特集 2020年5月2日

初夏と真夏の暑さの違いは高気圧の種類!〜5月の天気〜

今月の天気の流れを解説する「今月の天気」。1ヶ月という長いスパンで、その月の天気の特徴や仕組みを見ていく連載です。解説はデイリーポータルZではおなじみ、気象予報士の増田雅昭さん。ついでに、ライターが気になる天気の疑問もぶつけます。

今回は5月の天気を伺いました。(本連載は1ヶ月の見込みをお伝えするもので、詳しい予報は行っていません。詳しい予報が見たいかたは、ウェザーマップなどの専門サイトをどうぞ)

ここの文と対談まとめ:小野洋平(やじろべえ)

1977年滋賀生まれ。お天気キャスター。的中率、夢の9割をめざす気象予報士です。 好きな言葉は「予報当たりましたね」。株式会社ウェザーマップ所属。
ツイッターでも気象情報やってます。(動画インタビュー)

前の記事:桜は強風で散るのはしかたない~4月の天気~

> 個人サイト ウェザーマップ・増田雅昭 ツイッター @MasudaMasaaki

カラッとした初夏の暑さは中国からの移動性高気圧! 

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気付けばGWです。5月はどんな天気になりますか?
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5月は中国からコッペパン型の大きな高気圧「移動性高気圧」が訪れ、だんだんと暑さが勝るようになります。
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コッペパン型!
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この時期になると、海よりも熱しやすく冷めやすい特徴を持った陸地はすでに暑くなり始めています。そのため、大陸の熱い空気を持った高気圧が日本にやってくると、グーンと気温を上げてくれます。ちなみに去年の5月は北海道で39.5°を記録しました。
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北海道にも大陸からの空気が流れていくんですか?
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5月は偏西風に乗ってやってくる空気がそのまま東にスライドして、北海道に流れることが多いんです。北海道では5月に30°を超えたら大騒ぎになりますが、メカニズム的にはなるべくしてなっているといえます。もちろん、本州にも来ますよ。
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中央アジアに近い中国で発達した移動性高気圧。東にスライドするとちょうど北海道の位置
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5月はなんとなく晴れが多くて暑いイメージがありましたが、理屈上はおかしくないんですね。
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はい。また、この移動性高気圧は日本に来たあと、しばらく居座ります。3月4月は「春に三日の晴れなし」という言葉がありますが、5月の「コッペパン」は東西に大きいので長く晴れが続きます。
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どれくらい居座るんですか?
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4日から5日、長い時は一週間以上居座ります。
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GWにちょうど来てくれると最高ですね。
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やはりGWはみなさん天気への関心が高いですよね。我々も多少無理してでも早く天気予報を出したいわけですよ。それで10年ちょっと前に「今年のGWは晴天が続いて初夏のような陽気が続くでしょう!」という記事を早めに書いたら、ヤフーのトップに載ったことがありました。
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おぉ〜すごい!
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しかし、蓋を開けてみたら見事に移動性高気圧がズレてしまい、関東など太平洋側は毎日曇りだったんですよね……。あれは、苦い思い出です(笑)。
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それも北海道にズレたんですか?
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はい。言い訳ですが、その年は北海道ではGW中ずっと晴天で、初夏のような陽気が続いていましたよ(笑)。
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基本的に天気予報は点でしか見ていないから、流れとかはわからないですよね。

コッペパンのあとは梅雨前線

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この後、梅雨前線が来るのですか?
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そうです。梅雨前線の雨によって日本は冷やされ、気温の高さもいったん落ち着きます。前回のモンスーンの話題の時にも話しましたが、梅雨がなければもっと早く日本には夏が訪れているでしょうね。
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5月の梅雨前線はどの辺にいるんですか?
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沖縄と奄美大島は梅雨入りしているはずです。また時々は本州にも顔を出し、梅雨の予行練習をしていますね。
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上下する梅雨前線
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先月の話だと、梅雨前線の次は太平洋高気圧が控えているんですよね? 5月はどこにいるんですか?
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中心はハワイのあたり。太平洋高気圧は、クジラ型で太平洋の真ん中に胴体、日本の南に尻びれがあるイメージです。
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梅雨前線の南にスタンバイする太平洋高気圧
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なるほど。では、初夏と真夏では高気圧の種類が違うんですね。
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違います。だから、暑さの種類も違うんです。初夏は、大陸から来る移動性高気圧のためカラッとした暑さ。そして真夏は、海から来る太平洋高気圧のため、蒸し暑いんです。
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初夏の「爽やかな晴れ」というのはそういうことなんですね。 
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爽やかって言いたいですよね(笑)。でも、「爽やか」は秋の季語になるので、気象予報士が使うとみなさまから「ご意見」が届いちゃうんです。
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5月の天気も仕組みを知ると面白いですね。
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人間VSコンピューターは30年以上前に起きていた!?

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増田さんが世界各地の天気予報に挑んだら、どこまで可能ですか?
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どこまででも可能ですよ。日本の天気予報を出すために世界中の大気がどういう状態か、1時間先、半日先、1日先、数日先…と全球で計算していますから。
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そうなんですね。では、南米の天気担当になってもできちゃう?
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できちゃいます。前にケニアに住んでいた友達から週末の天気を聞かれたこともありましたよ。
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天気予報が簡単な地域はありますか?
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砂漠地帯は簡単です。湿気が少ないため「晴れ」と言えば的中率95%を超える地域もあるでしょうね。逆に海や熱帯地方など、大量に湿気があるところは難しいです。水蒸気が多いと、いつ雨になるかのタイミングを当てるのが難しいですから。
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例えば、よく聞く「午後は、にわか雨が強まる」みたいなレベルまで世界各地の予報はできますか?
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にわか雨もある程度は予報できますよ。世界中の風、湿度、雨量などをコンピューターが細かく計算してくれていますから。
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コンピューターが発達したことで、気象予報士の仕事も奪われつつあるんですか?
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じつは、その論争は30年以上前からあったんです。
日本でコンピューターの予報が導入されたのは今から50年ほど前。当時は実際の天気と大きくずれることが多く、使い物になりませんでした。
しかし、80年代に入ると人間の予報が中心ではあるものの、コンピューターもそこそこ当てるようになり、90年代には人間の予報に勝る場面が増えてきました。そこで、どっちが正しいとかではなく、いかにコンピューターの情報を使いこなすかという時代になりました。
そして、2000年代以降はコンピューター様様ですね(笑)。
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そのコンピューターのおかげで、世界各地においても等しいレベルで予報できるようになったんですか?
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そうですね、とはいえ、精度を突き詰めていくと、やはり現地に住んで予報の最終判断をする方が強いですね。
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なるほど。結論としては、世界各地の天気予報は可能だと。
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天気予報は、計算する格子点の縦・横・高さを細かくすればするほど精度を高くできます。
メッシュを細かくするには膨大な量を計算しないといけないわけです。しかし、それだけの計算が増えるということは、そのぶん予報が出るまでに時間がかかってしまいます。
計算しているうちにその日の天気になると、予報としては使い物にならないわけです。
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天気予報はメッシュを細かくするか、時間を短くするかのせめぎ合いということですか?
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はい。そのため、コンピューターが更新され、計算が高速でできるようになると、精度の高い予報が、より早く可能になります。現在はコンピューターの発達に依存しているところは否めません。
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となると、気象予報士の仕事も資格が作られた頃と比べて、性質が変わってきたんじゃないですか?
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90年代前半に気象予報士の資格ができた頃は、コンピューターの計算もまだ粗さがあったため、人間の考える余地、言わば今までの経験上で予測する場面も多々ありました。でも、今はコンピューターの予報をベースにどう付け加えるか、コンピューターの予測が暴走していないかのチェックがメインですね。
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ちなみに増田さんがテレビで話す原稿って誰かにチェックされるんですか?
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いえ、されていません。何を喋るかは自分次第です。喋っている途中で話す内容を変えることもあります。
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とはいえ、どの気象予報士さんもコンピューターをベースに喋っているんですよね?
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コンピューターの予報をベースに考えていますが、コンピューターも完璧ではないので、海外の気象機関が出した予測なども見比べて判断しています。そのため、「今日はこの予報で組み立て、こういう画面を使おう」などと決めて天気予報の構成を作る形ですね。
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では、気象予報士のクセなども反映されるわけですね。「派手なことを言いがち」みたいな(笑)。
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ありますね。だからこそ、勝負所を見極めるのが大事なんです。そこで大勝負にいく?ってところで大外ししている予報士もいますよ(笑)。
 

前回の答え合わせ~4月の夏日はいつか

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前回の答え合わせにもつながるんですが、4月は寒かったですね。原因はなんだったんですか?
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改めて、天気というか自然というのは、絶妙にバランスを取るな〜と感じました。今年、暖冬だったじゃないですか? やはり気温を上げすぎたら、どこかで調整するんですよ。それがまさに4月だったわけです。
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そのバランスというのは、どういう仕組みなんですか?
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この時期ですと、シベリアの寒気の残り具合がポイントですね。通常であれば、寒気が尽きたタイミングで徐々に気温が上がり、春になっていきます。ただ、今年に限っては倉庫の隅に寒気が残っていた感じですね。
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寒気の在庫か。年度が変わって、全部放出したと思いきや、奥に眠っていたんですね。
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ということは、寒気の総量は毎年変わらないんですかね?
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もちろん、年によっては変わりますけど、大きく見たら変わらないのかもしれません。
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会社だったら、年度内に放出しておかないと会計上、怒られるパターンですよね。
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その倉庫ってどこにあるんですか?
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大元は北極周辺にありますし、バイカル湖あたりにスタンバイしていることもあります。
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寒気の倉庫
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4月に在庫を放出しても、冬のような寒さにはならないんですか?
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残っていたのが気付かれないほどの在庫ですからね。マイナス何十度ではないですね。言ってしまえば、商品価値の高くない寒気です。

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先月のクイズの答え合わせですが、現時点(4月23日)では25℃を超えてないですね?
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そうですね。ただ、最終日の4月30日はコッペパン型の移動性高気圧が来て25℃を超えるかもしれません。
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回答フォームから
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回答者からも「超えない」という予想が来ていますので、答え合わせは30日を待たないといけませんね。

(編集注:4月30日も25度は超えず、クイズの回答は「4月は25度を超えない」になりました。正解者はひさをさんです。おめでとうございます!)

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そういえば、4月に雪が降りませんでしたっけ? ずっと家にいるとわからなくなる(笑)
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降ったのは3月の末ですね。降雪量は1cmでしたけど、外出自粛ではなく普段通りに人が出ていたら1cmも積もらなかったかもしれませんね。というのも、人工排熱によって冬の最低気温は少し変わりますから。

今回もクイズです

Q. 5月末時点でどこまで梅雨入りしているでしょうか?

<選択肢>
沖縄・奄美大島・九州南部・九州北部・四国・中国地方・近畿・東海・関東甲信・北陸・東北南部・東北北部

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出典:気象庁ホームページ (https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kisetsu_riyou/
tenkou/Average_Climate_Japan.html
<ヒント>
2000年以降、関東甲信で5月に梅雨入りした年
2008年
2011年
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他にヒントはありますか? 例えば、4月が寒かったとか。
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どうでしょう。絶対的な相関があるわけではありませんからね。ただ、5月前半は気温が高いと予想されています。「気温が高い」ということは「季節が早く進んでいる」ということ。そしたら、梅雨入りも例年より早いかもしれません。ただし、それは5月前半の話です。その後に揺り戻されれば、遅くなるでしょうね。
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ヒントのような、ヒントでないような(笑)。
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ちなみに先ほどもお伝えしましたが、沖縄と奄美大島は5月中に梅雨入りしていると思います。また、平年でいうと、九州南部や本州各地も梅雨入りは5月の終わり頃です。
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梅雨入りって南から順番に入るんですか? 桜は関東が早かったりするじゃないですか?
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九州より先に関東が梅雨入りすることもあります。それを含めて、どこが一番北かを当ててもらいましょう。
クイズの締め切り:2020年5月10日

西村さんが地図に興味を示して続きます

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この地域の区分けは梅雨以外でも使われるんですか?
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天気予報のメジャーな区分けになります。
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関東甲信は広すぎませんか? 関東地方と甲信地方ではかなり気候が違いますよね?
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そうですね。梅雨に関して言えば、茨城の東の海から吹く風が大量の湿気を含んでいて、関東地方は曇り空が多くなります。しかし、甲信地方との間の山は越えられず、長野と山梨は晴れていることがありますね。
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そもそも、県境で天気が変わるってこともないですもんね。
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はい。同じ県でも違ったりしますから。天気の分かれ目としては地形の影響の方が大きいでしょうね。例えば、東北北部でも、太平洋側の岩手はなかなか晴れずに梅雨明けできないけれど、日本海側の秋田は晴れていることがけっこうありますし。
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だから、天気のニュースでは「日本海側」と「太平洋側」という言葉がよく使われるんですね。
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ちなみに、最近はこのご時世のため、天気予報で言えることが減ってきています。普段なら「風が冷たいですから上着を」とか「午後は雨が降るため傘を」などと言えるのですが、そもそもお出かけを勧められないので。お出かけ日和なんて言おうものなら……(笑)。学校が青空教室にでもしてくれたら予報のしがいがありますよ。
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「今日は夜に雨が降るので机をしまってから帰りましょう」と言えますね。
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「今日は気温が上がるから、集中力が下がるかもしれませんね」とか「日焼け止めを塗っていきましょう」とか幅が広がりますよ(笑)。
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