旅の余らせ時間がこれで万事上手くおさまる
旅をしていると、特に旅の終わりあたりにポッカリと時間があいてしまいぼんやりやりすごすひとときというのがある。
旅慣れた方はこんなときこそが旅の醍醐味と上手にすごすのだろうと思うが、北海道に来るチャンスはそうそうないという私のような方はやはり何か成果らしい成果を得たいと思うだろう。
ようかんパン探しなら、お金もそれほどかからず軽い散歩もできかつ30分あれば十分に見つけられる。お腹がいっぱいだったらパンは持ち帰ってもいい。満点である。
めぼしい観光地はすべて回った。しかし飛行機の時間まですこしある。そんなときにはぜひようかんパンを探すことを強くおすすめしたいと、こう思うわけです(甘党の演説)。
さて、こちらは北海道に本社を置くコンビニチェーンのセイコーマート
PBに「ようかんパン」があるコンビニ
といってやみくもに探しても地元の方でないと意外に見つけられないのがローカルフードというものである。
私が行った限りではたとえばセブンイレブンやローソン、ファミリーマートにサンクスといった全国的に展開しているコンビニにはようかんパンはなかった。
コンビニでようかんパンを買うなら地元北海道の誇るコンビニチェーン「セイコーマート」、おそらくここ一択だ。
プライベートブランドに2種類もようかんパンがある!
2013年7月現在、「にぎわいパン屋通り」という、セイコーマートのパンのプライベートブランドのラインに「ようかんパン(ホイップ&カスタード)」と「ようかんツイスト」の2種が展開されていた。
取り扱うばかりでなく、2種も。なんという頼もしさであろう。
こちらが「ようかんパン(ホイップ&カスタード)」。テクスチャからコーティングがチョコではないのがお分かりいただけるだろうか
パンというよりもスポンジのような水分の少ないパンにカスタードとホイップクリームが入っていた
普通じゃないのに、超普通
甘めのパンに甘さの控えられたカスタードとホイップクリーム。この時点でおいしくないわけがないだろう。
そこへ、さあ、ようかんである。どうだ! と思って食べると、うん。なんといえばいいのだろうか。
「どうでもない?」
のであった。いや、否定的な意味では一切ない。ようかんがそれほど存在感を押すだしてこないのだ。静かに、いる。静けさの中にようかん独特の塩気がきいてくる。
この感じ「普通に美味しい」というのとも「食べたことがないのに懐かしい」というのでもない。なんだろう。
あまりにもピッタリきていて味がこ慣れているので、大きくリアクションできなかった。普通にスルッと受け入れてしまった。
首をかしげながら、こちらが「ようかんツイスト」
ツイストパンに入った切れ目にホイップクリームを挟み、上からようかんでコーディングされている。これがようかんパンのスタンダードのようだ
同じプライベートブランドのラインではあるが、さきほどの「ようかんパン」がサンデリカというメーカーだったのに対し、こちらは日糧製パンというメーカーのもの。
事前にツイッターでようかんパンについての情報を集めていたのだが、日糧製パンはおすすめの声が多く聞かれた。
確かにパンがふんわり軽くてクリームも畳みかけて軽い。ようかんも相変わらず静かである。パン・クリーム・ようかんの3者が主張を抑えて水面下で美味しさを醸造しているようなパンである。
ちなみにようかん部分は張り付いている感じでこのようにぺろりとはがせる。これはようかんパンを食べたことのある方は必ずやる「ようかんパンあるある」だそうだ
最初に掲載した写真のセイコーマートは道庁のはす向かいにあるので観光のついでにも行けます!
さてと。どうですか、飛行機の時間までまだ余裕はありますでしょうか。続いてはベーカリーチェーンのようかんパンです。
ベーカリーチェーンのhokuoもおすすめ
飛行機の時間まではまだある。それにようかんパンのことをもっと知りたい。そう思った旅行者の方へ続いてお勧めしたいのがベーカリーチェーンのhokuoだ。
こちらは札幌駅の地下街の店舗
北欧、といえば全国に展開するベーカリーチェーンだが実は地域ごとに分社化されており扱う商品も違うようだ。
道内の店舗では ようかんぱんパンのオリジナル品「ようかんちゃん」がある。名前からして完全に攻めの姿勢である。
店の一押し品にもなっていた、これが「ようかんちゃん」
中はクリームと、そして粒あん
ようかんというよりあんこが主役
道民の方の情報によると以前はテレビでコマーシャルまで打っていたというこの「ようかんちゃん」。
粒あんファンとしては目がらんらんに輝いてしまうくらい荒くつぶした粒あんがしっかり入っている。
で、食べてみるとこのあんこがぜんぜん甘くないのだ。クリームが甘いので調和が取れていて、あんこは甘さよりも豆の味が迫ってくる。さては相当小豆に自信があるな。
ようかんちゃんは大通り公園で食べた。北海道大満喫すぎてポストカードにして親に送りたい
小豆……さては北海道産か? おのれ食材王国北海道め! とあんこのおいしさに翻弄され、すっかりようかんのことを忘れてしまった。 ようかんだって小豆なのに。
そうなのだ、ようかんパン、ようかんと名前を冠している割には味わいとしてのようかんが意外に静かなのだ。
あんこといえば、3色パン型ながら具が全部「こしあん」というパンを見かけて笑った(これもセイコーマート)
さて、そろそろ飛行機の時間ではないですか。え、帰るのを延期してもう少しようかんパンを探したい。なんと。
では、スーパーに行きますか。
むしろスーパーこそにあるようかんパン
ようかんパンは、そもそもはスーパーの袋パンとして売られていることが多いようだ。
個人の昔ながらの小さなパン屋さんにもあるらしいのだが、今回私は見つけることができなかった。あるとしたらおそらく地元密着系のお店だろう。
今回はさっぽろ駅~すすきの駅あたりのスーパーで探してみよう。
こちらは 北海道・北東北のスーパーチェーン、ラルズ
ラルズのある狸小路では「狸まつり」というイベントが開催中で、アーケードにでかい狸がかかげられていた
真顔である
事前の調査でも「ようかんパンを探すならスーパーへ行くべし」というアドバイスをたくさんいただいた。
袋菓子パンには各社からいろいろな種類のようかんパンが発売されているらしい。
中でも「サンスネーク」と「ロングスワニー」には定評があるとの噂であったが、今回はその「サンスネーク」の方を買うことができた。
「サンスネーク」スネークというのは蛇の意味でいいでしょうか
へびというよりツチノコみたい
ねじりパンにクリームをはさみ、上からようかんをかける構成はセイコーマートの「ようかんツイスト」と同じ
セイコーマートで買った「ようかんツイスト」と概ね作られ方が同じだったので両者はもしや同一商品ではと思ったのだが、「ようかんツイスト」が日糧製パンの商品であったのに対し「サンスネーク」はサンデリカの商品であった。
こまごまと一筋縄ではいかないところがローカルフードらしくて興奮するじゃないか。
味としては、サンスネークの方がクリームがどっしりしているように感じた。
そのほか、ススキノのあの有名なウィスキーの看板の対面にあるイトーヨーカドーにも行ったのだが同じ「サンスネーク」しかあらず
で、この「サンスネーク」。ちょっとした謎があるのだ。
サンスネークのなぞ
この「サンスネーク」私が買ったものはサンデリカという会社の作ったものだった。
のだが、サンスネークといえばもともと山崎製パンの商品だという。ん? サンスネークって商標じゃないのか。
画像検索をすると私が買ったものと全く同じ「サンスネーク」のパッケージで、しかしヤマザキのロゴが入っている写真があるではないか。
たたみかけてこの写真を見てほしい。情報筋からの報告写真だ。
ヤマザキのロゴ…!
3個入りまであるのかという驚きに加え、堂々たる「ヤマザキ」のロゴ。
しらべてみると「サンデリカ」という会社は山崎製パンのグループ会社なのであった。
なーんだ、と思うとともにグループ会社でごぞってようかんパンを発売してるってどれだけようかんパン好きなんだ、北海道! とローカルグルメの奥深さに目をむいた。
目をむきつつ、もう少しパンを買ったので紹介します。
お土産編
コンビニ、ベーカリー、スーパーとめぐった。スキマ時間の観光案内としてはちょっと行き過ぎたかもしれない。飛行機、とっくにテイクオフしちゃったよね。
しかしようかんパンはまだまだ種類があるはずなのだ……。
悔しい思いをしていたところに、さきほど3本入りのサンスネークの写真を提供してくれた助っ人がさらに数種類のパンを紹介してくれた。
当サイトのライター小野さんである。はい、「ようかんちぎり」ってなにそれ知らないやつだ!
ここから先は、北海道からのお土産をもらう気持ちで読み進めていただければと思う(道民のみなさまにおかれましては「こんなことも知らないの!」と驚いていただければ幸いです)。
当サイトの先輩ライターである小野さんは関東在住の方。なのだが、なんという偶然か旅行で札幌に来ていたのだ。
滞在日数も私より俄然長く、私がようかんパンを探していると知って協力してくれたのだ。
提供してもらったコープさっぽろで発見の「ようかんちぎり」
コープさっぽろは私も行きたかったのだが時間的に行かれなかったスーパーであり、多方面で無念をはらしてくれた。
しかもこの「ようかんちぎり」がなかなかの問題作であった。まずでかい。そしてなにかサソリを思わせるルックス
クリームに牛乳がちゃんと入っているところがうり。日糧製パンのもの
パンにはさまれるホイップクリームはこれまで食べたものは「ようかんちゃん」以外植物性だったのだが、ここへきて動物性の生クリームが登場である。
カロリー表示がついているのも初で、この大きさで481kcalであった。高い、が、この大きさにしてみれば驚くほどでもないと私は思いましたよ!
すべりこんで小野さんから、あんぱんにようかんをかけたタイプのパンの発見も報告された。種類あるなあ
援護射撃も頼もしく、スキマ時間を埋めるどころか旅のメインにしてもいいくらいの充実した時間であった。
充実しすぎてさらに北海道のローカルパンも集まっているのでご紹介したい。お時間のある方はどうぞお付き合いください。
数で攻める北海道ローカルパンの世界
ようかんパンとの関連というよりも、愛媛のようかんを巻いたロールケーキ「タルト」の文化に近いような「ヨーカンロール」が北海道にもあった。
それにしても緑である
ようかん部分は抹茶味ではなく手亡豆という和菓子によく使われる豆が使用されていた。
和菓子のお店でもないのに(スーパーで購入)さりげなく打ち出される豆のバリエーションよ。
そういえば、パンを捜し歩いていると東京よりも(私の育った)埼玉よりも「豆パン」の扱いが大きいように感じた。甘い豆パンがあれば、しょっぱい豆パンもある。さすが豆の一大産地である。
コンビニでもベーカリーでも豆パンは気をはいていた
続いて、異様に賞味期限が長いカステラをご紹介します。
ビタミン カステーラ
味わいの懐かしさがパッケージの時点で完全に保証されている「ビタミン カステーラ」。
「ビタミン」の周りのぎらぎら感が良い
いろいろとある語りどころを抑えてまず最初に驚いたのが賞味期限の長さである。
取材日が2013年7月25日で、賞味期限が10月12日!他のパンの賞味期限が翌日であることを思うとすごい。
食べてみると、いい意味でパサっとしている。水分が感じられず確かに長持ちしそう。もともと保存食としての機能を追求するため、水分を極限まで抜いたのだそうだ。
ぱふぱふではなく、ばふばふした感じ
ザラメのついたいわゆるカステラではない、こういう焼き菓子をカステラと呼ぶ文化はなんとなく見に覚えがある。
ちなみにパッケージには第15回全国菓子博覧会 総裁賞受賞とあり、いつの博覧会だろうと思ったら昭和36年だそうだ。生ける伝説である。カステラだけど。
なんとまだあるぞ。続いてはブラックサンダーの、おまんじゅうです。もはやパンですらないですがこれは紹介しないわけにはいかないでしょう。
おまんじゅうのブラックサンダー
なぜ、まんじゅうに
あのブラックサンダーにおまんじゅうがあったのだ。
北海道を皮切りに東北、中部でも売られているらしい。食べると驚くほどあのブラックサンダーがおまんじゅうとして再現されていた。
完全にあのブラックサンダーがおまんじゅうになっている
その再現の見事さに返って「なぜ」の思いが強まる。なぜ、こんなにも完璧におまんじゅうに。
おいしいから黙らされるものの、黙らされながら心で「はて…」と言っている。
ちなみに実はここまでのヨーカンロール、ビタミンカステーラ、ブラックサンダーまんじゅうは小野さんの差し入れであった。パン探し術が卓越していて弟子入りしたい。
私もまけじと、きんつばみたいなパンと青い食パンを見つけてきたので最後の最後に紹介します。
ほぼ「でかいきんつば」
世にあんこ量の多いあんぱんというものは多いと思うが、そこへ堂々名乗りをあげるパンである。
サイズは普通のあんぱんサイズ
サイズ的には普通なのだが、重い。
パンの重さではないのだ。普通のパンが羽毛だとしたら鉛かという重さなのである。名前の「どっしり」以上だ。「ずっしり」でも足りない。
このパンの凄みは重さに尽きる。写真では伝わらないのがもどかしい
これだけのあんこ量なのでさぞかし甘さは控えめだろうなと思ったが、意外にちゃんと甘くて完全に負けた気持ちになった。
青い食パン
北海道旅行のスキマ時間の過ごし方をおすすめするはずが、ずいぶん遠い地平にやってきた。
ようかんパンでスタートさせた当記事は、青くなった食パンをご紹介して幕を閉じたいと思う。
Photoshopで色塗りしてません!
「ようかんちゃん」のhokuoで見つけた「ブルーハワイ食パン」である。
hokuoのホームページで見て戦慄してからその気持ちはやがて憧れに変わり、念願かなって買うことができたのだ。
店ではこのパンを使ったフルーツサンドまで発売されていた。用途としてはそれが正解ということなのだろうか。
トーストしても状況は変わらず
「南国系フルーツの甘さの食パン」という触れ込み。食べてみると思ったより薄くかなり遠くから甘味がやってきた。概ねは普通の食パンの味なのだ。
青くても食パンである自覚を忘れないというまじめさが垣間見えるが、それにしても青い。
なぜ北海道だけにあるのか、なぜだ
最後は怒涛の北海道ローカルグルメ暴れ食いになってしまったが、ようかんパンである。
思ったほどようかんに主張がなく静かに美味しいというその実態には驚いた。もっと「おれおれ! ようかん! チョコじゃないよ! ようかんようかん!」と味のアピールはなはだしい物だろうと思っていたら、何か謙虚ささえ感じたのだ。
なぜ北海道なのだろう。山崎製パンが全国発売した際に北海道でだけ売れて今に至るのだそうだが、食べてみた感想としては「北海道にあるなら全国にあってもいいし、全国にないなら北海道にだってなくてもいい」そんな、しとやかさを感じるパンであった。
また食べたい。
ブルーハワイ食パンのショックで忘れられているといけないので、最後にもういちどようかんパンの写真を
Twitterでおすすめの声が多かった、日糧製パンのようかんパン。
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