特集 2014年6月3日

深海魚「アカマンボウ」は本当にマグロの代わりになるのか

どっちが本物のマグロでしょう?
どっちが本物のマグロでしょう?
「アカマンボウ」という魚がいる。マンボウと名は付くが、あののんびりしたマンボウとは縁の遠い、むしろリュウグウノツカイに近縁な深海魚である。

そしてこのアカマンボウ、マグロの代用品として回転寿司などで利用されることがあるという噂がまことしやかに囁かれている。深海魚がマグロ!?アカマンボウは本当にそんな代役を務めうる魚なのだろうか。一尾丸ごと買って検証してみた。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。

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マンボウじゃないけどアカマンボウ。マグロじゃないけどマグロ味?

マグロに限らず、回転寿司のネタには味や身の質は似ているが、ずっと安価な別の魚が使用されている!…という噂を聞いたことはないだろうか。たとえばタイはティラピア、カレイのエンガワはオヒョウのもの……といった具合である。いわゆる代用魚というやつだ。
確かにマグロは高級魚、安価で代わりになる魚があれば活用しない手はない。
確かにマグロは高級魚、安価で代わりになる魚があれば活用しない手はない。
今どきの回転寿司店で本当にそんなせこいことが行われているとも考えにくいが、そういう噂を立てられるということは表題のアカマンボウの身は相当マグロに似た味と見た目なのだろう。マグロ味の深海魚…そう聞くと興味を抱かずにはいられない。
鮮魚店に並ぶマグロの刺身。味はもちろん、見た目の鮮やかさも皆に好まれる理由だろう。
鮮魚店に並ぶマグロの刺身。味はもちろん、見た目の鮮やかさも皆に好まれる理由だろう。
水揚げされたマグロはセリにかけられ、高値で取引される。
水揚げされたマグロはセリにかけられ、高値で取引される。
取材中に水揚げされた315キロのクロマグロ。どんな値が付くか素人には見当もつかない。
取材中に水揚げされた315キロのクロマグロ。どんな値が付くか素人には見当もつかない。
で、そのアカマンボウというのがどんな魚かというとこんな魚。
石垣島の漁港にて撮影。水揚げされたばかりの個体。
石垣島の漁港にて撮影。水揚げされたばかりの個体。
名前の通り体は赤と銀色が基調で、白い斑点がちりばめられている。円盤状のシルエットがマンボウに似ていなくもない。

深場の魚だがマグロの延縄で混獲されて市場に出回るそうで、国内だと沖縄でよく水揚げされるのだとか。

アカマンボウ求めて沖縄へ!

沖縄の魚市場には珍しい魚が多くて楽しい。地元民以外に観光客の姿もちらほら。
沖縄の魚市場には珍しい魚が多くて楽しい。地元民以外に観光客の姿もちらほら。
というわけでやってきたのは沖縄県那覇市の魚市場「泊いゆまち」。ここならアカマンボウが手に入るかもしれない。
場内には沖縄らしく色とりどりの魚が並ぶ。
場内には沖縄らしく色とりどりの魚が並ぶ。
市場内をくまなく見回りアカマンボウを探していると、とある店の冷蔵棚でさっそく発見!
切り身しかない…。品名が「マンボー」になっている点と身の色が二種類ある点に注目。
切り身しかない…。品名が「マンボー」になっている点と身の色が二種類ある点に注目。
が、既に切り身になっている。しかも加熱用っぽい。せっかくだから自分で解体したいので丸ごと一尾買いたいという旨をお店の方に伝えるも、アカマンボウはモノが大きすぎて取り置きできないという返事をいただいた。

うむ、どうしたものか。
救世主、「中眞水産」。
救世主、「中眞水産」。
こうなればそんな無理な注文も聞いてくれそうなお店を探すしかない。と言いつつ実は既に目星をつけているお店はあった。その筋では有名な「中眞水産」だ。
商品として、ではなく純粋に魚が好きな中眞水産の店主。お店には自作の剥製や標本も飾られている。
商品として、ではなく純粋に魚が好きな中眞水産の店主。お店には自作の剥製や標本も飾られている。
このお店は頻繁に巨大なウツボやヤガラを仕入れて丸ごと陳列したり、場内でも一線を画した存在感を放っているのだ。ここならアカマンボウでも何とかしてくれるかもしれない。前々から気になっていたこともあり、話を持ち掛けてみることにした。
アカマンボウの身の付き方をイラストで解説してくれた。とても博識で、いろいろと面白いお話を聞くことができた。
アカマンボウの身の付き方をイラストで解説してくれた。とても博識で、いろいろと面白いお話を聞くことができた。
「すいません、アカマンボウ丸ごと欲しいんですけど…。」と声をかけると即座に「いいよ!セリに出たら落としとくから!」と威勢のいい返事が。おお、そんなカジュアルなノリで。

アカマンボウはマグロのように毎日揚がる魚ではないようだが、僕の沖縄滞在中には工面できるだろうとのこと。物好きだね~と笑われつつこちらの連絡先と予算を伝えたら、後は待つのみだ。

買えた!が、デカい!

注文から2日後、中眞水産から電話が入った。「アカマンボウ入りましたよー。」えっ、もう。

「39キロありますけど大丈夫ですか?」えっ、でかい。
カートに乗って登場。
カートに乗って登場。
39キロかー…。それは一人だといろんな意味で手に余る。そういうわけで沖縄在住の友人夫婦に協力を要請し、翌朝3人がかりで引き取ることにした。
「えっ、あの人あれ買うの!?」みたいな目で他のお客さんたちに見られる見られる。
「えっ、あの人あれ買うの!?」みたいな目で他のお客さんたちに見られる見られる。
ちなみに値段は1万5千円。まだどんな味かもどれだけ身が採れるかもわからないが、この大きさでこの値段なら結構安いのではないかと思える。店主がいくらか気を利かせてくれたのかもしれない。

なお、過去にこの魚を丸ごと買っていったお客さんはいるのかという問いには「年1本くらいのペースで物好きな方が買っていかれますよ。」という返答が。意外と多いな、物好きな方。
男二人でないと運搬にも一苦労。購入も調理も消費も一人では無理だっただろう。
男二人でないと運搬にも一苦労。購入も調理も消費も一人では無理だっただろう。
ちなみに沖縄ではアカマンボウは単に「マンボー」と呼ばれることもある。しかし、マンボウは沖縄ではあまり水揚げされない。そして、本家のマンボウの身は非常に水っぽく独特な食感である。

他に沖縄におけるアカマンボウの別称には「マンダイ」というのがあるが、シマガツオやヒレジロマンザイウオも同じ名前で販売されることがあるので混同しないよう注意が必要である。

変な魚だ、アカマンボウ!

購入したアカマンボウは友人宅へ持ち帰り、捌いていくことにした。

ところで、39キロの魚を一から捌くと聞いても普通の人はなかなかピンと来ないだろう。それがどんなに大変な作業かは下の写真を見ていただければお分かりいただけると思う。
今からこの子を解体します。まな板にはテーブルを使います。
今からこの子を解体します。まな板にはテーブルを使います。
やっぱりでかい。ご家庭で捌くもんじゃないというのは明白だ。数百グラムしかない魚でも結構面倒なのに。

でも初めての魚を捌くのは楽しい。それが変な形の深海魚で、しかも大きいと来ればなおさらだ。魚体をじっくり観察しながら作業にあたろう。
胸鰭は長く発達していて、いかにも泳ぎが達者そうだ。
胸鰭は長く発達していて、いかにも泳ぎが達者そうだ。
腹鰭。水揚げから時間が経って黄色く色褪せてしまっているが、それでも金魚のようで綺麗。
腹鰭。水揚げから時間が経って黄色く色褪せてしまっているが、それでも金魚のようで綺麗。
見れば見るほどユニークな魚だ。よく見ると実はマンボウにもそこまで似ていない。というか他に似ている魚が思いつかない。オンリーワンな存在感。
意外にも歯は無い。
意外にも歯は無い。
同じくアカマンボウ目に属し、イカや小魚を食べるサケガシラには小さいながらも歯があった。
同じくアカマンボウ目に属し、イカや小魚を食べるサケガシラには小さいながらも歯があった。
個人的に驚いたのは歯がないこと。マグロ延縄に使う魚の切り身やイカを食べるというから、もっと肉食魚らしく鋭い歯を備えていると思っていたのだけど。ちなみに胃を切り開くとクラゲのような寒天質の物体が出てきた。
細かい鱗が飛び散りまくる。掃除が大変なので屋外で剥ぐか、包丁で皮ごと削ぐべし。
細かい鱗が飛び散りまくる。掃除が大変なので屋外で剥ぐか、包丁で皮ごと削ぐべし。
一見ツルっとしているようだが、体表には細かい鱗がびっしり並んでいる。本体へのジョイントは甘いので簡単に剥がせるが、下手に屋内で剥がしてしまうとあちこちに飛んでしまい掃除の際に泣きを見ることになる。実際、僕も部屋を貸してくれた友人にかなり迷惑をかけてしまった。ご家庭でアカマンボウを解体するときに気を付けたいポイントだ。
腹鰭の付け根から胸鰭の後方を通って後頭部へと切れ込みを入れる。
腹鰭の付け根から胸鰭の後方を通って後頭部へと切れ込みを入れる。
鱗を落としたら、いよいよ包丁を入れていく。初めて挑む魚なので店主の教えとネットで得た情報だけが頼りだ。
さらに大きなT字を描くように中骨に沿って胴から尾へ切れ目を入れる。
さらに大きなT字を描くように中骨に沿って胴から尾へ切れ目を入れる。
しっかり縁をとって
しっかり縁をとって
少しずつ丁寧に身を外す。
少しずつ丁寧に身を外す。
背の身だけでこんな量が採れる。
背の身だけでこんな量が採れる。
アカマンボウの背肉
アカマンボウの背肉
味見してみると肉質がかなりねっとり、いやねっちょりしている。脂っこいわけではないのだが、舌に絡みつくような独特の食感でマグロには似ても似つかない。色もカジキのようでマグロの赤身とはずいぶんイメージが違う。マグロに似ているのは他の部位なのだろうか。
腹の肉も同じように取り外す。
腹の肉も同じように取り外す。
少なくともこの部位はマグロの代用にはならないなと思いつつ、解体を進めていく。腹側の身も背側と同様に取り外す。こちらの方が少し脂の乗りはいいかもしれないが、見た目に大差は無くマグロの代わりは務まりそうもない。
スプーンで中落ちを削ぎ取る。大きな魚を捌くときにしか楽しめない作業。
スプーンで中落ちを削ぎ取る。大きな魚を捌くときにしか楽しめない作業。
骨の入り方は意外と素直。後ろ半分に限っては。
骨の入り方は意外と素直。後ろ半分に限っては。
鰭の先に水ぶくれのように血が溜まってきた。傷みはじめたサインかもしれない。急がなくては。
鰭の先に水ぶくれのように血が溜まってきた。傷みはじめたサインかもしれない。急がなくては。
これだけ大きい魚だと、想像以上に解体に時間がかかってしまう。その上初めて挑む特殊な体型の魚なのでなおさら手間取る。部屋には冷房を入れているが、それでもあまりモタモタしていると身の傷みが進んでしまう。

というわけで、ここからは部屋を提供してくれた友人夫妻にも協力を仰ぐことにした。これで作業効率は3倍だ。
この夫妻は揃って魚の扱いに長けている。包丁さばきがスムーズ。
この夫妻は揃って魚の扱いに長けている。包丁さばきがスムーズ。
しかし、依然として胸鰭より後方にはマグロの代用たり得るような部位は見出せていない。まさかあの噂は根も葉もないガセネタなのか。火の無いところに煙が立ったレアケースなのか。

赤身が出てきた!

3人がかりで臨むと、一気に作業が進む。というかこれはやっぱり単騎で挑む相手ではない。

残すはわずか胸部と頭部のみだが、まだ赤身らしい赤身は手にできていない。普通の魚なら廃棄されるかまとめてアラ煮に回されてもおかしくないような部位だが、実はこれが宝箱だったりするのだろうか。
あっという間に胸~頭部の解体に移行。
あっという間に胸~頭部の解体に移行。
胸鰭の下に包丁を入れた友人が突如「おおお~!」と声を上げた。覗き込むと大きく丸い赤身の塊が!
フライパンに収まらないほど大きな円盤状の赤身が現れた。※写真は半分切り取ってしまった後のもの。
フライパンに収まらないほど大きな円盤状の赤身が現れた。※写真は半分切り取ってしまった後のもの。
しかもその周りにはマグロのカマトロのような部分も見える。これは!これぞ!
これ…、マグロじゃないか?
これ…、マグロじゃないか?
赤身を切り出してみると薄い円盤状で刺身用の冊は取りにくいが、色合いや身の質はマグロにそっくりだ。先ほどまでの白身とは全く印象の異なる肉である。

こんなにも違うなんて!同じ魚で部位によってこんなにも肉質が違うなんて!!

…まあ、本当は事前に店主に説明してもらってだいたい知ってたんだけどね。
胸鰭の周囲、皮下の脂肪が乗った部位。
胸鰭の周囲、皮下の脂肪が乗った部位。
赤身のほかに、その周りについていたカマトロっぽい部分も気になる。こちらもマグロのそれに似ていたら最高だ。
見た目はそれっぽいんだけどね…。
見た目はそれっぽいんだけどね…。
生でかじってみると、グニィっという不快な食感。異様に固い脂の塊といった感じで食べられそうにない。残念だ。ちなみに似たような身質の部位は腹面にもついている。

板のような骨の間に隠された赤身

この赤身はおそらく、遊泳に用いる長い胸鰭を激しく動かすために他の部位と違う発達をした筋肉なのだろう。面白い。

面白いと言えばもう一点奇妙な発見が。
肋骨だろうか?
肋骨だろうか?
赤身の下にやたら広い板状の骨が入っている。異様に発達した肋骨だろうか。胴体の左右に一枚ずつ入っているこの「板」の隙間を覗くと、内臓のほかにいくらかの身も詰まっているようだ。
二人掛かりでひっぺがす!
二人掛かりでひっぺがす!
もう冷蔵庫も冷凍庫もアカマンボウでパンパンだが、いざ肉が見えてしまうと取り出さずにはいられない。板状の骨を持ち上げて掻き出す。
筋肉の繊維の走り方が大雑把で、簡単にホロホロと崩れる。
筋肉の繊維の走り方が大雑把で、簡単にホロホロと崩れる。
出てきたのはこれまた鮮やかな赤身。だが、先ほどの円盤状の身とはかなり様子が異なる。繊維の走り方が単調で粗く、非常に脆い。圧力釜でしっかり炊いた牛肉のようだ。生なのに。

これは調理法を考えさせられる…。
脳天の肉はどんな感じかな~?
脳天の肉はどんな感じかな~?
さて、これでほぼすべての肉を採り終えた。まだ頭部が残っているが、こちらは骨格標本を収集している知人へ譲ることになったためあまり手を着けずにおくことにした。無理に頬肉を採ろうとしてバラバラにしてしまったら台無しだ。

…と言いつつ、どういう身が付いているのかやはり気になる。脳天の部分だけ慎重に切り出すことにした。
脳天にはぬちゃっとした脂。…グリース?
脳天にはぬちゃっとした脂。…グリース?
脳天には多少の白身と、べチャッとしたゲル状の脂が詰まっていた。まるでグリースのようだ。なめてみるとほんのり甘いが、使い道が思い浮かばないので洗い流してしまった。

それから、もちろん目玉は煮つけ用にキープ。
眼も大きくて食べごたえがありそうだ。
眼も大きくて食べごたえがありそうだ。
ちなみに、沖縄ではアカマンボウの頬肉はよく単品で売られている。やはり頬にも赤身があるらしい。
ちなみに、沖縄ではアカマンボウの頬肉はよく単品で売られている。やはり頬にも赤身があるらしい。
初めてにしてはなかなか綺麗に解体できたと思う。
初めてにしてはなかなか綺麗に解体できたと思う。
以上でアカマンボウの解体は終了である。普通は下ごしらえが済んだらすぐにでも料理して食べたくなるものだが、今回は相手が大きすぎたせいで体力的に疲れ切ってしまった。友人ともどもここで1時間ほど仮眠を取ることにした。魚一尾捌くのに数時間を費やしたのは始めてだ…。

試食!赤身はほぼマグロ!

長かった下ごしらえに続いて調理を終えれば、いよいよ試食の時だ。果たして本当にアカマンボウはマグロの代用魚になりうるのか。それを確かめるためにも、まず試すべきは刺身だろう。
うーん、赤身の部分はマグロにしか見えない…。
うーん、赤身の部分はマグロにしか見えない…。
…見た目に限ってはマグロによく似ている。
左は魚屋さんで買ってきたマグロの刺身。右がアカマンボウ。左の方が美味そう?うーん、そりゃ料理人の腕の差だね。
左は魚屋さんで買ってきたマグロの刺身。右がアカマンボウ。左の方が美味そう?うーん、そりゃ料理人の腕の差だね。
並べてみても大差は無いように見える。マグロとの一番の違いは筋節の白い線がほとんど無い点だろうか。おマグロ様の影武者として見た目は合格点だろう。

問題はそう、味と食感である。とにかく食べてみなければ。
いただきます!
いただきます!
んん!?これマグロじゃん!
んん!?これマグロじゃん!
…口に運んで驚いた。マグロだな、これは。

そんなはずはない!これはマグロじゃない別の魚だ!と意識しながら噛みしめても、僕の脳は「うん、これマグロじゃないね」とは言ってくれない。

本物のマグロと食べ比べてみてようやく「マグロの方が多少、後味がすっきりしているかな?」という違いを確認できる程度である。友人らもおおむね賛同してくれた。

これは…十分代役を務められると判断していいのでは?
いいタイミングで現れたOさん。
いいタイミングで現れたOさん。
と、ここで知人のOさん親子が骨格標本の材料にとアカマンボウの骨を回収に来てくれた。

経験豊富な年長者と、無垢な少年な舌にも是非を聞いてみよう。
父「うーん、黙って食べさせられたらわからんかもな…。」子「マグロの味です…。」
父「うーん、黙って食べさせられたらわからんかもな…。」子「マグロの味です…。」
やはり、「マグロそっくり」という意見で落ち着いた。すごいなアカマンボウ、お前ほとんどマグロじゃん。

ちなみに、色の淡い「白身」の部分は食感ねっとり味さっぱりで美味しくはあるのだがマグロとはかなり異なった。マグロの代わりになる素質があるのはやはり赤身の部分のみらしい。残った赤身で他にマグロっぽさを確認できる料理を作ってみよう。
アカマンボウ+ラード=ネギトロもどき
アカマンボウ+ラード=ネギトロもどき
板状の骨に挟まれていた赤身はその脆さを活かすべくラードと叩き合わせてネギトロ的なものに。ご飯に乗せて食べると実に美味い。味を調えればパック寿司のネギトロそっくりにできるだろう。

ここでラードではなく脳天に詰まっていた脂を使ってみても面白かったなと少し後悔。
アカマンボウのステーキ
アカマンボウのステーキ
赤身はステーキにしてもやはりマグロに似ておいしい。なるほど、加熱調理もありなのか。
マグロの刺身、ネギトロ、ステーキとくれば次はカツでしょ。マグロじゃないけど。
マグロの刺身、ネギトロ、ステーキとくれば次はカツでしょ。マグロじゃないけど。
というわけで続いてはパン粉の衣をつけて油で揚げてみた。アカマンボウのフライ…ではなくカツだ。
断面が魚のフライじゃない。「俺はカツだ!!」という力強い自己主張が感じられる。
断面が魚のフライじゃない。「俺はカツだ!!」という力強い自己主張が感じられる。
アカマンボウのカツはマグロのそれに負けないしっかりとした歯ごたえと味わいを楽しませてくれた。
から揚げにしてもグッド。
から揚げにしてもグッド。
ちなみに、から揚げにしてもおいしかった。カツが成功したのだから当然と言えば当然だが。

白身も美味いぞ!

ここまででアカマンボウの赤身にはマグロの代用品として十分なポテンシャルが秘められていることが明らかになった。当初の疑問は解決したわけだ。

ではマグロの代わりが務まらない白身には価値がないのかと言えばそうではない。この魚、白身も美味いのだ。友人らの中には「刺身の味なら白身の部分の方が好き」という者もいたほどだ。
白身はフライに!
白身はフライに!
白身も先ほどの赤身の「カツ」と同じくパン粉をまぶして揚げると、今度はまぎれもない白身の「フライ」が出来上がる。味もあっさりと癖が無く、カツとは違うおいしさがある。同じ魚なのに不思議なもんである。

実はマグロに似ているという点より、このように部位によって全く異なる食味を楽しめるところがこの魚の食材としての魅力なのではないだろうか。
個人的に一番好きだったのがこの煮つけ。
個人的に一番好きだったのがこの煮つけ。
赤身、白身、目玉…。煮つけにするとどの部位も美味しく食べられた。特に脂の乗った腹回りの肉とトロトロの目玉は抜群に美味い。
アカマンボウの塩焼き。
アカマンボウの塩焼き。
また、焼き物にしてもおいしいが、背の身は脂の乗りが控えめなので塩焼きにするとややパサつく。油を補えるムニエルにしたほうが良いかもしれない。
こちらはムニエル。
こちらはムニエル。
それにしてもこの魚、何にしてもイケるな!ああ、アカマンボウ、君は素晴らしいオールラウンドプレイヤーだ。食卓のね。
友人たちにも好評だった。この後数日間は食卓がアカマンボウ尽くしになるわけだが。
友人たちにも好評だった。この後数日間は食卓がアカマンボウ尽くしになるわけだが。

アカマンボウ、一粒で二度おいしい素敵な魚でした。

今でこそ食品の表示に厳しい日本においても、カラフトシシャモ(キャペリン)がシシャモ扱いされるなど馴染みの薄い魚が代用魚としてメジャーな魚の名を借りて販売されたことも過去には確かにあったようだ。

だが冒頭でも書いたように、消費者が敏感になっている現代において回転寿司店でこういう品名の偽装を伴う代用が行われているというのは眉唾だ。都市伝説のようなものだと思っておいた方がいいだろう。

特に今回扱ったアカマンボウはそれなりに安価かもしれないが、漁獲量が少なく流通が不安定なので実用的ではない気がする。肝心の赤身も一尾から採れる量が少なく、形状も冊を取りづらいものだった。可能性があるとすればタタキにしてネギトロの材料とするくらいだろうか。

まあ、今回の企画でアカマンボウはとてもおいしい「良い魚」だとわかった。だからどうか今後は「マグロの偽物」というネガティブな見方をするのではなく、いろいろな食べ方が楽しめる面白い魚だと認識してあげてほしいと思う。
体表に残っていたダルマザメの歯形。中眞水産さん、次はこいつを仕入れてください!
体表に残っていたダルマザメの歯形。中眞水産さん、次はこいつを仕入れてください!

<取材協力>
泊いゆまち 中眞水産
沖縄県那覇市港町1-1-18
電話:098-861-6032
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