすのに使うのである。
ちなみにこのベコッと曲がる現象は「飛び移り座屈」という。こんな現象にも名前が…!という気持ちになった。
この下敷きを手で曲げるのをモーターで再現したのが今回の装置である。
両端にモーターを付けてます。
モーターが回転してプラスチック板を曲げることで飛び移り座屈を起こすのだ。
装置の大きさに釣り合わないほど大きい力になるので、思ったよりも飛んでいって面白い。
というか、モノがびょーんと飛んでいく現象そのものが単純に面白く感じる。
古代の投石機も「石がめちゃめちゃ飛んでいっておもしれぇな!」と改良されていったのではと思うほどだ。
飛ばすのが面白かったので、もうまくらは関係なくマネキンの頭を飛ばしてはひとり深夜にゲラゲラ笑っていたが、傍から見たらちょっと危険な人だったかもしれない。
僕だけがやっていると不審人物になってしまうので、みんな装置を作っていろんなものを飛ばしてみてほしい。
しかしこの様子は笑いませんか。
しかしまだパワーが足りない
猛反発まくらを作ってみたが、正直人間の頭の重さにはまだ耐えられない。
今回は実験段階なので、すごいモーターを使って本気の猛反発を実現させてみたい。
が、もし実現してしまったらデイリーの記事で労災が起きてしまいそうなので、倫理観との勝負である。