このシャンデリア、照明器具としてどうかというと、明るい部分と暗い部分のコントラストが強くて気が散る感じだった。
ジェルボールが魅力的すぎる
ジェルボールタイプの洗剤、服を洗濯するという目的を超えた魅力がある。
薄い皮に包まれた蛍光色の液体。意味ありげなマーク。指でつまめるちょうどいいサイズとプニプニした感触。見ていると必要のない唾液が分泌される。箱の至るところに子どもに触らせるな、と書いてあるのも頷ける。
どう考えても必要以上に魅力的だ。魅力的すぎる。表面のマークも陰陽師の太極図のような意味深なものに思えてきた。青が『陰』白が『陽』を表し、全体で森羅万象を表現しているのだ。
この魅力的な物体をすぐ洗濯機に放り込むのはあまりに惜しい。このキラキラした小さな物体、例えばシャンデリアにして飾ったらその魅力が最大限生きるのではないだろうか。
材料を揃える
100円ショップで小さいピンチハンガーを買ってきた。
これに、照明器具とジェルボールをたくさんぶら下げてシャンデリアにしようと思う。
3種類買った。青とピンクと緑でカラフルなシャンデリアを作るぞ、と思ったが、青い箱と緑の箱に入っている洗剤の色は同じだった。
早速前のめっている。全部ジェルボールの魅力のせいだ。なんでこんなにキラキラしているんだ。
材料が揃った。シャンデリアを作ろう。
ジェルボールを縛る
ジェルボールを干し柿みたいにしたいのだ、と思って干し柿の縛り方を調べたら思っていた感じと違ったので(柿の枝の部分に結びつけていた。ジェルボールには枝がない)、手探りでなんとなく縛ってみることにする。
うっかりジェルボールを割ってしまわないよう、爪を立てないように、力を込めすぎないよにそっと結ぶ。
首にかけるとおしゃれだ。洗剤の良い香りがする。服から洗剤の香りを漂わせる人は清潔な人だが、この場合、身につけた洗剤から洗剤のにおいを漂わせる人だ。すごく良い香りはするが清潔感とは無関係である。
少しやってみて、これは見た目の割に大変な作業を始めたぞと思った。ジェルボールを割らないように気をつけながら細い糸を扱わないといけない。すごく神経が疲れる。
これで1時間か…! 8連ぶら下げたいので、単純計算で4時間かかるぞとか思いながら縛ったジェルボールを持ち上げたらなんか全部バラバラになった。
今考えると明らかなのだが、裁縫の糸は細すぎた。重みに耐えられなくて結び目がほどけたのだ。そりゃそうだ。
ほどける様子を見ると心から納得できるのに、その直前まで「まあ大丈夫だろう」と思っていた自分がいる。怒ったり呆れたりするよりも心底感心してしまった。人の想像力って、不思議…! という気持ちである。初めてのことをするとたまにこういうことが起きる。
縛りやすかったし、何よりほどけない。紐が見えない方が良かったのだが、大丈夫だろう。ジェルボールの魅力は損なわれていない。
そうして8連のジェルボール飾りができた。
すごい光景である。生々しい生命力を感じる。洗剤しかないのに。
シャンデリア、できました
なんだか分からないがものすごくきれいだ。それも脳に「きれい」という情報だけが直接刺さってくるようなシンプルで力強い美しさがある。「蛍光色」で「透明」で「光って」いたら「きれい」と言うしかない。炎に群がる虫のようにこのシャンデリアをありがたがろう。
卓上の照明にもなる
シャンデリアができた次の日、コンビニに行ったらトイ・ストーリーのキャラクターのケーキが売られていて、このフタの部分が照明のサイズとぴったりなような気がした。
ケーキはもちろんおいしかった。そしてそのフタだが、
興奮が伝わりにくそうな奇跡が起きた。「これは…!」と思い、シャンデリアからジェルボールを外し、ケーキのフタにつける。
ジェルボール洗剤のローストビーフ丼みたいなものができた。今度はこの蛍光色のものすごくキラキラしたものを手で持てるのだ。
妻に見せたら2秒ほど言葉を失ったのち「きれー…」と言ってくれた。すごい優越感であった。
つなげて、吊るし、光らせる。ジェルボールの魅力を発揮させられたと思う。そしてこれ、洗濯機に入れて服も洗えるのだ。本当にすごい。