今、各々の「いいもの」が炸裂する
酒樽に入っていてうれしいものを考えるには、実際に酒樽の中に入れて取り出してみるのが一番である。編集部の会議室をお借りし、実際に鏡割りを執り行うこととした。
また、一人で考えられる「いいもの」には限りがある。ライターの江ノ島さん、まいしろさん、米田さん、そして編集部の石川さんにもお越しいただき、各々の思う「いいもの」を持ってきてもらった。
各々の「いいもの」は実際に取り出してみるまで秘密にしてもらっている。どんな「いいもの」が飛び出すのか楽しみだ。さっそく鏡開いていくとしよう。
板が割れるとどきどきする
初めから酒樽の中に色々なものを入れてみてもいいのだが、ふつうの鏡開きとの比較もしてみたい。まずはお酒を入れた状態で鏡開きをしてみよう。
いきなり余談だが、てっきり酒樽全体を酒で満たすものかと思っていたら、このレンタル酒樽はそうではなかった。中にボウルをセットし、そこに酒を入れる。そこに木の蓋でフタをすることで「酒が入った樽のふたを割る」という目的が的確に達成できるようになっているのだ。
単に清掃の都合かもしれないが、儀式の形式部分だけが綺麗に抜き出されていて清々しい。
それでは鏡開いてまいります。
割れちゃった。
ドン、という音ともに割れる木蓋。シーンとした空気。割れちゃった、という雰囲気なのだ。
何かいけない事をしたかのような空気が立ち込める。考えてみれば日常生活の中で木を割る経験などそうなく、あるとしたら何かを壊してしまった場合なのだ。木の椅子とか、テーブルとか。割った側としてもそういう感覚だったのだ。
思わぬ形となったが、これが鏡開きである。慣れていこう。
かわいいものを入れるとほっこりする
気を取り直して各々のいいものを入れていくとしよう。今回はそれぞれが持ち込んだものを一つずつ入れては出してみることとした。まずはまいしろさんの持ち込みからである。
ぷかぷか浮かぶアヒルが顔を出した。かわいい。先ほどの水だけの時とは大違いのほっこり感である。
日本酒の代わりになるものを......と思っていたが、これなら日本酒と一緒に入れておくことも可能である。あ、かわいい!とほっこりできるので、今すぐにでも全国の鏡開きでの実践をおすすめしたい。
続いてはかわいいものならばこれがあるぞと、私が仕込んだこちら。
「なんだか跳ね返される感覚があった」と石川さん。確かに割れた木蓋のすきまから何かがみちみちに詰まっているのが見える。なんでしょう。
「かわいい」「樽込みでサンリオのキャラクターにいそう」「全国の酒樽の中を移動できる」との声があがった。確かにぬいぐるみの大きさが酒樽にジャストフィットしており、公式キャラクター然としている。
やはりかわいいものが顔をのぞかせると場がほっこりするものだ。鏡開きの正統派ニュースタンダードである。鏡開いた後は中から出てきたもののミニチュアや複製品を参加者に配るといいと思う。
めでたいものを入れるとよりめでたい
アヒル、ぬいぐるみに続いて色々なものを入れては出してみた。仕込まれたものはいくらかのパターンに分けられそうだったので、カテゴリごとに紹介したい。
以下は鏡開き自体だけでなく、その中身にもめでたいものが仕込まれていたパターン。
仕込んだのは米田さんだ。曰く、受験期に「きっと勝つ」として重宝される縁起のよさで選んだとのことだ。
また木蓋を「割る」ことがキットカットを「割る」ことと重なるという意味合いもある。色も紅白。縁起の良さがうなぎのぼりなのだ。
日本酒と違って子供も食べられるし、なんだかこれは商売の匂いがする。ネスレさん、鏡開きにキットカットいかがでしょうか。
もう一つは私が仕込んだこちら。
鏡開いて楽しい、くじを引いて楽しいの二段構えだ。さっそく皆で引いてみたところ、まいしろさんが一等を引き当てた。
一等から五等まで適当に混ぜて入れておいたのだが、「すべて一等の方がめでたいんじゃないか」という声があった。しまった。確かにそっちの方がめでたかった。
「法被と相まって町内会のお祭り感が出てきた」という声もあった。確かにくじのデザインもあってか式典というよりお祭りのイベントのような和やかさがある。式典は式典でも二次会の雰囲気だ。
電子機器はどきどきして心臓に悪い
まさか、とは思うのだが電子機器が仕込まれているパターンもあった。しかも結構あった。人数でいうところの5人中3人は持ち込んできていた。過半数じゃないか。
勢いよく木槌を振り下ろして隙間からスーファミが見えた瞬間、首筋がひやりとした。壊れていないだろうか。ソフトの真上あたりを木槌で叩いてしまった気がするぞ。
身の回りを探した結果、見つかった「いいもの」がこれだったという。確かにいいものである。ソフトもがんばれゴエモンだし。でもいいものだからこそ大切にしてほしい。
後日江ノ島さんから「あのソフトそういえば隠し要素まで出していたな、壊れたら嫌だな、と思いどきどきしながら見ていました」と感想をいただいた。
しっかり大事なものじゃないですか。そしてこのあと無事電源が点いたかどうかも教えてください。
続いては石川さんの電子機器である。
「これにはストーリーがあるんです」と石川さん。はるか未来において大変なことになってしまった世界を救うため、壊れかけのロボットが過去に戻ってきたところだというのだ。
鏡開き会場が急に壮大な物語のスタート地点と化した。
話を途中まで聞いていて、ロボットが過去に戻ってきたものの運悪く酒樽の中に転移していまい、我々の手で即壊してしまった話かと思った。そんな暗い話じゃなくてよかった。
とはいえ未来がピンチということなので、これから世界を救いに行きたいと思います。
最後に最もヒヤリとした電子機器がこちら。
「おいおいおい」「怖い怖い!」「うわーっ!」という声が飛び出す。何だ。何が入っていたんだ。
一眼レフだ。はっと振り返ると米田さんが持っていたはずのカメラがない。本当になんということをしてくれるんだ。
「割られる側の視点から撮ることで、後からもう一度楽しめる仕組みです。今も録画しています。」確かにそうかもしれないが......。
お酒じゃなくても十分に楽しめる
かわいいものでほっこりしたり電子機器でヒヤリとしたり。思いのほか感情が揺さぶられることとなったが、いずれも鏡開いた際に楽しめるものであった。やはり樽の中身は日本酒に限るものではなく、可能性はたくさんあるのだ。
ちなみに本文中で紹介したもののほか、次のようなものも入れて試してみた。
- すぐに楽しめる晩酌セット(おつまみ付き)
- 黒ひげ危機一発(樽 in 樽)
- 餅(このまま餅つきが始められる)
今後何かの機会で鏡開きをする際は参考にしていただけると幸いだ。
私もまた色々なものを入れて楽しんでみたい。一眼レフ以外で。