富士そばのうどん、不遇を超えろ
東京でもうどん店がだいぶ増えた昨今。かつて東京では地に墜ちていた「うどん」の価値は向上した。
いま富士そばのうどんにも、社会的地位の向上に千載一遇のチャンスが来ている。ぜひ富士そばの「うどん」を試してみてほしい。
富士そばは、東京を中心に一都三県で117店舗を展開する立ち食いそばチェーンだ。
通算で180回くらい、富士そばに通った僕は伝えたい。
富士そばは「うどん」こそ至高なのだ。
ハッキリ言おう、東京周辺で「立ち食いそばのうどん」は長らく不遇だった。なぜなら東京は「そばの街」だからだ。
かつて東京近辺は、そば屋は多いがうどん屋はぜんぜんなかった。加えて東京界隈の者は、なぜか「そばはうどんより一つ上の存在」のような階級意識があった。
「立ち食いそば屋だったらそばを頼め」との、なんとなくの無言の圧力を感じ、僕も流されるようにそばを頼んでいたこともある。
だが、いまは断言できる。「俺は富士そばのうどんが好きだ」と。そこには小麦粉100%ならではの完成された味わいと、包容力がある。
僕が推す富士そばのうどんだが、気合を入れて頼む必要はまったくない存在だ。「富士そばでいいや」と、気軽に入店できる。
いい意味で「妥協の選択肢」。野球のローテーションでいうと、先発5番手を安心してまかせられるピッチャーである。
ややクセのあるそばとは違い、うどんは口に入れたときに何の拒否反応も出ない。数あるうどんの中でも平均的な硬さで、ちょうどいいかみごたえだから、すんなりと食べ進められる。舌触りもサラッときもちいい。
太めのうどん麺だから、口に入れたときにもっちりと充足感で満たされる。しかも注文して3分で出てくるオマケつきだ。
メニューでいえばかけうどんでも十分だが、とくにいいのが天ぷらうどん(460円)だ。カロリーの爆弾のような塊を、麺と交互に、ときに同時に口へ運ぶのがたまらない。
僕はこの記事を通して、みんなにも一度富士そば(立ち食いそば屋)でうどんを頼んでもらいたい。
ちなみに僕も”立ち食いそばのそば”は大好きだ。だが、前提として頭に入れておきたいのが、”立ち食いそばのそば”は、基本的に「ちょっとそば粉の入ったうどん」だということ。
たとえば一般的な二八そばと呼ばれるものは、
の割合で作る。
それに対し、昔から立ち食いそばのスタンダードとされる”逆二八そば”は、
の割合だ。「ほぼうどんだけど、うどんじゃないもの」である。
ねらいは、高いそば粉をできるだけ使わず、安い小麦粉でのかさ増し。もっとも富士そばのそば粉含有率は同業他社と比べて高く40%もあるが、それでも二八そばに比べて半分だ。
それに対し、うどんは立ち食いでも基本的には小麦粉率100%。うどんを頼んだほうが、もともとの姿に近いものを食べられるのだ。
もっとも、そば粉含有率が低くたって「会心の一杯」はあるけれどもね。
最後に富士そばのそばの魅力も語ろう。富士そばのそばが活躍するのは冷やしだ。
冷やされた富士そばのそばは、太めでコリコリと歯ごたえが出る。これで食べるもりそば(340円)は格別だ。
こんもりと盛られたわさびを付けて食べ進めれば、歯ごたえとともに染みるうまみと、わさびの辛みが相まってたまらなくなる。
なので僕は
と食べ分けて、なかなか楽しめている。
東京でもうどん店がだいぶ増えた昨今。かつて東京では地に墜ちていた「うどん」の価値は向上した。
いま富士そばのうどんにも、社会的地位の向上に千載一遇のチャンスが来ている。ぜひ富士そばの「うどん」を試してみてほしい。
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