特集 2024年3月12日

突然、春のパンまつりにはまった

突然、春のパンまつりにはまった。

毎日、点がついているパンを探しているし、出かけたときはその土地のヤマザキのお店に寄って帰る。

朝晩のごはんをヤマザキのパンにする日もある。

その途中で気づいたことをお知らせしたい。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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> 個人サイト webやぎの目

日本に5億枚の皿を配ったまつり

春のパンまつりの公式サイトを読んで感動した。こんな一文があったのだ。

> 累計交換枚数がついに5億枚を突破した2018年

春のパンまつりは日本中に5億枚の皿を配っている。日本の総世帯数が4885万なので、1世帯当たり10枚の春のパンまつりの皿がある計算になる。日本で有名な皿はジノリでもノリタケでもなくヤマザキだった。

この春のパンまつりヒストリーでは日本の社会の変化、それを反映したパンという構図が見えてちょっとした戦後史である。

> 1984年 男女雇用機会均等法を求める運動が活発化→簡便食→ランチパック
> 1994年 バブル崩壊・ティラミスなど洋菓子ブーム→おしゃれでコスパがよいもの→スイートブール
> 2008年 少子化・高齢化→パンのハーフサイズ

白い皿も健康志向にあわせてサラダ皿になったり、インスタを意識した皿になっている。
私やその前の世代のいとなみがパンと皿になって残っている。

そう考えたらまつりへの参加意欲がどんどん高まった。

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点はパンだけではない

はじめのうちは近所のスーパーでヤマザキパンを探すだけだったが、いたずらにちょっと離れたデイリーヤマザキまで足を伸ばしてみた。

ランチパックずっしり 2.5点
栗きんとん串だんご 1点

さすがヤマザキのお店だと見たことがないものがたくさんあり、なかには2.5点など高得点のものもあって興奮する。なかでもこのあたりで声が出た。

牛丼 2.5点
うどん2.5点

これは…蒐集スイッチが入った。
見たことない昆虫を探すときと同じ脳の領域が活性化している。いまおれの脳をfMRIで撮ってくれ。
もっと珍しいパン、そして見たことない高得点を見てみたい。(山崎製パンのサイトに得点一覧があるが、実物を見てみたいのがコレクター)

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パンは優先されている

某日、渋谷で打ち合わせ。帰りに渋谷区役所近くのデイリーヤマザキに寄ってみる。

渋谷公会堂の向かい。店内調理のデイリーヤマザキだ。
やっぱり笑ってしまう。パンまつりに混ざるそばいなりセット
店内調理のパンにも点がついている
食パンは点が高め

点はだいたい100円が1点になるように貼られているようだ。

だが、上記の牛丼やそばは450円以上するので単純計算だと4.5点になってしまうのだが、そこはやっぱりパンまつりだ。弁当類は2.5点で打ち切りになっている。
そしてパンでも菓子パンや惣菜パンよりも食パン類のほうが点が高めに設定されている。

そこに山崎製パンの矜持を感じた。

ヤマザキらしさをひとつも感じないけどパンまつり0.5点
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安くてでかいパンが不利

ヤマザキパンといえば安くて大きなパンである。だが、それらのパンは価格の安さが仇となってしまってだいたい0.5点だ。

あげぱん 0.5点
寒い日、パンを買ってきて部屋で見たら結露していた。115円 0.5点​​​
大きなメロンパンは価格的には1点でもいいが、0.5点

価格的には1点でもいいものを0.5点にしているのは、皿プレゼントに回すコストまで大きさにつぎ込んでいるからかもしれない。

かたやセブンイレブンで小さくて洒落たパンを売っているが、裏面を見ると作っているのが山崎製パンだったりする。

やろうと思えばどんなパンでも作れるのだが、自社ブランドでは大きさと安さというシンプルなロックを追求する。頼まれれば今風のイラストも描けるのに、自分の名前で発表する作品はなんで?ってぐらい癖のある絵柄にするイラストレーターのようだ。

そしてでかいパンのパッケージデザインがばらばらだ。デザインの統一なんてロックじゃない。 

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スナックゴールドは関西と関東で向きが逆

ライフでは「ミニスナックゴールドミニ」という回文のような商品があった

「ミニスナックゴールド」をもうひと回り小さくしたパンが3つ入っている。元の「ミニスナックゴールド」はミニとつくが大きく、すた丼と同じ世界の食べ物だ(すた丼は小盛りが通常サイズ)。

ちなみに「ミニスナックゴールド」は存在するが、ミニがついてない「スナックゴールド」はない。
それについては山崎製パンのサイトに説明がある。(スナックパン界の金メダル!?ミニスナックゴールドの“ビッグ”な歴史
こういうことらしい
① 関東で「スナックゴールド」発売
② 関西でひと回り小さくした「ミニスナックゴールド」発売
③ 全国的に関東の大きいサイズに統一する
④ でも名前だけ関西の名前にする(なぜ?)

さらに、ミニスナックゴールドは関東と関西で巻き方が逆とある。本当に?
気になったので大阪在住のスズキナオさんに買って写真を撮ってもらった。

本当だ!右は私が世田谷区内で買ったミニスナックゴールド
しつこく向きを書いておきます

スナックゴールドの写真を集めて分水嶺がどこにあるのかを調べたくなった。 私はそのうち調べるだろう。

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パンが無限になる

いろんなヤマザキのお店に行ってみて行ってみてわかったのは、どこのお店にも初めて見るものがあるということだ。コレクター気分で訪れるものとしては喜びもあるが無力感も感じる。これは、相当先は長い。 

歌舞伎町のデイリーヤマザキでは新宿あんぱんがあった

焼印シリーズについてはロケットニュースのこの記事が詳しい

【小さな冒険】スタンプラリー感覚で「デイリーヤマザキ」のご当地あんぱんを9店舗買い回ったら楽しかった! 

ヤマザキ名物ラップでくるんだパンもさまざまな種類がある

東証プライム上場の大企業とは思えない手作り感

商店街の個人商店のようだ。しかし今回、もっと驚くものがあった。 

下北沢で見つけた大福。桶のような容器に並んでいて言うとおばちゃんが袋に入れてくれる​​​​​

さすがにこれは違うだろうと思って手作りなのか聞いたら、「違うよ、パン屋さんが持ってきてくれるんだよ」とのことだった。

「大手企業にはできない手作り感あふれる」という常套句を真っ向から打ち破る大福。これがうまくて笑う。


集めているのは点ではない

ヤマザキのパンはどれも柔らかい。そして日持ちがする。甘い、大きい。

いいことばかりだ。

堅くておいしいとか、美味しいけど小さいとかそういうエクスキューズがひとつもない。さらに、だ。お皿がもらえて西日本と東日本で渦の向きが違うというエンタメ性もある。

オーソドックスであることの大事さを差異化の陥穽に陥った我々に突きつけているようだ。

なぜ僕はカンブリア宮殿の村上龍のあとがきみたいなことを書いているのか分からないが、いまのところ皿2枚分です。

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