コンビニおにぎり見比べ
まず一番差がわかりやすそうな、見比べからいってみたい。人間は嗅覚や聴覚が弱い代わりに視覚を発達させた生き物だと聞いたことがある。食べ比べ以上にいろんな情報が見えてきてもおかしくはない。
今回の食べ以外比べ対象は、ツナマヨネーズおにぎりだ。(理由は好きだから)。
上段左から、サークルKサンクス、セブンイレブン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ローソン。
を、見ます。
商品名を見ると、4社がシーチキンの名を冠しており、ツナにシーチキンを使用していることがわかる。「ツナ」表記なのはセブンイレブンのみ。そのほかパッケージの色味や注意書き……などなど色々気づくところはあるが、今回は食べ比べ企画と条件を合わせるために、パッケージは対象外としよう。
すべてのおにぎりを取り出した。
上段左から、サークルKサンクス、セブンイレブン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ローソン。
同じだ。取り違えてしまうと全く判別できないレベルで、同じである。
なるほど…
かなりじっくり見比べてみて、ひとつめの比べポイントを発見した。海苔の点線(ミシン目?)の有無である。よく見ると、サークルKサンクス、そしてデイリーヤマザキの2つには、海苔の正面に点線が現れている。
サークルKサンクス
デイリーヤマザキ
ミシン目がない例(ローソン)
調べてみると、小さい穴を開けて噛み切りやすいようになっているとのことだ。なるほど、よく考えられている。ほかにも、コンビニおにぎりの見た目にはこんな違いがある。
こんな…
ええと…
同じだ
ないのだ。各社のおにぎり、驚くほど見た目の違いがない。サイズも同じなら形状も同じ、色合いの違いもない。全部同じに見える。
「コンビニおにぎり見比べ」の結果
比較ポイントがほぼないので、平たく言うと「普通である」ということを一生懸命言い回しを変えて書いてみた。また、唯一の差別化ポイントであるために「海苔にミシン目が付いている」というかなりどうでもいい情報が大々的にフィーチャーされてしまった。おかげでかなり中身のないスカスカなレビューである。
一番わかりやすい差が出る予定だった「コンビニおにぎり見比べ」、惨敗である。これは先が思いやられるぞ…。
コンビニおにぎり嗅ぎ比べ
次は嗅覚だ。5つのおにぎりを嗅ぎ比べてみた。
かっこよく整列させたおにぎり
わ、もしかして全部同じか…。
サークルKサンクス、海苔の香り。セブンイレブン、海苔の香り。どこまで行っても、海苔の香り。こりゃまたダメか…と思われたのだが…。
あ、
ファミリーマートのおにぎりを鼻に近づけた瞬間、いままでとは明らかに違う香りが漂った。なんていうか、ちょっと香ばしいような香りが混ざる。ついに「比べ」の門が開いた!
そして続いてローソン。こちらはもっと形容しづらいのだが、なんというか「うまみ」を予感させる匂いがするのだ。なんだこれは…。
実はこの香りの正体は記事の後半で明らかになるのだが、ひとまずレビューのほうを。
「コンビニおにぎり嗅ぎ比べ」結果
前半3つの苦しさときたら。見比べも苦しかったがそれ以上。3つ目が特にひどい。
最後、ローソンのレビューは普通に嗅ぎ比べできたはずなのだが、これは単純に筆者の表現力のなさが露呈しており恥ずかしい。すいません。
コンビニおにぎり触り比べ
指一本で優しく触ってみる
二本の指でグイグイ押してみる
うん、確かに全部同じだ。
いやー、まいっちゃったな…。
「コンビニおにぎり触り比べ」結果
ほかのおにぎりが比較対象にならないため、家のごはんとか、加工前の生の海藻とか、全然別ジャンルのものと比べ始めた。そうなるともう、個別のレビューというよりおにぎりの一般論である。
コンビニおにぎり聴き比べ
「コンビニおにぎり聴き比べ」結果
作戦変更
コンビニおにぎり、味覚を使わないと、思った以上に同じであった。なんてこった!
海苔にミシン目が付いてるとか、香りがほんのちょっとだけ香ばしいとか。重箱の隅といわれても反論できない程度の小さな違いしか見つからなかった。
改めて考えるに、味覚を封じられた我々は愚直に別の感覚でレビューするのではなく、それを補う工夫をすべきだったのではないか。
そこで考えたのが、「海苔とご飯を別にする」である。
背徳感のある開け方
海苔を巻くことで、ご飯の特徴がすべて覆われてしまう。それと同時に海苔の方も元の形がわからなくなったり、湿って手触りも変わってしまう。双方ともに損をする仕組みなのだ。
分離して比べてみよう。
巻く前のコンビニおにぎり食べ以外比べ
この状態で比べます
ああ、何という圧倒的な情報量!
解像度が全く違うのだ。アナログテレビが地デジに移行したが如くである。
まず、お米の状態がちがう。
お米が立ってる、というのだろうか。米粒の形がそのまま残っており、型崩れしていないのがこちらだ。(デイリーヤマザキ)
ローソンも互角。綺麗なままの粒が並んでいる
セブンイレブンは部分によってちょっと潰れてしまっている粒が目立った。
くわえて、意外な発見もあった。おにぎりの形だ。のりを巻いた状態では気づかなかったのだが、おにぎりって前後に対象形ではないのだ。
サークルKサンクス。底面が、台形になっている。
製造工程上の都合か、それとも食べやすさ、あるいは見栄えの問題か。パッケージ表面側が細く、原材料とか書いてある面が太くなっているのだ。
デイリーヤマザキも角度はゆるいが台形。
すべてのおにぎりがそうなわけではない。これはローソン。綺麗な長方形だ。
さらにもうひとつ。ツナの露出だ。こういうおにぎりの具って、おにぎりの表面をくぼませて具を入れているのかと思っていたが、いまどきのおにぎりはちゃんとご飯の真ん中に具が入ってるみたいなのだ。そのうえで、それでも表面からツナが顔を出してしまっているおにぎりが二つ。
ファミリーマートはおにぎりの底から。こんにちは。
ローソンはおにぎりの表面から。こんばんは。
で、ここで一つ思い出してほしい。嗅ぎ比べのときに、海苔とは違った香りを放っていた2つのおにぎりのことを。あれがまさに、ファミリーマートとローソンであった。
あのファミリーマートのちょっと香ばしいような香り、そしてローソンの「うまみ」を感じる香り。あのときはかすかでわからなかったが、あれは、ツナとマヨネーズの香りだったのである!
ババーン、複線回収!
とたたみかけたところで、裸おにぎりの見比べ結果です。
「コンビニおにぎり見比べ」の結果(巻く前)
コンビニおにぎりはすごく同じ
最後は(有益かどうかはともかく)かなりレビューらしいレビューになったのではないかと思う。これで「食品レビュー界に五感以外をフィーチャしたい」という目的は果たされたのではないか。
ところで、コンビニおにぎり、思った以上に全部同じであった。海苔のサイズが同じなのは規格なんだろうけど、おにぎり自体のサイズも全く同じなのは、海苔に合わせたからだろうか。三角の角度も全部おなじだし。計算をもとに設計して作られた、工業製品としての側面がきわだった。
その点、ツナが漏れてるのは人間味があってチャーミングだったな。