息子に「面白かった?」とたずねてみたところ、返ってきた答えは「足が痛い」であった。子供は正直だ。 今回は子供もなるべく楽しめるようなルートを選んだつもりだったのだけど、地下道の移動は結構歩くので、子供の足にはきつかったようだった。 ぼくは家族サービスのつもりで息子と一緒に行ったのだけど、どうやら楽しんでるのはぼくだけで、サービスされてるのはぼくの方だったかもしれない。 ただ、消防博物館はとても楽しんでいたようなので、その点は良かったと思いたい……。
とにかく地上に出ない!
タイトルのインパクト重視で「地上に出ない」とか言っちゃいましたが、「地上」の解釈をちょっと拡張して「建物の外(屋外)に出ない」ということにしたいと思う。
(1)移動は地下鉄のみを使う。ただし、地下鉄でも地上を走る部分は使用不可とする。
(2)徒歩の移動は地下道のみを使う。
以上2点。
実にシンプルなルールだ。太陽の光なんか絶対に浴びないのだという強い意志がそこにはある。しかし、その強い意志の理由は、特にないのだけど。
理由なき意思。
バカをカッコよく言うとこういう言い方になるかもしれない。
ただ、地下鉄の地上部分は使用不可と決めてしまったので、前後の線路が地上を走っている葛西駅の「地下鉄博物館」には駅直結施設であっても、行けなくなってしまった。
貴重な観光施設をいきなり失ってしまった。痛恨のオウンゴールである。
しかし、観光施設はそれだけではない、はず……。若干の不安を抱きつつも、以上の点を鑑み、駅直結の施設を目指し、さっそく出かけた。
空模様は関係ない
当日はあいにくの曇り空だ。しかし、一度も屋外に出ないわけだから、空模様は関係ない。「一度も地上に出ずに東京観光」は、たとえ空から雨やらカエルやらが降ってきたとしても堂々と外出できるソリューションなのだ。すみません、ソリューションって一回言ってみたかっただけです。
意外な穴場「文京シビックセンター・展望室」
まずは、家の最寄り駅、勝どきから大江戸線で春日へ向かう。
最初の目的地「文京シビックセンター」は1994年に完成した高層ビルで、文京区役所や、音楽ホールなどが入っているのだけど、なんとこのビルの25階には無料の展望ラウンジがある。 そして一番のポイントは、この「文京シビックセンター」は、都営地下鉄春日駅と地下で直結しており、屋外に出ること無くその展望ラウンジに行くことが出来るのだ。
展望ラウンジは、日曜日の早朝だったためか、ほとんど人がおらず、ほぼ、ぼくたち親子の貸切状態だった。
思わず、ビル屋上のカッコいい室外機や中央大学のマークに執心してしまったのだけど、そんな事に夢中になっているヒマはない。次の目的地に向かわなければならない。 人の居ない展望ラウンジではしゃぐ息子を促し、また地下鉄駅に戻る。
迂回して四谷三丁目に……
次の目的地は四谷三丁目だ。 実は、四谷三丁目にある「消防博物館」は、地下で駅とつながっているのだ。
ただし、春日から四ツ谷まで行く場合、丸ノ内線を使用するとどうしても地上に出てしまう地点がある。
したがって、大江戸線と副都心線を利用して回り道して行くことにする。
消防博物館でテンションが最高潮に
というわけで、春日から大きく迂回して四谷三丁目駅に向かう。
消防博物館は四谷三丁目駅から地下道を通ってすぐだ。
で、中に入るといきなりこの有様。
地下一階から東京消防庁渾身の展示内容で、現役男の子と、元男の子のハートをわしづかみ。ハートキャッチ消防車。いやーやっぱり消防車ってカッコエエわー。わーい。
そして、お約束のコスプレ撮影コーナー。
言い訳を赦していただけるのであれば、子供用しかなかったんですね、衣装。で、こういう結果になったわけです。
さらに、このようなコスプレ記念撮影スポットは館内にいくつもあり。
こいうのや。
こういうのがあり、消防車のサイレンに心ときめかせた少年の日の記憶を呼び覚ますには十分すぎるアトラクションが揃っているのだ。
タマちゃんとの邂逅に興奮
そして、6階の映像室では、防災のための子供向け啓蒙アニメを、土、日、祝日に放映しているのだけど、これがちょっとすごい。
ぼくたちが行ったときにちょうど放映されていたのが「アザラシ・タマちゃんの火の用心」というアニメだったのだが、消防博物館さんに許可を頂いたので、ちょっと紹介したいと思う。
川原でのんきに惰眠をむさぼるアザラシ・タマちゃん。しかし、その川原でタマちゃんの眠りをぶちこわす事件が発生する!
子供たちのピンチに、タマちゃんは突然飛び出す!
必殺技が「口から水を吐く」というかなり雑なアニメだけど、見てた子供たちはもれなく釘付けだったので、かなりの啓蒙効果はあるんじゃないかと思う。
アニメはこれだけではなく、ドラゴンボールの孫悟空が消防士になっているアニメや、ちびまる子ちゃんの永沢の家が火事になるエピソードなども上映されていた。 特にドラゴンボールのアニメでは、主題歌「魔訶不思議アドベンチャー」の防災替え歌版を聞くこともできる。ドラゴンボール好きな団塊ジュニアは必見である。
防災アニメの前衛っぷりに打ちのめされたぼくたちは、地下のおみやげショップでおみやげをひやかしつつ、次の目的地に向かうことにした。
もう、なんだか消防博物館だけでお腹いっぱいの気分になってしまったのだけど、まだまだチェックポイントはあるのだ……。
次のチェックポイントは、都庁展望室……。
ほぼ外国人だらけの都庁展望室
都庁には、そのものズバリ「都庁前」という地下鉄駅がある。これで地下鉄駅に直結してなければ何の「都庁前」なのか。そのアイディンティティを疑う事になる。 しかも、都庁展望室は東京有数の観光スポットだ。東京観光するならば、いかねばなるまい。 丸ノ内線、西新宿駅から地下道を使って都庁前に向かう。
甘くみてた。 西新宿駅から都庁前まで歩いてもそんなにないだろうと思ったのだけど、これが意外と長い。 ヘトヘトになりつつ、都庁に到着すると、そこに衝撃的な文字が……。
地下鉄駅から都庁の建物に直接入るための入り口が、なんと閉庁時は閉鎖されているらしい……。なんたる失態。
しかし、案内板をよく確認してみると、都庁都民広場横の屋根の下を伝って行けるルートを発見。
とりあえず、屋根の下なので、屋内と言うことでOKにしませんか?というか、ここではぼくがルールなのでOKということにします。
そして、エレベーター前で手荷物チェックを受け、展望台に到着。
観光客は、3~40人ほどいたのだけど、8割中国人、1割韓国人と欧米人、残り1割が日本人、ぐらいの割合で、都庁展望台は中国人に大人気だった。 ここの様子だけ見ていると、反日デモとは一体、どこの国の話なんだろうと思ってしまう。
消防博物館でハッスルしすぎたので、さっさと次の場所に移動したい。 次の目的地は八重洲地下街だ。
そろそろ体力が限界に……
都庁前から大江戸線に乗り、青山一丁目で半蔵門線に乗り換え、大手町に向かう。
大手町から八重洲地下街まで地下でつながっているので、八重洲地下街までは歩いていけるのだ。 ただ、いままでかなりの距離を歩いてきて、足が棒になっている上、昼食を摂っていないので、空腹もひどい。 息子は足が疲れて痛いというので、ぼくが肩車で背負いつつ。八重洲地下街に向かう……。都会のど真ん中にいるのに、なんだか山で遭難したような気分になってきた。 しかし、これは自分で選んだ修羅の道……。
そして、ついに到着! やっとなにか食べられる……。
八重洲地下街の東京ラーメンストリートで、ラーメンを食べて体力を若干回復させたところで、八重洲地下街をざっと巡ってみる。
東京ならではのおみやげ集積地
八重洲地下街では、東京の全テレビ局のグッズショップをはじめ、アニメやマンガなどのキャラクターグッズの店が集積している東京キャラクターストリートという一角があり、まさにキャラクターグッズの聖地といった様相を呈しているのだ。
これらのショップは観光客向けではあるものの、東京都民であっても、なかなか観光地には出向かないことが多いので、ここにくるとちょっとした東京観光気分が味わえる。 特に、東京土産のコーナーの国会系ダジャレお土産の必死さには涙を禁じえない。 人間って一生懸命に生きてるよなあ……。 熱くなった目頭を押さえつつ、ぼくたちは最後の目的地に向かうことにした。
最後は夜景でも見るか
最後の目的地は汐留のカレッタ汐留だ。
八重洲地下街から地下道を通って、東京駅に向い、丸ノ内線で銀座まで乗車、銀座線に乗り換え、新橋からは地下道を通って汐留までやってきた。
カレッタ汐留のある電通本社ビルは、46階のレストラン部分に、無料で外が眺められる展望コーナーがあるのだ。
その間、息子は消防博物館でハッスルしすぎた疲れが一挙にでたのか、肩車をした瞬間寝てしまった……。
展望コーナーでの眺望は、暗くなり始めて、電気がポツポツと付き始める夕暮れの風景が一番キレイでカッコいいと思う。