8時間かかる広さ
で、来た。うわさのホームセンターとは、ジョイフル本田 千葉ニュータウン店だ。北総線の印西牧の原駅より徒歩15分。
矢印の白いテント、あそこでまだ半分である
広い。めちゃくちゃ広い。建物や車があるので地平線こそ見えなかったが、小雨の振るなか、遠景がかすむ程度には広かった。
敷地面積は東京ドーム3.6個分。関西の方にもわかりやすくいうと、ひらかたパークよりちょっと大きいくらいである。
相対的に自分の存在が小さく感じられ、「壮大な冒険の旅に出かける」気分になる(左がライター爲房さん、右が筆者。)
この日は僕と爲房さんにくわえ、ライターのネッシーあやこさんも同行。
取材では広報担当の方に店内を案内してもらったのだが、ひととおりざっと見るだけでたっぷり8時間かかった。気になるものをかなり我慢してのそれだ。じっくり見れば余裕で2泊3日は楽しめる物量である。
広大な敷地を移動するため、動く歩道も完備されている。はしゃいで乗ってそのまま一人だけ流れていく爲房さん
商品もでかい
広さを伝えたいあまりつい面積の話ばかりしてしまったが、ただ広大なわけではない。店が広いということは、つまりこういうことだ
・商品ジャンルが幅広い
・同じジャンルの商品でも種類が多い
・見たことないようなでかい商品がある
2番目までは想像の範疇だと思うが、問題は3番目。例えばこんなのがある。
4mくらいありそうな脚立
1mくらいある結束バンド
(参考)家にあった普通の結束バンド
ビニールハウスの骨組み
水が1トン入るポリタンク。水道代が気になるレベル
このコンテナは1200リットル入る。水なら1.2トン。
単位が違う。アメリカのホームデポみたいだ。アメリカとの違いは、大きいのだけじゃなく、ちゃんと小さいものもあるところ。
5mmのネジもちゃんとある(アメリカにもあるか)
とにかくサイズ展開が幅広いのだ。あーこれいつも行くホームセンターにもあるね、という品々が、それに加えて2サイズくらい大きいのまである。
殺虫剤のボトルがずっしり重く、ダンベル代わりになりそう
セット品も大きい。35mのトイレットペーパーが18個入ったパックがさらに3パック。約2km!(1890m)
大きいのは商品だけではなくて、それに伴っていろんな設備もでかい。
例えば、インテリアコーナーにあるじゅうたんを切ってくれるコーナー。ホームセンターでは割とよく見かける設備だと思うが、こんなのは見たことないはずだ。
上で20人くらいの宴会できそう
工具も相応に大きく、4mの金尺があった
こんなところで切るようなサイズのじゅうたんは人力では持ち上げられない。それを持ち上げるための器具がある!
人力の限界を超えてでも大きいものに挑む、という気概を感じさせる設備である。
続いてこの部屋もでかい。
木材を買った後に切ってもらう工作室。この敷地でコンビニなら4件くらい建ちそう
他にも資材売り場の、鉄骨など重量品の多いコーナーにはクレーンがある。ここでも「人力の限界などに店の邪魔はさせん」という強さを感じる。
全然ピントが合ってないにもかかわらず爲房さんの目が輝いているのがわかる1枚
買ったものを入れておくだけのコインロッカーまで、人が入れるサイズである。
このサイズで無料!
無料コインロッカーがでかい。今まで思いつかなかったタイプの斬新なお得感を見せつけてくる。
建物が買える
大物といえば、個人的にグッと来たのは、建物が買えることだ。建物といっても建売住宅とかではなく、ログハウス。キットになっていて、ここで材料を購入し自分で組み立てることができる。(組み立て込みで注文も可)
外観……が写真に入りきってなくてすみません。中に入ると
カフェ経営のシミュレーションを始める爲房さん
ロフト付きのモデルも!
こっちはログハウスではないけど、設置するだけの小屋
後者は普通に考えたら物置なんだろうけど、これを自宅の庭に置くことを想像すると夢に溢れすぎていて、「物置」の一言では片付けられないものがあった。むしろアネックスと呼びたい。それを見越したかのように、ディスプレイとして書斎風や、子供部屋風の内装が作ってあったりする。いい小屋に財布の紐がゆるんでいく体験、ほかのお店ではありえない。(土地がないので購入は思いとどまることができた)
で、これだけでは終わらない。ジョイフル本田で建物を手に入れるには、さらにもう一つの選択肢がある。それがジョイパネだ。
こういうパネル。木の板の四辺に枠がついている
このパネルの枠部分をボルトでつなげていくことによって、構造物が作れる。
こういう小屋が!
さらにウッドデッキなんかも同様にパーツ化されていて、組み合わせてDIYすることができる。
DIYと言われて想像する範疇を超えてる
ログハウスを建てるか、小屋を買って置くか、自分で作るか。「庭に小屋を設置したい」と思ったときに、選択肢が3通りある店、それがジョイフル本田なのである。
ネッシーさんのおすすめ・ディスプレイがすごい
さて、店のスケールのでかさについてはもう十分伝わったのではないかと思う。ここからはもうちょっと違う切り口で、一緒に行ったネッシーさん、爲房さんのお気に入りをご紹介していきたい。
まずはネッシーさんのお気に入り。店内のいろんなところに、ディスプレーとして巨大な商品オブジェが設置されている。
洗剤。「触りたくなりますよね?」と同意を求めるそぶりを見せつつ一人で駆け寄っていくネッシーさん
シャンプーも触る、そしてこの笑み
包丁コーナーにはマグロ
ボルトはちゃんと螺旋になっているし、ナットにもちゃんと溝が切ってある!
ネッシーさんの一押しの延長コード。コンセント周りの造作!!
こんなものも。1回転がすだけで廊下全部カバーできそう
電材コーナーの電柱。電柱は作りもので、金具類は実際の商品を使用している
極めつけがこの靴。汚れ具合から紐の先のほつれまで、そこまでやるかという再現度
案内してくれた広報担当の方によると、こういうのが吊るしてあると売り場がすぐわかって便利だから、とのこと。それはもっともなのだが、それにしてもこのクオリティまでやる必要があったのか。
これらはすべて資材館スタッフの方の手作り。ホームセンターの店員さんというのはただの販売員ではなく、同時に職人であるというのを見せつけられる。
感動に勢いがついてしまい、ただ文字がでかいだけで感無量のネッシーさん
体験コーナーがすごい
続いて僕が気になったところなのだが、ディスプレーだけでなく体験コーナーが異常に充実している。
トイレットペーパーの肌触りを体験できる
包丁の試し切り
ケルヒャー(高圧洗浄機)の放水体験!
これらは僕らが取材だから特別扱いしてもらってるわけではない。すべて常設されているのだ。なかでも、圧倒されたのがこちら。
勝手に「シャンプー回廊」と呼んでいる
通路の両端に彫像のように何かが並んでいて、せっかくなら床にレッドカーペットを敷いてほしいシチュエーションだ。これらの彫像っぽいものは、14台ものシャンプー棚。ここではその中に設置された約70種類のシャンプーが、すべて「試し嗅ぎ」できる。
シャンプーの「試し嗅ぎ」。決して全くなかった発想ではないが、この規模で実現されると圧倒的。あまりのインパクトに、あとで集めた取材写真を見ると3人ともここでほぼ同じ写真を撮影していた。
爲房さんのおすすめ・木材がやばい
参加ライター全員工作好きということで、今回の訪問の目玉はなんといっても資材コーナーだ。責任者の竹内さんに重点的に案内していただいた。
竹内さん。マグ力について説明してくれているところ
「マグ力(りょく)」というのは、メジャーの先端の爪が金属に張り付く磁力の強さである。考えたこともなかった概念。
そしてこの竹内さんが熱かった。もともと木材担当だったということもあり、木材について話し出すと止まらないのだ。
ふだんは「木」としか認識していない木材だが、もちろん全部違う
木材には木の種類、それから等級、目の向き(板目(いため)、柾目(まさめ))、国産・輸入、さらに目が詰まってるかどうかなど、いろんな要素がある。竹内さん一押しの木材はこれ
ウェスタンレッドシーダー
丈夫で耐用年数が長いわりに加工もしやすい。端的にいって「最高」である。
ほかにも竹内さんは本当に木材についてしゃべり始めたら止まらず、僕らは短時間のうちにすごい情報量をぎゅうぎゅうに詰め込まれた。
・野外使用のイチ押しはウェスタンレッドシーダー。耐久性抜群。次点でセランカンバツ。耐久性はあるが硬すぎて釘が打ちづらい!
・木材は育った年数で持ちが決まる。20年かけて育った木は20年持つといわれる
・木目の間隔が狭い材はゆっくり育った木であり、つまり丈夫。
・国産材より輸入材のほうが品質がいい場合も。日本は森が斜面(山)なので斜めに生えて上に伸びるため、木が途中で曲がる。大陸は平地に生えて上に伸びるので木がまっすぐ伸びる。
・国産材で断トツで人気はヒノキ。「ヒノキだから」というだけの理由でバンバン売れる。日本人のヒノキ愛!
・天然乾燥と、窯を使った人工乾燥のものがある。もちろん天然乾燥のほうがいい(ひび割れが少ない、色が自然)
・外が割れている木材をあえて選ぶ人もいる。外が割れていないものは中が割れている可能性があるため
・木目の向きは切り方により板目と柾目がある。柾目のほうがいい。
年輪の間隔が詰まっている方がいい
板目と柾目
手のひらで木材をなでつつ「これめちゃくちゃいいな~」とほれぼれしたのち、値段を見て「えっこんな安いの!?」と驚く竹内さん。爲房さんいわく、この日いちばん印象的だった瞬間である。
レンガの仕入れ
もう一つ、僕がほほうと思ったのが、レンガ。
右下に注目
上の写真の右下に映っている、ちょっとずんぐりしたレンガ。あれは溶鉱炉に使われていたものだそうだ。「溶鉱炉」。場所を表すあらゆる単語のうち3番目くらいにインパクトがある。ほかにも
真ん中の青いPOPがついているレンガ
写真だと見にくいと思うけど、「ベトナムの街の建材店で発見したおよそ50年前のレンガ」と書いてある。
正直レンガが再利用されるものだとは知らなかったので、売られてるのは全部大量生産品だと思っていた。実ははるばる船に乗って、アジアやらヨーロッパやらからやってきたものもある。
レンガ界には、こういうアンティーク品がごろごろしているらしいのだ。そういうのはバイヤーの方がわざわざ海外に行って探し、買い付けてくるらしい。
イギリスのビンテージレンガだけで、フェアが開催できるほどのバリエーションがある
二人のおすすめ・パンがうまい
ここであえてパン屋を紹介するのか、と思われるかもしれないが、これこそがジョイフル本田の底力を感じさせてくれる重要な物件なのだ。
このジョイフル本田 千葉ニュータウン店、広大すぎるため、中にフードコートやいくつかのレストランがある。そのうちのひとつがこの、パン工房クーロンヌ。
この建物はかつてジョイフル本田の事務所として使われていたもので、それをスタッフが自分たちで改装して今の店になったという。
つまり、「クーロンヌ」の存在自体がDIY精神のショーケースでもあるのだ。
これがか。ホームセンターの底力!という感じがする
パンはもちろんおいしくて、ネッシーさんの写真を見たらパンの断面が数十枚、延々続いていた
店員さんによると人気メニューは塩パン。今回のようにホームセンターをガッツリ見たい場合のおすすめは、スタミナ豊富なバーガー系だそうです。
こちらにせり出してくるようなバーガーたち。圧がすごい
その他のたまらなさ
それでですね、あの、ここまで書いてきて、急に気がついたんですよ。あ、この原稿、永遠に終わんないわ、ということに。なぜなら無限に書くことがあるから。なんたって8時間いたから。
ここからは急にダイジェストで、印象に残ったところをご説明します。
一面のお筆畑
リフォームコーナー。正面にあるのは全部お風呂。(この3倍くらいある)
同じくリフォームコーナーには本格的なモデルルームがある。茶室!
趣味コーナーには本気すぎる天体望遠鏡が。「売れるんですか?」と聞くと「ここまで取揃えてることが大事なんです!」とのこと
用紙コーナーは景色としても圧巻
どの通行止め看板を買うか本気で迷う爲房さん。このあとせっかく思いとどまったのに、あとでネッシーさんが「もう1回見に行きましょう」とか言ってた
一方ネッシーさんが本気で買おうとしてたのはこれ。普通あんまり選択の自由がない商品であるが、こんなにも!
全部コンプリートしたくなる野菜袋コーナー
こんなに小さい突っ張り棒ある!?
持ち放題ぶりにもほどがある取手コーナー
長さの違うベルトがアホほどある(口汚くて恐縮ですがそれ以外の形容詞がない!)
ペットの種類の多さも動物園感覚である
世の中にあるネットの種類に思いをはせずにいられない
すごい溶接用マスク。電子制御になっており、普段は向こうの見えるガラス、強い光に反応して瞬時に遮光マスクになる
これなんだと思います?目です。バードカービング(鳥の木彫り)に使う鳥の目。
何でもありすぎて地ビールまで作り始めた。ジョイフル本田宇都宮店で作ってるそうです。
もう品揃えが多すぎて、最初は「すごい!」「圧倒的!」なのだが、見つづけるうちに「まだあるのかよ」「こんなに要る!?」みたいなツッコミ視点になってきてしまう。しかしそれらがすべてが、「必要な人には大助かり」「好きな人にはたまらない」なラインナップなのだ。
次は宿泊施設を!!
冒頭で「八百万の神のうち二百万くらいはホームセンターにいるのでは」と書いたが、一般的なホームセンターの商品数は(規模によるけど)5万くらい、ジョイフル本田千葉ニュータウン店の商品数は30万を超えるそうだ。三十万の神(実数)。
コインランドリーや生鮮品スーパーなどほんとに何でもあるこの店だが、僕が唯一足りないなと思ったのは、宿泊施設である。絶対に1日では見切れないので、ディズニーランドみたいに直営のホテルを併設してほしいと思う。
それまでは外部のホテルを予約して、2泊3日で行こう。