ウェットとティッシュでウェットティッシュを作る
このあと、わけたティッシュにウェットをかけてみた。
これはこれで、4時間かけた長大な「穴掘って埋める」である。
以前、のりたまを分別する装置を作った。小皿にわかれた「のり」と「たま」を目の前にすると、謎の征服感に包まれたものだ。
分けたい。俺はもっと分別がしたい!
そんな衝動にかられ、今度はウェットティッシュを分けてみることにした。
アルコールや除菌成分の入ったウェットティッシュが品薄な昨今だが、そのかたわらで、水のウェットティッシュは店頭に山積みになっていたりする。
この水のウェットティッシュを今回の分別対象にきめた。のりたまを「のり」と「たま」に分けたように、ウェットティッシュを「ウェット」と「ティッシュ」に分けるのだ。
この場合の「ウェット」とは、もちろん水のことだ。固体と固体を分けるのとは違う、液体と固体の分別。乾燥させればティッシュだけを取り出すことはできるが、水の方は失われてしまう。では一体どうしたら?
そこで、蒸留である。
必要な器具の確認をしようとキッチンに行くと、マグカップに入ったルイボスティーがあった。いきなりウェットティッシュで試して失敗するともったいないので、試しにこれを蒸留してみることにしよう。
流れ上、飲み残しの写真をこんなにでかでかと載せることになってしまった。ごめん。
用意したのはこれだけ。鍋、フタ、計量カップ(耐熱の器なら何でもいい)、木の板、冷却材。
こうすると、沸騰して気化した水分がフタの表面で冷えて水に戻り、斜面を伝ってまんなかの計量カップに落ちる、というわけだ。なんとなくアリ地獄っぽいしくみ。水地獄だ。
ちなみに木の板を入れたのは、遮温のため。計量カップが鍋と一緒に熱くなってしまうと、せっかく集まった水がまた煮立ってしまうからだ。
フタの裏面をつたって、どんどんカップに水が落ちていくのがわかる!
この蒸気のせいで大量の水が漏出していそうだが、ふさぐのもなんだか怖いので、これには目をつむることにした。
ちなみにこの蒸気、嗅いで見るとなんだか木の匂いがした。ルイボスティーの香りが濃縮されたものだろうか、あるいは遮温のために入れた木の板の匂いか。
待つこと15分ほど。飲み残しのお茶はついに干上がった。
すげえ、お茶から水ができた!ティーバッグを入れたが最後、二度とただの水には戻れないものと思っていたが、こうしてキッチンにあるものだけでもとに戻すことができるのだ。軽くタイムふろしきである。
……と感動するとともに、もともと水だったお茶を、こうして手間暇かけて水に戻すというのは……なんかこう、「穴掘って埋める」的な徒労感もある。(そういう罰だか拷問だかがあると聞いた)
いずれにせよ、いままで味わったことのない感覚であるのは間違いない。ものすごく暇を見て余しているときに、一度やってみてほしい。
蒸留したので透明な純水になるかと思いきや、黄色い。どうやら完全に水に戻っているわけではないようだ。ほかにも沸点の低い成分が入っていて、一緒に蒸留されてしまったのかもしれない。
ところで、どのくらいの量をちゃんと水として確保できたかも、気になるところ。もとのお茶と並べてみると……
あらかじめ量を量らなかったので目分量だが、だいたい半分くらいの水分が取り出せた。蒸気穴やフタの隙間から出て行ってしまった蒸気がもう半分くらいあるということだろう。
不純物が入ったり量がけっこう減ったり、精度としてはイマイチだが、水が取り出せただけでもうれしい。もう一つ検証してみよう。
今度はちゃんと量を量ってやってみたい。ペットボトルのコーラだ。
こんな重油みたいに真っ黒な液体が、水に戻るなんてことある??
つきっきりで鍋の様子を見つつ、たまに温まった濡れタオルを水で冷やし、しぼって乗せなおす。熱出した子供の看病してるみたいな気持ちになる。コーラの水分に対して謎の愛情が育っていく…。
量はだいたい90mlくらい?もとが200mlで、水以外の成分もあったことを思えば、やっぱり水分量の半分程度が取り出せていそうだ。
色が残っているということは、コーラの匂いがするのかな?と思って嗅いでみると、強い木の匂いがする。きっと、間に敷いた木の板のせいだ。この色も、コーラではなく木に由来しているということもありうる。何気なく入れた遮温材が、こんなに主張してくるとは思わなかった。
それから、鍋に残った固形物。蒸留の副産物としてコーラアメができたぞ!!と思って舐めてみたら、こちらはただ苦いだけだった。何から何まで予想外である。
さてここからが本番だ。いよいよウェットティッシュをウェットとティッシュに分ける。
さて、ウェットティッシュはルイボスティーやコーラのように液体ではない。どうしたものかと思ったが…
水滴はフタの裏をつたって、どんどんカップの中に落ちていく。そんなかんじで出足は調子が良かったものの、その後はなかなかの長期戦だった。
お茶やコーラのときみたいに遠慮なく強火でいくと、空炊きになって鍋が傷んだり、最悪ティッシュが燃えるかもしれないのだ。少し加熱しては放置、冷えてきたらまた少し加熱して……を繰り返し、なんだかんだで4時間ほどかかった。
ウェットティッシュが、ウェットとティッシュに分かれた!(ちょっと焦げたけども)
これらを混ぜて袋に詰めたもの、それがあの店頭のウェットティッシュなのだ。
焦げた分も含めて、ティッシュの重さは200g→58gまで減少。142gが水分だったことになる。ウェットティッシュの重さの70%は、水だったのだ。
一方、分離できた水は…
はかりで正確に測ってみると122gだった。142g中122gを分離できたということで、今までで一番の精度。
蒸留は強火で一気にやるよりも、弱火でトロトロやった方がいいということかもしれない。豚の角煮と同じなのだ。
このあと、わけたティッシュにウェットをかけてみた。
これはこれで、4時間かけた長大な「穴掘って埋める」である。
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