特集 2011年9月8日

あなたは綾瀬市を知っていますか?

綾瀬市生まれ、綾瀬市育ちの著者が、愛をもって綾瀬市を紹介します
綾瀬市生まれ、綾瀬市育ちの著者が、愛をもって綾瀬市を紹介します
私の出身地は、神奈川県の「綾瀬市」である。

「綾瀬市」と言っても、知っている方はごくわずかであろう。私は川崎市の高校に通っていたが、その同級生のほとんどが、綾瀬市の位置はおろか、その名前すら知らなかった。

今回は、そんな我が故郷、「綾瀬市」について紹介させていただきたいと思う。ひいては、少しでもその名が世の中に広まるように。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

前の記事:群馬県と埼玉県の境は川の跡

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綾瀬市はどこにあるのか

綾瀬市は、神奈川県の中心に位置している。故に私は、神奈川のヘソだと思っている(個人的に思っているだけで、口にした事は無い)。

東京の足立区にも綾瀬という地名があるが、そちらは全くの別物だ。横浜駅でタクシーの運転手に「綾瀬まで」と告げて寝たら、いつの間にか足立区にいた、という笑い話もある。

より大きな地図で見る
綾瀬市はココ。ズームしたりして、位置感覚を掴んでみて下さい
具体的には、江ノ島とか海水浴場とかで有名な、藤沢市の北隣に位置している。「湘南」と呼ばれ、もてはやされるエリアから、ギリギリで外れる範囲である。

ちなみに車のナンバーも、藤沢市は「湘南」だが綾瀬市は「相模」だ。
湘南ナンバーの方が良いなんて不届きな声を聞く事もある
湘南ナンバーの方が良いなんて不届きな声を聞く事もある
また、綾瀬市は女子ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」のメンバー、川澄奈穂美選手の出身地である大和市の西、大野忍選手の出身地である座間市の南に位置している。

綾瀬市がどこにあるのか、なんとなく分かっていただけただろうか。
綾瀬市の周辺では、女子サッカーが盛んだ(写真は私の弟のもので、なでしこジャパンとは一切関係が無い)
綾瀬市の周辺では、女子サッカーが盛んだ(写真は私の弟のもので、なでしこジャパンとは一切関係が無い)
ちなみに、綾瀬市の人口は8万人強。私は7万人くらいだと記憶していたが、いつの間にかそんなに増えていた。

なお、市の花はバラである。成人式では、バラの香りのオーディコロンが男女分け隔てなく配られたが、コロンをもらって喜ぶ男がどれだけいるだろうか。その有用性は不明であった。
マンホールにもバラの花があしらわれるなど、バラ推し
マンホールにもバラの花があしらわれるなど、バラ推し
綾瀬市に関する基礎知識は、まぁこんなものだろうか。より詳しく知りたい方は、Wikipediaあたりを参照して頂ければと思う。

Wikipediaには、綾瀬出身の芸能人なんかも書かれており、さかなクンやドランクドラゴンの鈴木拓さんなど、とても綾瀬らしい面々が並んでいる。

綾瀬市には駅がない

ここまでご覧頂き、綾瀬市に行きたくてたまらなくなってしまったという方も多いと思う。お次は、綾瀬市へのアクセス方法だ。
綾瀬市へは、海老名市や藤沢市などの駅からバスに乗る
綾瀬市へは、海老名市や藤沢市などの駅からバスに乗る
残念な事に、綾瀬市には駅が無い。平成の大合併が起きる前まで、駅が無い「市」は、沖縄県を除けば東京の武蔵村山市と我が綾瀬市だけであったと聞く。

故に、公共交通でお越しいただく際には、小田急線の「海老名駅」か「長後駅」、あるいは相鉄線の「さがみ野駅」でバスに乗り換える必要がある。やや面倒だが、訪問の手続きが多いほど、気分が盛り上がるというものだ。
さがみ野駅からは、ここを通って綾瀬市の北東部に至る
さがみ野駅からは、ここを通って綾瀬市の北東部に至る
綾瀬市の北東、すなわち鬼門を護る守護神だ
綾瀬市の北東、すなわち鬼門を護る守護神だ
ちなみに、綾瀬市には駅こそ無いものの、東海道新幹線の線路が市内を横断している。

つまり、新幹線で東京から大阪に行く際には、必ず綾瀬市を通っているのである。その距離はわずか1.4km。時間にして20秒たらずの訪問だけどね。
ようこそ、綾瀬市へ
ようこそ、綾瀬市へ
そしてさようなら
そしてさようなら
また、綾瀬市には東名高速道路も通っている。新幹線のみならず、車で東京から大阪まで行く際にも、必ず綾瀬市を通るのだ。

ニュースの渋滞情報でおなじみの「綾瀬バス停」があるのも、そう、我らが綾瀬市である。
この辺りが、いわゆる「綾瀬バス停付近」
この辺りが、いわゆる「綾瀬バス停付近」
綾瀬バス停へはここから入る
綾瀬バス停へはここから入る
お盆とか年末年始に恨まれがちな、可哀想なバス停だ
お盆とか年末年始に恨まれがちな、可哀想なバス停だ
市は、この綾瀬バス停付近にインターチェンジを作りたいらしく(過去には、新幹線の駅を作ろうと言っていた気がするが、それよりは現実的だ)、数年後には東名高速から直接綾瀬市へ乗り入れできるようになるかもしれない。

さぁ、あなたは綾瀬市にやってきた。次ページからは、いよいよ綾瀬市の具体的な見所を、お伝えしようと思う。

近年盛り上がりを見せる綾瀬市中心部

まずは、市の中心部を見ていこう。この界隈は、県道に沿って様々な商業施設が建ち並ぶ、現在、綾瀬で最もアツいエリアである。

その中核を担う綾瀬市役所は、平成8年(1996年)に建てられた立派な建物だ。元々この周囲には畑と養豚所以外に何も無く、そのような場所に忽然と7階建ての巨大な市庁舎が現れたのだから、当時はたいそう驚いたものだ。
畑の向こうにそびえ建つ綾瀬市役所
畑の向こうにそびえ建つ綾瀬市役所
もの凄く立派な市庁舎である
もの凄く立派な市庁舎である
最上階には、展望回廊なんてのもあったりする
最上階には、展望回廊なんてのもあったりする
隣接する養豚所から、えもいわれぬ香りが漂ってくる中、畑しか見えない展望台に上って何の意味があるのだろう。そう思っていた15年前、私はまだまだ青かった。

この市役所ができて以降、その周囲に商業施設が増えていき、現在ではマクドナルドとかバーミヤンなんかも、通りに沿って並んでいる。
市役所の南側、西側は今もこんな感じだけど
市役所の南側、西側は今もこんな感じだけど
東側、北側には、色んなものがごちゃごちゃ作られた
東側、北側には、色んなものがごちゃごちゃ作られた
う~ん、随分と発展したものですなぁ
う~ん、随分と発展したものですなぁ
なお、この綾瀬市中心部における商業施設の極めつけは、2005年にオープンした巨大ショッピングモール「綾瀬タウンヒルズ」である。綾瀬市民の間でヒルズといえば、この綾瀬タウンヒルズの事を指す。

冬にはイルミネーションでなかなか派手にライトアップされるし、六本木や表参道のそれと、似たようなものであろう。
これがウワサの綾瀬タウンヒルズ
これがウワサの綾瀬タウンヒルズ
冬にはライトアップされる(が、今は夏なのでされていない)
冬にはライトアップされる(が、今は夏なのでされていない)

綾瀬市の名物は高座豚

また、市役所の横、タウンヒルズの向かいには「東山ふれあい展示即売所」があり、ここでは綾瀬市の特産品として知られている高座豚など、様々な産物が販売されている。
ここで、高座豚など綾瀬の特産品を販売しているらしい
ここで、高座豚など綾瀬の特産品を販売しているらしい
幸せそうな豚像の表情が切ない
幸せそうな豚像の表情が切ない
「高座豚」とは、綾瀬市やその周囲で生産されている豚の事だ。……と知った風に言ったものの、実は私は高座豚を食べた事が無い。中学生の時、理科の授業で高座豚の心臓が出てきた事はあったが、それだけだ。

せっかくなので、この機会に高座豚を食べてみよう。そう思ったのだが……
金土日しか営業していなかった……
金土日しか営業していなかった……
せっかく訪れたのに、定休日であった時ほどがっかりする事はない。

だが、安心していただきたい。他にも、高座豚を扱っているお店は存在する。綾瀬市の西部、吉岡という地区にある「高座豚手造りハム」というお店の本店へと行ってみた。
小さなお店だが、お客は結構入っているようだ
小さなお店だが、お客は結構入っているようだ
店内は肉びっしり
店内は肉びっしり
とりあえず、私はシンプルなハムの切り落としと、しそ味のソーセージを買ってみた。

故郷の特産品ながら、生まれて初めて食べる高座豚。そのお味はいかに。
見ているだけでよだれが出ますな
見ているだけでよだれが出ますな
……うん、これはうまい肉だ
……うん、これはうまい肉だ
これが、想像以上にうまくてびっくりした。いや、地元びいきを抜いたとしても、相当うまいの肉である。

ハムといっても薄切りではなく、結構な厚みがある。にも関わらず、前歯でサクサク切れる程にやわらかい。全体的に脂が結構多いが、この脂身がまたうまいのだ。全く持ってクドくない。むしろさわやか。

ソーセージもジューシーで汁気が多く、なのにやっぱり脂っぽくない。シソの香りがあいまって、いやぁ、こりゃ、たまらんですなぁ。

厚木基地は綾瀬市にある

綾瀬市の名物第一位が高座豚だとしたら、第二位はおそらく厚木基地だろう。

綾瀬市の東部、お隣の大和市にまたがって広がる厚木基地は、第二次世界大戦終戦直後、マッカーサーが降り立った場所であり、現在は米軍と海上自衛隊が共同で使用する航空基地である。
厚木基地正門付近(正門前は、物々しい警備でカメラ出したら捕まりそうだったので、少し離れた所で撮影)
厚木基地正門付近(正門前は、物々しい警備でカメラ出したら捕まりそうだったので、少し離れた所で撮影)
金網と警告文が恐ろしげ
金網と警告文が恐ろしげ
厚木基地のシンボルマークは富士山と鳥居だ
厚木基地のシンボルマークは富士山と鳥居だ
厚木基地は、厚木という名が付いているものの、厚木市とは関係が無く、実は我らが綾瀬市(と大和市)に存在するのである。

その面積は、綾瀬市総面積の約20%にも及んでおり、戦闘機やら輸送機やらが、ガンガン滑走路から離着陸しているので、それ系が好きな方にはたまらないのではないかと思う。
これはYS-11ってヤツですよね
これはYS-11ってヤツですよね
戦闘機三兄弟。物凄い音と煙と熱を出して飛んでいった
戦闘機三兄弟。物凄い音と煙と熱を出して飛んでいった
なんか凄い、中ボスみたいな飛行機もいた
なんか凄い、中ボスみたいな飛行機もいた
ちなみに、厚木基地の北端を通る県道40号線沿いは、有名な撮影スポットの一つらしく、カメラを持った人々を結構目にする。
金網越しに基地の様子を伺う人
金網越しに基地の様子を伺う人
航空無線を傍受して離着陸情報を得ているツワモノもいた
航空無線を傍受して離着陸情報を得ているツワモノもいた
ちなみに米軍基地というと、何かと騒音とかそういう問題が取り立たされがちだが、まぁ、私は昔からそのような環境で育ってきたワケで、もう麻痺してしまっている。

むしろ、防音工事の費用はタダだし、窓を開けるとうるさいという理由から、エアコンも9割が補助で自己負担は1割だったりするし……。まぁ、意見は様々ですな。

あと、大人の事情的なものとして、市としても基地は重要なんじゃないかと思う。市庁舎が立派な理由も、その辺りにあったりして。
基地の周囲に落ちていたゴミも、アメリカン
基地の周囲に落ちていたゴミも、アメリカン
あと、厚木基地の中にはマクドナルドがあり、時々お祭りとかで中に入った時には、少し安くハンバーガーを食べられたりもした。

まぁ、現在はハンバーガーが安くなったし、わざわざ基地で食べるメリットは無いかもしれないけれど。

失われたボウリング場の黒トイレ

自慢ではないが、綾瀬市には娯楽スポットが少ない。そんな綾瀬市にある数少ない娯楽スポットとして、ボウリング場がある。

かつては綾瀬市北部に富士見ボウル、綾瀬市南部にミネボウルの二箇所があったが、そのうち富士見ボウルの二階にあったトイレは、全面真っ黒で凄かった。

壁も、床も、便器も、その全てが黒いのだ。
10年以上前に撮った、貴重な黒トイレの写真
10年以上前に撮った、貴重な黒トイレの写真
全面真っ黒で出るものも出ない
全面真っ黒で出るものも出ない
個人的には、綾瀬市の珍スポットとしてベストオブベストであったが、残念ながら富士ボウルは潰れてしまい、現在は新興宗教団体の施設になってしまった。
こちらは今もなお健在な、市南部ミネボウル
こちらは今もなお健在な、市南部ミネボウル

綾瀬市にある古いモノ

さて、古いものが大好物な私としては、やはり綾瀬市に残る文化財を紹介せねばならぬだろう。というか、させてください。

YES!大好き、文化財!
まずは綾瀬市唯一の国指定文化財、神崎遺跡
まずは綾瀬市唯一の国指定文化財、神崎遺跡
綾瀬市の南西端に、神崎遺跡という弥生時代後期の集落遺跡が存在する。

弥生時代の遺跡といえば、佐賀県の吉野ヶ里遺跡や、静岡県の登呂遺跡なんかが有名だが、我が綾瀬市にもそれはある。
弥生遺跡といえば、こんなのや(吉野ヶ里遺跡)
弥生遺跡といえば、こんなのや(吉野ヶ里遺跡)
こんな感じのをイメージしますな(登呂遺跡)
こんな感じのをイメージしますな(登呂遺跡)
神崎遺跡は遺構の状態がとても良く、しかも発掘された品々によって、200km離れた東海地方から南関東まで人々が移住してきた事が判明した貴重な遺跡であり、今年の2月7日には国の史跡に指定された。

綾瀬市において、国文化財の指定がなされたのはこれが初めての事であった。そんな、記念すべき神崎遺跡が……これだ!
……うん、畑だね
……うん、畑だね
ま、まぁ、畑ではあるが、この下には弥生時代の環濠集落遺構が丸々埋まっているのである。学術上、極めて重要な遺跡である。見た目で全てを語ってはいけない。

今後はさらに発掘調査が進み、その全貌が明らかになった後、史跡公園として整備される……かな。
案内板がある事から、ここが遺跡である事は間違いない
案内板がある事から、ここが遺跡である事は間違いない
市役所3階には発掘品が展示されているので要チェック!
市役所3階には発掘品が展示されているので要チェック!

みんな大好き、お城もあるよ

東京は江戸城、名古屋は名古屋城、大阪は大坂城など、歴史ある町には城郭があり、その町のシンボルになっている事が多い。

綾瀬市にだってお城くらい存在する。中世にこの辺りを支配していた渋谷氏によって築かれた、早川城がそれである。
木々がこんもり茂った、右の山が早川城です
木々がこんもり茂った、右の山が早川城です
そして、これが主郭(本丸)
そして、これが主郭(本丸)
ええ、そりゃ、建物とかは残っていないですよ。だって、アナタ。近世の城ならともかく、早川城は中世の城なのですから。

でもね、でもね……ちゃんと、堀や土塁(土で作られた壁)などは残っているのですよ。中世城郭としては、なかなか良好に遺構が現存している城なのですよ。
どうですか、立派な空堀でしょう
どうですか、立派な空堀でしょう
この物見櫓から、周囲を見張っていたのです
この物見櫓から、周囲を見張っていたのです

まだまだ!神社はどうだい?

……はい、神崎遺跡にせよ、早川城にせよ、ぱっと見、分かりにくい事は認めましょう。

でも遺跡というのは、目に見える部分が全てではないのですよ。現地に残るわずかな遺構を手がかりに、妄想を膨らませて楽しむのが、いいんじゃないですか。

とはいえ、やはり見た目に分かりやすい文化財も欲しいところではある。一応、それなりに古い寺院や神社なんかもポツポツあるので、そのうちの神社をいくつかピックアップ。
享保12年(1727年)に建てられた熊野神社(市南東部)
享保12年(1727年)に建てられた熊野神社(市南東部)
鎌倉にある円覚寺の大工が建てたという五社神社(西部)
鎌倉にある円覚寺の大工が建てたという五社神社(西部)
丘の上にひっそりたたずむ小園子之社(北西部)
丘の上にひっそりたたずむ小園子之社(北西部)
ここでは、建物が古いとか新しいとかいうよりも、建物の配置を見ていただきたい。

どの神社も、手前に拝殿(礼拝する所)が建ち、その背後から幣殿(廊下のような所)が伸びて、本殿をすっぽり覆う覆屋へと接続されている。御神体が納められている本殿は、その覆屋の中だ。

このように、綾瀬市では社殿のスタイルが統一されているのである。この土地における、神社建築の地域性が垣間見れて、楽しいじゃありませんか。楽しい……よね?

綾瀬市いいとこ、一度はおいで

新幹線の線路や高速道路は通っているし、(一般人は利用できないけど)空港もある。でも、駅が無い。時には、陸の孤島などとも言われる我らが綾瀬市。

最近は、市役所やタウンヒルズを中心に開発も進んできた。でもやっぱり垢抜けてはいない。そんな田舎とベッドタウンの狭間に揺れる、綾瀬市を紹介させて頂いた。

今回、改めて綾瀬市を周ってみて、やはり私が子どもの頃とは随分変わったなという印象を受けた。私としては、綾瀬は永遠の田舎であって欲しいなんて気もするけれど、まぁ、時というのは流れ行くものなんでしょうな。
ハムを開封したら、寝ていた猫が凄い勢いでくれくれ言い出した(でも、塩分多いのでやらない)
ハムを開封したら、寝ていた猫が凄い勢いでくれくれ言い出した(でも、塩分多いのでやらない)
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