缶の中のビールが急に心もとなくなるあの瞬間
今回世に問いたいのは、おおむね
「家で缶ビールを飲んでると、急に中身の量が少なく感じる瞬間って、来ない?」
ということ一つである。
なんだか急に「スカッ」っとなるだろう、缶ビールって。それまではそこそこあった内容量が急になくなったように感じる。持ち上げたときに「スカッ」っとくる。
あの謎の感覚は一体何なのか、そして、あの感覚を面白がることはできないかさぐったのがこの記事だ。
※お酒を中心に缶飲料ならなににでもあてはまることだと思うのですが、私の場合が缶ビールなので、ここから先は「缶ビール」で話を進めます。適宜、共感のできる飲料に変換してお読みください。
残量が見えない缶だからこその話
「スカッ」は、いつ到来するのか
そもそも今回の話は友人と私の総勢3人で最近の酒量について話している際に出たのだった。
3人とも30代なかば、健康のためにも家計のためにもできるだけお酒を控えたい、でもせっかくお酒好きに育ったのだから禁酒まではせず細く長く飲んで暮したいというメンバーである。
そんななかで盛り上がったのが本件だったのだ。缶のまま飲む派も、グラスにうつして飲む派も一様に「スカッ」を感じていた。3人、全員が全員あの「スカッ」が急にくることについてなんとなくではあるが、もやっとしていたのである。
写真がぶれるくらい「スカッ」とするかというと大げさかもしれないが、でも、おっ、くらいは思う
では、そのスカッはいつ到来するのか。まずはそこから確かめてみよう。
ビールとおつまみの背後に神妙にたたずむスケール
大事なのは、いつもどおり意識せずに飲み進めること。本読んだり、テレビみたりしながらどうぞ
この計量作戦について「おお、私もやってみたい」という稀有な方のためにニッチなアドバイスをさしあげると、いつもどおり「スカッ」を感じるにはけして身構えてはいけない。
一口飲むたびに計量もしてみたのだが、そうすると重さが気になりすぎて「スカッ」はまだか、「スカッ」はまだかとばかり前のめりになってしまって全然いつもの感覚で「スカッ」を感じられなかったのだ。
どうやら「スカッ」はいわば風のようなものらしい。風よ、吹け! と身構えて吹かれるものではない。自然に身をゆだねたゆたうようにすごすうちに髪の毛が揺れて、あら、いい風ねと思うくらいの 繊細な感触なようだ。
1日目:130g
2日目:124g
3日目:127g
4日目:135g
100グラム前後で「スカッ」とする
撮影することを考え、普段よりもいいビールを飲んだことをここに告白しつつ結果だ。私の場合、
・残り120グラム台前半から130グラム台後半(缶の重さ20gを入れて)
まで飲み進めたくらいで「スカッ」を感じていることが分かった。前述で共感しあった友人に加え夫もお酒が好きなので量ってみてもらったのだが、だいたい
・残り100グラム前後(95グラム~105グラムくらい)
で「スカッ」を感じたという報告であった。たった4例のみでの話だが、私は一般よりも早く「スカッ」を感じていたようだ。
夫も100グラム前後。結婚して8年だが、私とは意外に開きがあった
「スカッ」とする直前の、まだ頼もしい缶ビール
さて、この「スカッ」だが、ある意味実態をもった肩透かし、のようなものだと思う。
あれっ、まだあると思ってたのにもうこれしかないのかー。今日の晩酌はそろそろ終了だ。明日も仕事だし寝なくちゃなー。
そんな思いがこの「スカッ」には詰まっている。今日のおたのしみ時間の終了の合図なのだ。
ということは急に「スカッ」がやってくる前のまだ少し重さの残った缶ビールには満タンの缶ビール以上に象徴的に頼もしい重量感があるのではないか。
私の場合135グラムを下回ってくると「スカッ」を感じる。ならば、それよりももうちょっとだけ重い缶ビールがあれば頼もしさを感じられるはずだ。
つまり、こういうことである。
カラのビールの缶に、160グラムの水をそそぎます
ビールではなく、水なんだけど
一気に話がややこしくなったな、という向きもあろうかと思うのだが、この頼もしい缶ビール、実際にやってみたら妙にリアルで面白かったのだ。
「スカッ」という重さまで減ったビールの奥に控える、まだ頼もしい重量感の缶ビール(中身は水)
この重さは…頼もしい!(中身は水)
うおっまだ入ってる入ってる! 思わず笑う(中身は水)
この160グラムの水入り缶ビールは、通常のちゃんと350ミリリットルフルに入った状態よりも頼もしく感じた。本当だ。本当なのだ。
中身が飲めれば実用度が上がるのでは
人差し指と中指を交差させて交互に指の腹をさわるとなんか変な感じがする、という感覚遊びがあるが、水の缶ビールにはちょっとそんな感じがあった。
ただ、実用性はない。全くない。
やっていることとしては「微量の水を持ったり置いたりしている」である(別の缶でも作った)
ではこれを水ではなく別の飲み物に変えたらどうだろう。
頼もしい上に水ではなくちゃんと味がついてる。最高じゃないか。
160グラムに達するまで、ノンアルコールビールを入れてみた
頼もしい重量のノンアルコール缶ビール、である。
……。
…………。
当然だが、味はノンアルコールビールだった。すごく普通のことを言うと、ビールだと思って飲んだので悲しい。
じゃあ嬉しいものを入れておいたらいいのではと思い今度はジンジャエールを160グラムまで入れてみた。
重さを楽しみながら、ビールと一緒に飲もう
……。
…………。
これは、ただのシャンディガフ(ビールとジンジャエールのカクテル)だな。
さては、なんか違うな
これまで「スカッ」とする感覚や、「スカッ」とする直前の重さの頼もしい感覚、と感覚の話で進めてきたのに水以外の飲み物を入れることで全く別の話になってしまった。
違う、こういうことじゃないのだ。
完全に迷走して数日間ずっと空き缶にいろいろなものを入れたり出したりしていた。柿ピーとか
柿ピーは160グラムまで缶に入れるのに思った以上の容量を必用とし、そして食べようとするとこれまた思った以上に出しにくかった。
本当に今はどうでもいい話なのですが、パッケージに比率が書いてあって、おっ! と思いました
生卵2個に醤油とお酢を入れて混ぜたものは、それだけでは160グラムに達さずいよいよ何をやっているのだというだけの行動であった。
メモを見たら「濃い酒を飲むと思って卵を飲むかんじ」と書いてある。誰かに謝りたくなる分からなさである。
生卵2個を飲み下すのは無理で、卵かけご飯にした
正解は、保冷材だった
ただ私は160グラムの重さのあるビールの缶が「スカッ」とせず頼もしく感じる、というあの感覚を、面白いで終わらせずに実用化しようと思っただけなのだ。
しかし行き着いたのは「ビールの缶から卵が出てくるのは、怖い」である。
なぜこんなことに。もう一度「感覚」というところに戻ろう。
そこで入れたのが、保冷材
そこで入れたのが、保冷材だった。
ビールといえば冷たく飲むもの。その感じが水よりも出せるはずだ。通常冷凍庫でかためてから使う保冷剤だが、冷蔵庫で冷やした状態でもある程度冷たさは持つ。
中くらいの保冷材がぴったり入った
これがすごかった。缶が汗をかく感じも完全にビールを再現している。本当に飲み途中のビールだ。
もしかして、これがあればあとは水と柿ピーで十分晩酌になるんじゃないか。
のうマスター、わしゃビールが飲みたかったんじゃなくてビールを言い訳に柿ピーが食べたかっただけなんじゃないかのう、それならこれで十分じゃ
細く長くビールを飲んで暮したいとは思っていたが、もしこれで十分ならそれに越したことはない。
このまま本当に晩酌にビールが必用なくなるようなことになった際は、またお知らせします。
酒を飲むのも気持ちが大事
先日はじめてJリーグの試合を観にいったのだが、最後の最後、酔っ払ったらしいサポーターのおじさんが点差をつけられて負けそうなチームをでかい声で叱咤しはじめた。間あいだに挟んでいたのが「気持ち」という言葉だ。
「気持ちがないんだよ!」
「もう気持ちだけでいいから見せてくれよ!」
「おれたちが待ってるのは気持ちなんだよ!」
大事なのは気持ちとはよく言うが、私が体育会系文化と遠く生きてきたこともあってここまで気持ちの価値の高さの力説を目の当たりにしたのは初めてだった。
そうか、気持ちか。
ならばビールも気持ちがあればいいのではないか。気持ちを大切にビールを飲んでみよう。そう思って書いた記事でありました。