特集 2019年7月8日

酒蒸し法・ザ・ネクスト

以前、当サイトで紹介させてもらった「酒蒸し法」が、最近、ふとしたきっかけから「第二段階」に突入しました。

 

基本「食材を日本酒で蒸し焼きにするだけ」の調理法ですが、そこからさらにほんの少しの工程を加えることにより、仕上がりに驚くほどの幅が加わることが判明したのです。

ぜひ、報告させてください。

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:美味しい物産品は人に聞くと確実


きっかけは「鶏のマスタードクリームソース」

先日、妻が何気なく「久しぶりに『鶏のマスタードクリームソース』が食べたいなぁ」と言いました。
知らない料理名だったので、「何それ?」と聞くと、要するに、マスタードと生クリームを混ぜたソースで味をつけたチキンソテーのようなものらしい。
試しにネットで作りかたを調べてみていて、思いつきました。
「あれ? これ、酒蒸し法を応用すればいけるんじゃね?」と。

家に材料が一通りあったので、その晩、さっそく試してみることにしました。

まずは塩をふった鶏の手羽元を酒蒸しにします。
あ、ちなみに今回の記事中も「酒」とはすべて「一升1000円ほどの紙パックの純米酒」を指すこととします。
全体に火が通り、しかしまだ酒は蒸発しきっていない頃合いを見計らい、

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生クリーム&マスタードを投入

よく絡めれば、

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「鶏のマスタードクリームソース」らしきもの、完成

これがまぁ、超〜美味しかったんですよ!
レストランなどで実際に食べたことあるわけじゃないけど、それなりのお金を払ってこれが出てきたとしてもぜんぜん納得いくレベル。
それでいて、作り方は笑っちゃうほど簡単だったわけで、そりゃあ思いますよね。
「酒蒸し法、革命入った? 第二段階突入した?」って。

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「チキンカレー」

そもそも前回の記事でも、最後にダシ醤油を絡めた、

003.jpg
「鶏の照り焼き」

くらいは作ってたんですよね。
つまり予兆はあった。
ならば、基本的に同じ考えかた、つまり、「最終段階で味を加える」ことにより、かなり幅広い料理が作れるのではないか? と考えたわけです。

例えば、鶏手羽元、雑にみじん切りにした玉ネギ、てきとうな大きさに切ったニンジンをフライパンに詰め込み、

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酒をヒタヒタにそそぐ

これを中強火で熱していくと、10数分くらいで、

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あとは塩で味つけすれば間違いなくうまい状態

になりました。
ここに、

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目分量でカレー粉と塩を足す
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熱しながら混ぜる

味見をしつつ、足りなければカレー粉や塩は追加してください。

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ちゃんとチキンカレーになった

トータルで20分もかからずに、割とちゃんとしたカレーができてしまいました。
肉も野菜も見た目以上に柔らかく、とても美味しいですし、カレールーを使っていないから、なんだかちょっと料理上手になった気すらします。
油を使っていないのもヘルシーな気がしますね。
とはいえ、物足りなさは感じません。

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「サバの味噌煮」

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サバの切り身、刻んだショウガ、酒

酒の量はサバの身の高さの6割くらいのところでしょうか。
同様に火を通し、水分量が残り1〜2割になったところで、

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味噌と砂糖を溶かす

味を見ながら、味噌はカレースプーン2杯ぶんくらい、砂糖は1杯ぶんくらい。
信じられないことに、それだけのことで、

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これまたちゃんとしたサバ味噌

になってしまいました。
サバの味噌煮ってこんなに簡単に作れるものなの? と、自分で驚いてしまったくらい。

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「カルボナーラ」

これだけ気持ち良く成功が続くと、さらに攻めた実験もしたくなってきます。
パスタなんてどうだろうか?

フライパンにパスタ1人前を半分に折って入れ、

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ドボドボと酒を注ぎこむ

パスタの高さの倍くらいかな。
そこからはこれまでと同じです。
酒蒸しにしてやりましょう。
水気がなくなってきたら味見して、芯が残っているようなら酒を足して調整してください。

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ゆだったらオリーブオイルと醤油を一周ずつ回しかけて味を整える

そしたら火を止め、粉チーズをたっぷり溶いた生卵を

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スピーディーに絡めれば
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完成!

これまでの経験から、どうせまたうまくいくんだろうと余裕な感じで実食してみると……あ、これはカルボナーラじゃない! 「酒ボナーラ」だ!
今までと比べて食材自体の風味が弱い「パスタ」の素直な性質が、酒の香りを吸収しまくっています。
もしもちょっと変わったシェフのいるイタリアンへ行って、「このカルボナーラ、ちょっとおもしろい作りかたをしてるんですよ。秘密はなんだかわかります?」とか聞かれたら、即座に「いや酒だろ!」って突っ込むレベル。
僕は美味しく食べられましたけど、苦手な人は苦手かも。
つーか、お湯で作ればいいだけかも。
最終的に、単なるパスタの時短技紹介になってしまいましたね。

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「炊飯」もとい……

パスタがああいう結果におわったので、かなり無謀な賭けだと思いつつ、最後にどうしても試したくなってしまったことがあります。
酒で米を炊く、つまり「酒炊飯」。
ちょっと酒蒸しから離れますが、まぁやっていることは似たようなもんでしょう。
そんな文字通り酔狂なこと、他にやっている人はいないだろうなと念のため検索してみると、トップに、以前ライターの馬場さんが書かれた当サイトの記事が表示されて笑いました。
なんでもやってるな! デイリーポータルZ。

その記事によると、
・日本酒独特の香りが強いので、酒が苦手な人には向いてないかもしれない
・醤油や具材などを入れて炊き込みご飯のようにしたら更に美味しかったことが予想される
とのこと。

そういえば先日、勝手に「炊き込むパリッコ」にも就任したことですし、よし! その続き、僕が引き継ぎましょう!

というわけで、酒で炊き込み御飯を作ってみることにします。
具材は、酒……さけ……鮭のダジャレから、鮭に決定。
スーパーで鮭の西京漬けが売られているのを発見し、原材料に「酒粕」の文字もあったので、ちょうどいいんじゃないかとそれにしてみました。

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米一合、酒、醤油、鮭の西京漬け一切れ

あとはいつも通り炊飯ボタンを押すだけ。
途中、台所がめちゃくちゃ酒くさくなったらどうしようとも心配しましたが、そんなことはなく、

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無事炊き上がりました

炊飯器のフタを開けた瞬間も、酒くささは感じず、漂ってくるのはふんわりとした甘い香り。

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おこげもできてる!

身をほぐしながら全体をよく混ぜ、お茶碗によそいます。

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完成! 「鮭と酒の炊き込み御飯」

これがですね〜、なんと……むっっっちゃくちゃ美味しかったんですよ!

同じ炭水化物にも関わらず、パスタの時のような酒の圧は感じない。
しかしながら、たまにいつものお米を土鍋で炊いたりすると、「お米が甘い!」って感じるじゃないですか? それに近い、米自体の美味しさを強く感じる。
酒炊飯による「旨味ブースト」効果だと思われます。
ほんのふんわりと酒由来の良い香りがするのと、若干の苦味も大人っぽいアクセントとして加わっているのもいい。
やっぱり炊き込み御飯にしたのが良かったのでしょう。
はっきり言って、最高のごちそう。
家に人を招いて宴会をするときなんか、良きタイミングでこんなものを出した日には、のちのちまで「あのときのあれ、美味しかったよね〜」と語り継がれること間違いなしな気がしますよ。


以上、今回は5品の酒蒸し派生料理を作ってみましたが、まだまだ可能性は無限に広がっている気がしますし、「酒を変えてみる」とかの視点からやってみるのもおもしろいかもしれない。

引き続き、飽きずに研究を続けてみようと思います〜。

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