特集 2014年5月20日

沖縄には灰色のテントウムシがいる

その名もハイイロテントウ
その名もハイイロテントウ
10年近く前、初めて沖縄を訪れた際に灰色のテントウムシを見かけた。テントウムシといえば赤や橙色の派手な出で立ちの虫だというイメージが強かったのでとても驚いたのを覚えている。もう一度見てみたいとふと思いたち、梅雨の沖縄に出かけた。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。

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外国からやってきた樹木を追って外国からやってきた虫を追って外国からやってきたテントウムシ

普通、テントウムシといえばこういう原色系の派手なカラーリングを想像すると思う。
普通、テントウムシといえばこういう原色系の派手なカラーリングを想像すると思う。
見つけた当時はさすが沖縄、日本らしからぬカラーリングの虫がいるものだと思い納得した。だが、いざ調べてみるとそのテントウムシは「ハイイロテントウ」といい、もともと日本にいた種類ではないことがわかった。

しかもその侵入までの経緯が特殊で、「ギンネム」という外国からやってきた植物につく「ギンネムキジラミ」という虫を餌とし、それに追随して北米から渡来したというのだ。面白い。
沖縄本島ではあちこちで見られるマメ科植物のギンネムの葉。沖縄の人にとってはもはや見慣れた存在だが、実は外来種。
沖縄本島ではあちこちで見られるマメ科植物のギンネムの葉。沖縄の人にとってはもはや見慣れた存在だが、実は外来種。
というわけでまずは餌のギンネムキジラミがつくギンネムを探す。ギンネムは沖縄本島のあちこちに生えているので、労せずして見つかる。ギンネムキジラミも小さな虫で見逃しやすいが、なんとか発見できた。…が、なぜか肝心のハイイロテントウだけは見つからない。
ギンネムの天敵であるギンネムキジラミ。このギンネムキジラミの天敵こそが今回探しているハイイロテントウだ。
ギンネムの天敵であるギンネムキジラミ。このギンネムキジラミの天敵こそが今回探しているハイイロテントウだ。
代わりにダンダラテントウという別の種類のテントウムシばかり見つかる。このダンダラテントウもギンネムキジラミを餌にしているようだ。
ダンダラテントウ。沖縄で一番よく見られるテントウムシのひとつ。
ダンダラテントウ。沖縄で一番よく見られるテントウムシのひとつ。

他の虫に浮気する

場所を変えつつ15株ほどのギンネムを調べたが、ハイイロテントウの姿は見つからなかった。

仕方がないので近くの草むらで他の虫を撮影して気分転換することに。
ナナフシの子供。カメラのピントがなかなか合わず苦労した。
ナナフシの子供。カメラのピントがなかなか合わず苦労した。
小豆粒ほどの大きさしかないが金属光沢が綺麗なツツサルハムシ
小豆粒ほどの大きさしかないが金属光沢が綺麗なツツサルハムシ
自分と同じくらい大きなガを捕まえて食べているクモを発見。カメラを向けると獲物をくわえたまますごいスピードで葉っぱの裏へ隠れた。力持ち。
自分と同じくらい大きなガを捕まえて食べているクモを発見。カメラを向けると獲物をくわえたまますごいスピードで葉っぱの裏へ隠れた。力持ち。
ゴマダラカミキリの一種。
ゴマダラカミキリの一種。
アダンの葉に着いていたテントウムシの蛹。
アダンの葉に着いていたテントウムシの蛹。
上の蛹の近くを飛んでいたジュウニマダラテントウ。あれもこのテントウムシの蛹かな。
上の蛹の近くを飛んでいたジュウニマダラテントウ。あれもこのテントウムシの蛹かな。
地味ながらも可愛い虫たちが続々現れる。さすが沖縄だ。

なぜ!?トウツルモドキに多数のテントウムシ

さらに面白い虫はいないかと虫食いや果実を頼りに道端の茂みを探っていると、トウツルモドキという草の群生に出会った。
トウツルモドキという植物。葉の先端が巻きひげ状に伸び、周りのものに絡みつく。
トウツルモドキという植物。葉の先端が巻きひげ状に伸び、周りのものに絡みつく。
目立った虫食いも無いのであまり期待していなかったが、軽い気持ちで覗き込むと細長い葉の上に可愛らしいテントウムシの姿を見つけた。
キイロテントウだ。
キイロテントウだ。
植物に寄生する菌類を食べるキイロテントウというテントウムシだ。トウツルモドキに着いた菌を食べに来たのだろうか。

かと思えば、また別のテントウムシの姿を発見。
ニジュウヤホシテントウ
ニジュウヤホシテントウ
ニジュウヤホシテントウだ。ナス科の植物を食べる虫で、トウツルモドキにつくという話は聞いたことがないのだが、なぜかたくさんいる。
右奥に何かいる!
右奥に何かいる!
なんでこんなところに、と思いつつニジュウヤホシテントウを撮影していると、視界の端に灰色の物体が写りこんだ。これはもしや。
おお、こいつだ!なぜここに。
おお、こいつだ!なぜここに。
ハイイロテントウだ!ついに再会できた。しかし、ギンネムではなく縁もゆかりもないと思っていたトウツルモドキの葉上で見つかるとは。

灰色。だけど綺麗な灰色。

ようやく見つけた灰色のテントウムシ。じっくり観察していこう。
背中のハートマークがキュート。
背中のハートマークがキュート。
灰色とは言っても、白みが強くなかなか綺麗な灰色である。汚らしい印象は全く受けない。
ちょこちょこと歩く姿はほかのテントウムシと変わらず可愛い。
ちょこちょこと歩く姿はほかのテントウムシと変わらず可愛い。
黒い斑点の形や大きさは個体によって少しずつ異なる。
黒い斑点の形や大きさは個体によって少しずつ異なる。
手で触ると脚から黄色く臭い液を出すところや、指先へ登ると羽を広げて飛び立つところは普通のテントウムシと同じだった。
トウツルモドキの上を探すとたくさん見つかる。ギンネム観察にかけた時間を返して欲しい。
トウツルモドキの上を探すとたくさん見つかる。ギンネム観察にかけた時間を返して欲しい。
とはいえ、やっぱり灰色だという一点だけで一般的なテントウムシのイメージからはずいぶん外れてしまう。カラーリングって大切だと思った。

なんでトウツルモドキに集まっていたかは謎

ちなみに、数本のトウツルモドキ葉上で見つかったテントウムシはニジュウヤホシテントウ×12、ハイイロテントウ×9、キイロテントウ×2、ダンダラテントウ×1の計24個体だった。日あたりが良い場所だったからたまたま集まったのかなとも思ったが、それにしては多過ぎる感もある。

少なくとも僕はトウツルモドキに食性の異なるテントウムシが集まるという話は聞いたことがないので、この記事を書いている間も釈然とせずにいる。どなたか事の真相をご存知の方がいれば、どうかお教え願いたい。
梅雨の沖縄は空も灰色。
梅雨の沖縄は空も灰色。
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