特集 2014年8月13日

蓮如の聖地に県境を見に行く

県境上にて
県境上にて
市街地を貫く県境は珍しい。

とはいうものの、都市部にはそこそこあるので、そんなに珍しくないような気がするけれど、全国の県境の距離から考えると珍しいのだ。(断言)

そんな珍しい町中の県境地帯でかつ、蓮如の聖地だという稀有な場所が福井と石川の間にある。

これはぜひ行きたい。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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「蓮如の聖地! しかも県境!」にヒキはあるのか?

その県境地帯は吉崎という町だ。
より大きな地図で 吉崎の位置 を表示
福井県側はあわら市吉崎。石川県側は加賀市吉崎町と、二つの県に別れて「吉崎」という町が存在している。

特にこの吉崎の町の中心街の混みいった県境を見ていると、地図を眺めるだけでは満足できない気持ちがわきあがってくる。
より大きな地図で 吉崎周辺 を表示
「隣の家が隣の県」という血圧のあがりそうな県境の様子もみてみたいし、戦国時代に信長と互角に渡り合うほどの力をもっていた本願寺の本拠地跡に行って往時に思いを馳せたい。

ただ、事前にデイリーポータルZ編集部に「蓮如の聖地でかつ県境地帯なんですよ!」とその魅力を説いたのだが、来た返事は「すみません!笑っちゃうくらい魅力わかんないっす!」であった。

にも関わらず「ぜひ取材に行ってください!」と送り出してくれたデイリーポータルZ編集部の懐の深さよ。

雨が降ってきた……

吉崎は、公共交通機関では少し行きづらい場所にあるため、金沢でバイクを借り、南へ向かう。
これから向かう先にはどう見ても雨降らしそうな雲
これから向かう先にはどう見ても雨降らしそうな雲
この日の加賀地方は雨が降ったりやんだりで、実にスクーターに厳しい天候であった。
やっぱり雨降ってきた!
やっぱり雨降ってきた!
途中、コンビニで買ったビニールのカッパのサイズが全く合わず、袖口のゴムが、血圧計ってるときかよってぐらいきつく締るあげるため、手先がピリピリしだした。
手がしびれるぞ! なんだこれ
手がしびれるぞ! なんだこれ
さすがにこのままうっ血して指先が壊死したらいやなのでカッパを脱ぐ。しかし、脱ぐと雨が降ってくる、着る、脱ぐ……そんなことを繰り返しつつ吉崎を目指す。

このあと、県境に到着したときの感動をより強調するために、こうやって往路の苦労話を入れている。今しばらくお付き合い願いたい。

みのがしかける県境

加賀市に入り、田園風景と集落を交互に通り抜けつつしばらく行くと……。
たしかこのまままっすぐでいいはず……
たしかこのまままっすぐでいいはず……
……吉崎
……吉崎
あー、ここだ!

思わずそのまま通り過ぎようとしてしまったが、急いでバイクを停め、国境……じゃなかった、県境の場所まで駆け寄る。
ここだ!
ここだ!
ぼくの目にはこうみえる
ぼくの目にはこうみえる
ちょうど、石川、福井の県境あたりで、道路のアスファルトの質が変わっているのがわかる。
アスファルトのゴチャゴチャぶりが県境っぽい
アスファルトのゴチャゴチャぶりが県境っぽい
国道でも都道府県が管理している道路もあるらしく、県境で道路の模様やアスファルトの質が変わってるということはわりとよくある。以前、練馬と埼玉の境目にそれを見に行ったこともある(こちら)。

目印のない県境が多い中、お役所仕事の結果とはいえ、こういう形で県境が目に見えるのは面白いし、我々県境マニアにとっては助かる(目印になるから)。
とりあえず、県境をまたいで記念写真
とりあえず、県境をまたいで記念写真
きたぞー
きたぞー
この、なんの代わり映えのしない境目から、石川県、福井県がそれぞれ広大に広がっているのだ……と考えるとちょっとロマンを感じませんか? ぼくは感じますッ!(断言)
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住宅街の中の境目はどうなってるかな~

さて、地図を確認すると、石川・福井の境界線は、記念写真を撮った国道305号から住宅街の中に向かって入り込み、住宅街をうねるようにして突き抜け、日本海に抜けている。
赤い線が県境、右が石川県、左が福井県
赤い線が県境、右が石川県、左が福井県
自動車のナンバーも福井と石川が混在している
自動車のナンバーも福井と石川が混在している
このお宅一軒分だけ、なぜか石川県側にはみ出している
このお宅一軒分だけ、なぜか石川県側にはみ出している
県境を描き入れるとこんな感じ
県境を描き入れるとこんな感じ
こんなほそーい裏路地も実は……
こんなほそーい裏路地も実は……
県境なのか!
県境なのか!
記念写真!
記念写真!
吉崎の住宅街の中は、とくに県境を売りにしてるわけでもないので、なんの目印もなく、一見そっけない県境ではある。

しかし、よく見ると石川県に一軒だけ飛び出した福井県のお宅や、裏路地が実は県境といった、サプライズ県境があり、けっこう楽しめた。
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学校の先生だけ言葉が違う

ここで、近所にある「吉崎寺」のおばちゃんに、この県境地帯について話を聞いてみた。

ちなみに、吉崎寺は、戦国時代、比叡山の山法師に迫害された蓮如が、近江(滋賀県)から越前(福井)吉崎に落ち延びてきて、最初に布教の拠点とした寺だ。
蓮如上人の聖地、吉崎寺
蓮如上人の聖地、吉崎寺
――よく聞かれると思うんですけど、お隣同士で県が違って、なにか不都合はないですか?
「いや、とくにないねぇ」

――ゴミ回収やら選挙の区割りはもちろん隣同士でも県が違ってたら違うんですよね
「そうだねえ、でも中学校は石川の方の中学校に越境で通っとるでぇ」

――え、ということは、同じクラスに福井県民と石川県民が居るってことですか?
「そうなるねえ、むかしは吉崎にも中学校があったけど、なくなったでぇ」

「この辺り(吉崎)は加賀の方から嫁にきた人が多かった、言葉もちょっと福井の方とは違って、むかしは小学校は先生だけ言葉が違うって言われよりましたなぁ」


吉崎の小学校には福井県全土から先生が赴任してくるため、言葉がちょっと違う吉崎では、逆に先生だけが言葉が違うという逆転現象が起きていたらしい。

県境までしか除雪しない

おばちゃんは話終わると、わざわざ県境を案内してくれた。

県境はさっきひと通り見たけれど、ここは初めて来たような顔をしておばちゃんについていくことにした。
ちょうどこのへんが県境ですわー
ちょうどこのへんが県境ですわー
冬、国道に雪が積もると、ちょうど県境のところまでしか除雪しないらしい。

石川県の除雪車は、県境のところまで除雪すると、福井県内の吉崎寺の駐車場まで来てUターンして帰っていくのだという。

ただ、だからといって住民のひとは怒ったりしない。ちょうど境目だからねー。ぐらいにしか思ってないようだ。

見習いたいおおらかさだ。

「県境の館」計画

おばちゃんによると近々「県境の館」という施設を建設する予定があるという。

「県境の館」なんて言われると聞き捨てならない。どんな施設か聞いてみたところ、吉崎の観光案内や歴史や文化を紹介するための施設を、あわら市と加賀市が共同で作る計画らしい。

惜しい、それができてから来ればよかった……。
この辺りに県境の館を作るらしい
この辺りに県境の館を作るらしい

吉崎御坊跡になにがあるのか?

さて、せっかく吉崎に来たので、県境もほどほどにして吉崎御坊に登ってみたい。
東西本願寺の別院が立ち並ぶ
東西本願寺の別院が立ち並ぶ
写真が天国みたいになってる
写真が天国みたいになってる
ここか……
ここか……
吉崎御坊は、目の前を北潟湖、北の方を大聖寺川に守られてた小高い丘の上にある。

これ、完全に城の縄張りそのままだ。いわゆる天然の要塞ってやつだこれ。
吉崎御坊跡から眺めた北潟湖
吉崎御坊跡から眺めた北潟湖
当時、門徒(浄土真宗の信者)の数が増えるにしたがって様々な勢力から攻撃を受けていた本願寺らしく、敵が攻めてきても守りやすい場所に寺を作ったなと、感心してしまう。
蓮如上人のでかい銅像
蓮如上人のでかい銅像
吉崎御坊跡にはぼく以外誰もいなかった。
本堂跡は石柱のみ
本堂跡は石柱のみ
本堂があったとされる場所は、石柱が建っているだけで特になにもない。
なぜこの模様しようとおもったのか?
なぜこの模様しようとおもったのか?
銅像前の手水になぜかカニが彫り込んであった。水辺の生き物だからというのはわかるけど、でもなぜカニなのか?

ひなびた感じの観光地は謎が多い

いくら蓮如の聖地だ県境だといっても、吉崎は観光地としての知名度が今ひとつというところはいなめない。


ただ、実際きてみるとおもしろい物件がおおい。

今回紹介しきれなかったが「嫁威し肉付き面」の伝説や、その伝説に頼りきった観光施設などは近々記事で紹介したいと思う。
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