特集 2020年9月8日

名古屋のお好み焼きは二つ折りにして紙で包む

お好み焼きは一体どこの食べものなのか。
大阪?広島?はたまた東京?世間では主にこの三択で意見がわかれるが、実は愛知にも存在する。現地で食べてきたので紹介したい。

愛知県出身、東京都在住のデザイナー。イラストを描き、写真撮影をして日々を過ごす。
最近は演劇の勉強に熱中。大きなエビフライが好き。

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名古屋のお好み焼きってなんだ

愛知、名古屋といえばグルメだろう。
小倉トーストに手羽先、きしめん……独特と言われる食文化のなかで、全国的に食べられているはずのお好み焼きも様子がおかしい。
 

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最低限の具しか入っていないタイプを選んだせいでもあるが、チヂミのようなひらぺったさ。(愛知県一宮市 大野屋)

薄く伸ばした生地が特徴で、主な具は大量の千切りキャベツと紅ショウガ。
他には青のりやネギ、イカや豚肉。たまごが入っている場合もあるが、どこのお店のものでも紅ショウガの主張が強い。「紅ショウガ味のお好み焼き」と言ってもいいくらい。

広島・大阪・名古屋のお好み焼きの違い

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地域や店舗によって異なる場合もあるが大体こんな感じ。一部筆者の主観も入っている。

広島風のように具を重ねて焼くが、ひっくり返す前に生地を追加し、ひっくり返したあとに上から叩いて圧し焼くのが名古屋流だそうだ。

そうすることで「広島」と「大阪」の中間程度の厚みになるのだという。

名古屋のお好み焼きはホットスナック

わたしは愛知県出身なので、昔はこのお好み焼きをよく食べていた。
父親が大阪出身なのもあり、家の食卓に上がるのはほとんどの場合大阪風だったけれど、外出時は名古屋のお好み焼きを買い食いしていたのだ。
友達と遊ぶ時のお供だったし、地域のイベントで配られることもあった。
この料理の真骨頂は「歩き食べ」にある。包装に注目してほしい。

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先ほど紹介した大野屋でテイクアウトしたお好み焼き。紙に包まれており、このままかぶりつくことができる。
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こちらのお好み焼きは外側がアルミコーティングされた紙に包まれている。どう見てもかぶりつきながら歩ける。(愛知県岩倉市 米乃家)
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保温機に入れられていることも多い。

二つ折りにして食べやすくし、紙で包んで熱を逃さない。
お好み焼きにしては過剰とも言えるほどテイクアウトに適応している。
このスタイル、県外ではあまり見たことがない。愛知を出て5年以上が経つが、つい最近気づいたことだ。

さらにこの名古屋のお好み焼きに対する広島県民の友人による発言、「(広島では)お好み焼きは焼きたてで食べるから店頭には並んでない」にハッとした。

愛知県民は、お好み焼きをホットスナックとして認識している……?さらなる確信を得るために名古屋の街へと繰り出した。お好み焼きを食べ歩こう。

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お好み焼きを食べ歩きたかった

名古屋で食べ歩きといえば大須商店街だろう。

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大須商店街に来ました。

名古屋駅から20分ほど地下鉄に乗った先にある大須商店街は、9つの商店街で構成されており、不慣れな人が行くと迷うこともあるほどの巨大さ。さまざまな飲食店が食べきれないほど集まっており、お好み焼き屋さんも複数あるので今回の企画にぴったりの場所である。早速行ってみよう。

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一軒目。イラスト看板がかわいい鈴木商店。休業。
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二軒目。「名古屋風」の文字が大きく書かれた大潮屋。こちらもおやすみ………。
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三軒目、やきや。この日大須商店街で唯一営業していたお好み焼き屋さん。

営業してるお店があってよかった!
実は四軒目もチェックしていたのだが、そちらはお好み焼きの取り扱いを終了していた。こんなにお好み焼きが買いたくても買えない日、そうそうない。

さて、目当てのお好み焼きよりも「もだん焼」と「塩ねぎ焼」の文字が目立つ「やきや」だが、当然お好み焼きを注文する。店頭の窓越しに注文して受け取るドライブスルースタイルのお店。
 

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お金のやりとりのあとスピーディに渡された、てのひらサイズの包み。

ぐるりと紙に包まれたなぞの物体。
このビジュアルに「まさか」と思う方もいるかもしれないが、お好み焼きだ。
表面に押されたスタンプで中身がわかるようになっていて親切。「お好み」がお好み焼きで、「塩ネギ」はお好み焼きに似ているが、キャベツの代わりにネギが入っている料理、塩ねぎ焼き。
 

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お店の窓に貼ってある「美味しい食べ方」を見ながら包みを剥がす。
巻き込み部分を半分広げ、真ん中あたりで切る……。

中身を崩してしまわないようにそっと包み紙を広げると、中から見慣れた二つ折りがでてきた。
 

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生地がかなりうすい。皮と具が混ぜこぜになったクレープといった感じか。(写真奥は塩ねぎ焼き)

このお店のお好み焼きの特徴は、とろけそうなほどやわらかい生地と、内側に大量にかけられたソース。この組み合わせが空きっ腹を刺激する。うまい。
 

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剥くのがヘタすぎてびっくりした。手をベタベタにしながら食べた。

ひとつも食べられなかったらどうしようかと思った。ここだけでも食べられてほっとした。けれどもまだ胃袋に余裕があるし、もう一個食べておきたいお好み焼きがある。
ソースで汚れた手を拭いて、円頓寺商店街へと向かった。

持ち歩きお好み焼き発祥のお店

名古屋駅から徒歩15分の場所にある円頓寺商店街のお好み焼き屋さん、甘太郎。お好み焼きを紙で包むスタイルの元祖で、40年以上売り続けているのだという。

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看板の汚れ具合からも伝わってくる老舗感。

店内を覗いてみると、お好み焼き以外にも鬼まんじゅうにういろ、みたらしだんごに五平餅なども売っていた。豊富なメニューに惑わされながらお好み焼きを購入。
値段は150円と、今回の取材中に購入したお好み焼きのなかで一番の低価格だった。
具を肉・イカ玉・肉玉と、三種類から選べる点も魅力的。値段の安さも相まって、そのサービス精神にちょっと心配してしまう。そんなによくしてくれなくていい。
 

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作り立てほやほやを渡される。思わず袖をミトン代わりにするくらい熱い。
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包みを開くと、おにぎりサイズでかわいいお好み焼きがでてきた。

 

みっちり詰まった甘い千切りキャベツにソースがたっぷり絡む。「肉玉」を選んだので豚肉と卵が入っていてさらにうれしい。生地もふわふわだ。
サイズが小さいぶんすぐに食べ終えてしまう。無限に食べたくなる味だった。

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同行してくれた友人もおいしそうに頬張っていた。左手に持っているのはここで一緒に購入した、みたらしだんごの串。

温かくて安い。そして歩きながらでも食べられる名古屋のお好み焼きは、十分ホットスナックだった。


名古屋がお好み焼き論争に加わらない理由

「お好み焼きはどこの名物なのか問題」に名古屋が加わらない理由は、土地に根付き過ぎているからかもしれない。
今回手伝ってくれた愛知県民の友人も、昔から食べ親しんでいながらも「名古屋の食べもの」という認識がなかった。そこにあるのが当たり前すぎて名古屋ローカルであることに気づいてない。
名古屋のお好み焼きは、県民の県民による県民のための超地域密着フードなのだ。

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イートインでも、もちろんおいしい。

 

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