特集 2012年10月18日

あなたの靴底みせてください

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靴の減り方が気になっている。というのも、(被害妄想かもしれないけど)僕だけ靴の減り方が速い気がするのだ。みんな買った靴をもっと長く履いてるのではないか。雨が染みるからではなく、「オシャレな靴に一目惚れしたから」みたいな理由で買い換えているのではないだろうか。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。(動画インタビュー)

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あなたの靴底みせてください

ちょうどこのサイトの読者の方とたくさん会う機会があって(これです)、40人ほどの人に靴の裏を見せてもらうことができた。
靴の写真ばっかりすごい集まった
靴の写真ばっかりすごい集まった
この記事ではそんな靴底漬けの毎日の中で気づいたことをご紹介したいと思う。靴底、まさに、底なしの奥深さである。(しかしそれ自体が底であるという複雑な構造!)

みんな減るのはカカト

僕はとにかく、靴のかかとが減る。いつもかかとに穴が空いて、雨が染みるようになって、しまいには石が入ってくるようになってついに買い換えである。
いま履いてる靴。ゴムはツルツルになって、下地が見え始めてる
いま履いてる靴。ゴムはツルツルになって、下地が見え始めてる
これは僕だけかと思ったらそうでもなかった。ちょっとでも靴底が減ってる人なら、みんなかかとは減っている。水は低いところに流れ、おばあちゃんの家のお菓子棚にはルマンドがあり、靴はかかとから減る。世の中そういう風にできているようなのだ。
かかとの減り方にもいろいろあって、後ろのほうがまっすぐに減る人が多いけど、外側から斜めに減る人もいる
かかとの減り方にもいろいろあって、後ろのほうがまっすぐに減る人が多いけど、外側から斜めに減る人もいる
なんとなく、内股だと内側から斜め、がに股だと外側から斜めなのかな、という気もするのだけど、正確なところは定かではない。
この人も外側に寄るタイプ。
この人も外側に寄るタイプ。
上の写真の方は、がに股だそうだ。案の定、外側が減っている。さらに昔自衛隊にいたそうで、その習慣でかかとから落とす歩き方が癖になっているそうだ。まだ新しい靴なのだそうだけど、たしかにかかとの減りが早い。ヘリが速い。(自衛隊を意識したギャグ)

指の付け根も減る

かかとはもれなく全員減るのだけど、3/1~半分くらいの人が減っているのが、指の付け根。
指の付け根というか、足のひら(?)の上端というか。つま先だけで立ったときに最も体重がかかる、あの部分である。
ここね。
ここね。
上の写真は当サイトライターの藤原さん。指の付け根、特に親指側がごっそり減っている。ちなみにこの靴は、1年間、外に出る日はほぼ毎日はいているとのこと。そのわりに長持ちしてますね、と言ったところ「他の人は毎日外に出てるから(長持ちしないん)じゃないですか」とのコメントを頂いた。
これもかかとと指の付け根が減ってる
これもかかとと指の付け根が減ってる
僕はあんまり指の付け根は減ってない
僕はあんまり指の付け根は減ってない
これも推測だけど、足を高く上げる人は、蹴る時の力が大きいから指の付け根が減るのではないだろうか。僕はあんまり足を上げずに引きずるように歩くので、着地の時にかかとがすれる距離が長い。だからかかとばっかり減るのでは。
中でも、女性は指の付け根が減りやすい気がする
中でも、女性は指の付け根が減りやすい気がする
上の写真の女性が言っていたのだけど、「ヒールを履くと底まめができるので、スニーカー履いたときも指の付け根をこすりやすいのでは」と言っていた。
「底まめ」という言葉を初めてきいてとっさに年賀状ソフトを連想してしまったのだが、そうじゃなくて足の裏にできるまめのことだそうだ。

女性は靴をメンテに出す

女性といえば、これは知らなかった僕が世間知らずなだけかも知れないけど、女性ってけっこう靴をメンテに出してるらしいのだ。えっ、と思って家で妻に聞いてみたら、「毎シーズン出してる」と言った。全然知らなかった…。
メンテしてない靴
メンテしてない靴
ヒールのある靴でメンテをしないと、かかとが減ってきて、靴全体が後ろに傾いてしまう。
本来あるべき角度
本来あるべき角度
もう芯が見えてる
もう芯が見えてる
そのうち金具が出てきて、足音がカツカツ言い始めるとのこと。ほんとうはこんなになる前に、靴の修理店で直してもらうらしい。
どおりで、ミスターミニットの店頭で待ってる女性がいっぱいいるわけだ。いままで僕は、あの人たちはそのへんで転んでヒール折っちゃった人だと思っていた。ヒール靴って危険なんだな…、と思ってた次第である。

乗り物が靴を減らす

すごく変な減り方をしている人が中にはいて、それが乗り物のせいだったりした。
前のほう、すごいえぐれてる
前のほう、すごいえぐれてる
どんな歩き方してるの、と言いたくなる減り方だが、よくよくきいてみると自転車通勤のせいかもしれないとのこと。ちょうどペダルの当たる位置が削れるのだ。普通のスニーカーでも自転車乗る人はきっと同じ場所が削れてるのだろうけど、クロックスの柔らかいゴムでそれがさらに顕著になった。
自転車は、ペダルで擦れるので親指側の側面が削れるとの意見も
自転車は、ペダルで擦れるので親指側の側面が削れるとの意見も
ここで問題。次の写真は、なんの乗り物で減った靴でしょうか?
こっちはかかとがすごい
こっちはかかとがすごい
かかとがすごく減ってる。この人の特徴は、左右比べたときによくわかる。
右よりも左の方がよく減ってる
右よりも左の方がよく減ってる
正解は、バイクだそうだ。バイクって止まるときブレーキで完全に止めると倒れちゃうので、途中からかかとで止めるそうなのだ。いつも左足のかかとで止めているので、余計に減っているというわけ。

このへん、腕のよい探偵なら、足跡を見ただけで「靴底の前のほうがえぐれている…つまり自転車に乗る職業…犯人は競輪選手か蕎麦屋だ」等と推理が働くところである。

強制的に内股

というわけで沢山の靴を見て全体的な傾向を探ってきたのだけど、最初は1足1足感心していた物が、まあ20足くらい見たあたりから、わりと見慣れてくる。そんなにどれもが個性的なわけじゃないのだ。ただ、たまにキラリと光る靴との出会いがある。ここからしばらくは、そんな靴たちをご紹介していこう。

まずは変形靴。
傾いてる
傾いてる
ある日、知人に「内股になった?」ときかれ、なんのことかと思いきや靴が傾いていたという。
内股だ
内股だ
本人は特に内股というわけではなく、なんでこんな形になってしまったのかは不明。履いてる期間も3日に1回の頻度で1年程度だそうで、そこまでメチャクチャ長いわけでもない。妖怪「靴傾け」が出たとしか思えない。
かかともよく減っていて見どころの多い靴でした
かかともよく減っていて見どころの多い靴でした

片方だけ減る

左(向かって右)だけかかとが減ってる
左(向かって右)だけかかとが減ってる
左右アンバランスに減る人はそこそこいたのだが、最も顕著だったのはこの方。右はまだ溝までちゃんと残っているのに、左は中の空洞が露出し始めている。
その理由に心当たりはないそうで、「通勤路が右折ばかりなのでは?」という僕の鋭い質問にも答えはNOであった。(それだと帰りは左折になるしな)

本人は「何か左膝に爆弾を抱えており、それをかばって生きているのでは」と言っていたが、どう見てもピンピンしているのでそれはないと思う。

単にボロい

いままでボロい靴に興味はなかったのだが、今回の調査をして以来、妙にボロいくつに愛着を覚えるようになってしまった。だって、みんな意外にきれいな靴を履いているのだ。いいじゃないか、ボロい靴でも。(以下、ボロい、やばい、等全てほめ言葉です)
靴底の前にまず上からボロい
靴底の前にまず上からボロい
初っ端から軽くテンション上がるボロさである。右足(向かって左)が特に、思わず穴の数を数えたくなる。
裏は意外にそれほどでもなかった。
かかとに穴あいてるけど、僕がいま履いてる靴も似たような物だ
かかとに穴あいてるけど、僕がいま履いてる靴も似たような物だ
なんと2003年から履いてるとのこと。9年モノである。この撮影は当サイトの10周年記念のイベント会場で行ったのだが、それに肉薄するキャリアだ。あと、この靴(と言うかオーナーか)にぐっと来たのはもうひとつ理由がある。
靴下も変!!
靴下も変!!
もらい物の適当な靴下+9年モノの靴。撮影を頼むと「よりによってこんな日に…」と言っていたけど、こんな日で本当によかった!

ちなみに当サイトのライター、地主さんもかなり古い靴を履いていて、
7年もの
7年もの

このサイズの写真だとあまりわからないが(かといって大判で載せるような写真でもないのでこのままにしますが)、そこそこボロい。
が、裏を返してみると
かなり良い減りが来ている
かなり良い減りが来ている
黒板色のクッション(?)が大幅に露出。雨の日には履けない感じだ。
ちなみに20歳の頃からの付き合いだそうである。これが恋人ならそろそろ結婚する時期だが、一方の地主さんはこの靴を履いて恋人っぽく見える写真を撮る記事ばっかり書いている。

脱着によるダメージ

まだボロい靴が続きます。靴の劣化というと歩いているときのダメージによるものばかり考えがちだが、意外に脱着のダメージというのがバカにできないのかも知れない。というのも。
がおー
がおー
ライオンに襲われたシマウマのように、ゼブラ柄がパカッと裂けてしまっている。こうなってるのは片方の足だけで、なぜかというと、
こうやって脱ぐから
こうやって脱ぐから
つま先でかかとの側面を踏みつけて脱いでいるのだそうだ。
これで1年半くらいしか履いてないというから、さきほどの9年、7年のケースと比べると、踏みつけのダメージの大きさがうかがい知れる。

究極のボロ靴

「履くのは今日で最後です」と言いながらわざわざ履いてきてくれた靴。これが今回最強のボロ靴であった。
堂々
堂々
表面のテクスチャが剥がれまくっている。これでも2年半くらいしか履いてないというから驚きである。もっとすごいのが側面から見たところで、
大口
大口
見事に靴底が剥がれているのであった。
これ、靴の曲線の関係で、自分で履いてる視点からだと見えないのだそうで、しばらく気づかず履いていたとのこと。今日帰ったら捨てるそうです。
ちなみに裏はこんな感じ。年数が浅い割にはかかとがけっこう減ってる。
ちなみに裏はこんな感じ。年数が浅い割にはかかとがけっこう減ってる。
以上、ボロい靴・傑作選でした!

みんな意外に減っていない

で、この調査をしてみて思ったのだけど、みんな以外と減ってないのだ。僕はもっとみんな、雨の染みる靴を履いてるんだと思っていた。
6ヶ月もの
6ヶ月もの
3~4ヶ月
3~4ヶ月
3~4年履いてもこれ
3~4年履いてもこれ
これに至っては6年!
これに至っては6年!
みんなきれいな靴を履いてる。頻繁に買い換えてるのかな?と思うと、意外にそうでもなくて、長く履いていても減っていない。

ちなみに冒頭に挙げた僕の靴、
これ
これ
これはまだ4ヶ月経ってないくらいである。もうすでにかかとが浸水モードだ。いつもだいたい半年で捨てざるを得なくなる。僕ももっと長く履きたいのは山々なのだが…。

靴がはやくつぶれる理由としては、履く頻度や歩き方、生活習慣とか、いろんな要因が関係しているんだろうけど、こう圧倒的な差を見せ付けられるとそれ以外にも要因があるのではないかという気がしてくる。7代前の祖先が畑仕事中にかえるを踏んでしまい、そのたたりが…とか。もう除霊しかない。

おまけ:靴の型と靴の補修

かかとが減るってわかってるんならさ、最初からかかとだけ厚く作っておけばいいのではないか。前々からそう思っていたのだが、どうもそういう訳にはいかないらしい。以前、靴の学校に通っていたという方に少し話をきいた。
靴の型を見せてくれた。これに生地を当てて靴の形を作るそうです。
靴の型を見せてくれた。これに生地を当てて靴の形を作るそうです。
人間が立つときの自然な姿勢は、かかとを少し浮かせて前傾になった状態なのだそうだ。靴底っていうのはそれにあわせて作ってある。だからかかとはちょっと厚くなってはいるんだけど、それは減ってもいいようになってるわけじゃない。減ったらやっぱり買い換えるか直すかしなきゃいけないのだ。

あと、別の方にスニーカーの底を直す「シューグー」という商品の存在も教えてもらった。今度試してみよう。

靴底はプライベート

撮影を始める前は、職業や年齢を聞きながら集めてデータベースを作れば、「靴底を見れば職業がわかる!」みたいな感じにならないだろうか、と思っていたのだ。でもどうも違うみたいだ。これは僕の印象だけど、どうも靴底にはそういった社会的な面よりも、生活習慣とか性格とか、よりプライベートな面が濃厚に現れている気がしたのだ。
あと、靴底を見せるという行為自体、普段人に見せるところじゃないため、ちょっと恥ずかしいというのもある。

そういう意味でも、靴底とは、かなり強烈に、プライベートなのだ。

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