薬草酒「ラク」
トルコは観光地が広範囲に散らばっているため、専属のガイドと運転手つきで、6日間ほどめぐった。なんでそんなに豪華なことができたのかはまた後で触れよう。
道中、食事についてはガイド・運転手の二人と別であることが多かったが、ある日の夕食を一緒に食べることがあって、その時に勧められたのが「ラク」というお酒だ。
トルコの伝統的な酒で、現在もトルコのアルコール消費量のうち大きな割合を占めるという。45度とけっこう強い酒なので、水割りで飲まれることが多いらしい。
そして最大の特徴は、水で割ると色が変わること!
面白くてお土産に買ってきたものが、この15年近く、ずっと家の戸棚に眠っている。この記事ではその封印を解いて、この不思議な水割り体験をみなさんと共有したい。
スッとするという点ではミントに近い感覚ではあるが、あの「ただ単にスッとする」感じではなくて、もっと香りとしての主張もあり、少し甘く香る。アニスというハーブのものらしい。
ではさっそく、水で割ってみよう。
理科の石灰水の実験を思い出させる白濁ぶりである。透明のラクに透明の水を混ぜて、何もないとこから白色が出てきた。不思議!バグか?
ちなみに味の方は、15年前に飲んだ時は「接着剤の味だ…!」と思ったことを覚えている。あらためて、おそるおそる飲んでみると…
これは美味しいな…。
香り同様、ちょっと甘くて、アルコール度数(割る前で45度、いまは半分くらい?)のわりにずいぶん飲みやすい。当時は単純に強い酒に慣れていなかった、ということなのだろう。
その代わりアニスの味?がかなり独特で飲みなれた焼酎や日本酒とは全く違う味だが、エキゾチックで楽しい。
ちなみにトルコへは、前述のとおり観光地が分散しているので、当初パッケージツアーで行く予定だった。しかし出発直前にバスの滑落事故があり、ツアーが中止になってしまったのだ。
あやうく新婚旅行がキャンセルになるかと思われたが、旅行会社が代わりに個人旅行で同コースを回れるプランを組んでくれた。個人旅行といえど代替ツアーだし、お値段据え置きなので他の旅行者と一緒に回るのかと思いきや、現地についてみるとなんと僕と妻の二人だけ。そんな経緯で、ガイドと運転手つきの豪華ツアーが実現したのだった。
第2の白く濁る酒
さて、記事はここで終わりではない。実はもう1種あるらしいのだ。白く濁る酒が。
いろんな銘柄があるが、今回は値段的に買いやすかった「ABSENTE 55」を購入。
かつては原料のニガヨモギに幻覚作用があるとされ、20世紀初頭には欧米各国で禁止されていた酒だ。幻覚作用についてはのちの研究で否定されているが、単に安価な酒であったため、あのゴッホをはじめたくさんの芸術家がアブサン中毒で身を滅ぼしたという。いわくつきの酒である。ゴッホの顔が3重になったパッケージがいかにもという感じだ。
香りはラクに似ているけど、アニスの香りは少し弱く、もうちょっと複雑な、うーん、何かが…。(語彙力)
アニス以外にニガヨモギなどいろんなハーブが入っているようなので、それらが混じった香りということだろう。
いよいよ、水を注ぎます。
すげー。蛍光色だったのが白く濁って、マスカットのカルピスみたいな色に。ますますケミカルで面白い。
もちろん、飲んでみます。
ラクと同じく薬草酒ということで、独特の風味がある。正直苦手な人もいるだろうが、自分は物珍しさでむしろ楽しめた。
で、やばいのはここからで、そのかわり強い酒の飲みにくさが全くない。なんだこの飲みやすさは…。これは多数の犠牲者を出したのもうなずける…という感じである。アブサン、要注意の酒だ。700mlも買ってしまったが……。
なんで白くなるのか
原理を調べてみると、ラクにもアブサンにも共通して使われているハーブ、アニスが原因のようだ。割る前はアニスの油分(精油成分)がアルコールに溶け込んでいるのだが、油分は水には溶けないため、水を入れてアルコールが薄まると浮き出てくる、ということらしい。
原理を聞くとあーなるほどと思わないでもない。しかしそれでも発見されずにリリースされてしまったバグっぽさがある。アニスを含んだ飲み物を水割りにした場合のテストケース漏れだ。
ところでこの日、撮影のために使ったラクとアブサンを少量ずつ飲んだだけで全く酔う酒量ではないと思ったのだが、しっかり酔っぱらってしまった。薬草酒、本当に要注意である。(戸棚に700mlあるが)