ベトナムの麺料理はフォーだけじゃない
わたしがブンチャーに出会ったのは、つくばにある「ベト味(あじ)」という、なんとも胡散臭い看板を掲げる小さなベトナム料理店だ。
メニュー写真からは、大盛りのサラダにけんちん汁に素麺?となんだかトンチンカンな組み合わせに見える。ブンチャー、一体何者なんだろう。
3yk:フォーとブンは何が違うんですか?
クエンさん:フォーは平たい麺、ブンは丸くて細い麺です。どちらもお米の麺ですね!
3yk:きしめんとひやむぎみたいなことかな……?ブンチャチャムとブンチャチャン、名前がかなり似てるけれど、これも別物なんですか?
クエンさん:チャムは日本でいうつけ麺、チャンはスープの中に入っている麺をいいます。
クエンさん:チャは肉団子みたいなもので、どちらのスープにも入っています。ブンチャチャンはしょっぱい、ブンチャチャムは甘いです!
ブンチャー、つけ麺で、肉団子が入って、しかも甘いらしい。謎は深まるばかりである。
本当に甘くてしょっぱい、そしてうまい
ドキドキしながら待っていると、いよいよブンチャーがきた!
つけ汁と、山盛りの麺と、奥の野菜はサラダではなく麺と一緒につけ汁に浸して食べる薬味的存在とのこと。
スープの中には刻みニンニクと薄切りの人参と大根、豚バラ肉とハンバーガーのパティのような、薄いひき肉の塊が入っている。
これが本当に甘いのか・・?信じられないままスープを一口飲んでみた。
優しげな見た目に完全に騙された。全力で顎先を殴られたような衝撃。ちょっと、これは、混乱しています。
つけ汁は味付けの一環として砂糖をいれましたというレベルではない。例えるなら缶詰のシロップのような、濃厚な甘みそのものである。それでいてしっかり塩気もあり、ガツンとニンニクが効いている。
ほのかにナンプラーが香って、異国の味なのに、例える先がわからないのに、なぜかどこかなつかしいような、ふしぎなほどしっくり来る味だ。
素麺みたいなものかと想像していたブンは、思っていたよりもずっと歯切れがいい。これはすごい、するする食べられてしまう。
出会ったことのないつけ汁のパンチ力にばかり夢中になって麺をすすっていたが、トッピングも相当な威力だ。
ハンバーガーのパティみたいな見た目をしているが、確かにしっかり胡椒が効いていて、噛みしめるたびにジャンクな旨味がじわじわ染み出してくる。最高だ。
3yk:豚バラ肉とミンチ肉と、2種類も入っているのってこのお店オリジナルなんですか?
クエンさん:いや、これはどこのお店もそうですね。
3yk:へええ、おもしろい、なんで2種類いれるんだろう。
クエンさん:なんでなんでしょう、ずーっと前からどこでもそうで、僕もおじいちゃんおばあちゃんから教えてもらったから理由はわからないんです。
クエンさん:お肉を炭火で焼くのも、ベトナムでは絶対!日本のお店だとフライパンで焼いているところも多いけれど、ちゃんと炭で焼くのは僕のこだわりです!
インターネットで調べると、ブンチャーの味についてたいてい「甘くてしょっぱくて酸っぱい」と出るのだが、おそらくベト味では、この「酸っぱい」を後入れ式にしているようだ。
3yk:ベトナムではブンチャーはどこでも食べられるんですか?
クエンさん:はい、ハノイが有名だけど、どこの地域でも食べます。
3yk:家で作って食べることが多いですか?それともお店で食べるもの?
クエンさん:お肉が2種類で炭火で焼いたり、味付けも面倒が多いから家では作らないですね。みんなお店で食べます。お店のレシピはどこも秘密なんです。
3yk:へええ、じゃあお店によってそれぞれ味付けがちがうんですか!
クエンさん:トッピングとか、甘くてしょっぱいのは同じだけど、ちょっとずつ違いますね。
3yk:スープが熱くて麺は冷たいのも、みんな同じ?
クエンさん:スープが熱いのはどこでも絶対そう、麺が冷たいのも同じと思うな……なんでだろう、多分麺がフォーと違って細いから、あったかいと崩れてしまうと思います。
3yk:へええ、おもしろい!いろいろと聞きながら食べられてよかったです。