特集 2019年1月9日

ところで「生協」ってなんなの? 生協マニアに生協について教えてもらう

生協マニアに話をきいた

「生協」ってよく聞くけど、よく知らない。

ぼくの持っている生協に関するイメージを精一杯絞り出してみると、大学とかの売店みたいなのが生協で、あとは、コープってのがたしか生協のスーパーで、それから宅配もやってる……。といった、ぼんやりした知識しかない。

生協は、イオンやファミリーマートといった小売業の会社っぽい感じがしないかわりに、なぜかお役所っぽい雰囲気を感じてしまう。しかも、同じ「生協」を名乗っている割には、なんだか種類がいっぱいある。

いったいなんなんだ、生協って。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。

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生協マニアに話をききました

急に生協が気になりはじめたのは、熱烈な生協マニアの人に出会ったからだ。

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顔出しNGなんでアイコンで失礼します

生協マニア、略してCMさんとしておくが、CMさんは、めちゃめちゃ生協に詳しい。なんでそんなに詳しいのかってぐらいいろいろ知っているので、デイリーポータルZライター屈指の生協好き・斎藤充博さん、それから編集部の古賀さんとともに、生協についていろいろきいてみた。

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右から、編集部の古賀さん、ライターの斎藤さん、生協マニアのCMさん

ちなみに、斎藤さんは現在、パルシステムのヘビーユーザーであり、生協の商品については一家言持っている。古賀さんとぼくは、過去に宅配の生協を利用していたのだが、現在は休止しており、それ以降はとくに生協での買い物はしていない。というレベルである。

生協は生協の法律が決まってる

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生協って、同じ「生協」と名乗っているけれど、雰囲気の違う感じのものがいろいろあるのがふしぎで、「生協」というひとつの組織があるわけじゃないんですか。
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生協はそれぞれすべて別組織ですね。生協は、そもそも“協同組合”という組織です。農協や漁協、ほかは、信用組合や信用金庫といったものも協同組合になるんですが、生協はそういった協同組合のひとつで「消費生活協同組合」というものですね。
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「パルシステム」とか、「東都生協」みたいなのは、それぞれが独立した協同組合ということですか。
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そうです。日本の生協は「生協法(消費生活協同組合法)」という法律に基づいて作られていて、作る時や運営にいろいろと制約があります。そのかわり、税金が優遇されてるんですが。
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生協ってなんだか、お役所っぽい地味さがあるなと思ってましたけど、そのせいかな。でも、どうして、株式会社という仕組みがあるにもかかわらず、生協という仕組みでわざわざスーパーみたいなものを作るんですか。
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生協は、生協が必要だと思う組合員がいて、そのひとたちが協力して自発的に作る組織なんです。必要だと思う消費者が、出資金を出し合って、組合員になって、ものを買ったり売ったりする組織を作るわけです。だから、株主や、経営者が利益を追求するための組織というわけではないんです。
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株式会社は株を買って、株主になれば、経営に参加することができるわけですよね。生協は出資金を出して経営に参加するということですか?
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ざっくりいうとそういうことですが、株式会社の議決権は1株で1票ですけど、生協は出資金の多寡にかかわらず、出資した組合員は1人1票の議決権です。さらに、株式会社の株主は、別にその会社を利用してもしなくても構いませんが、生協の出資者は、生協を利用して、生協の運営にも参加するわけです。もっというと余剰金も配当としてもらえます。
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生協は、出資、利用、運営への参加が前提だが、運営に関しては組合員の中から代表者を選んで代わりに活動してもらうしくみもある

 

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あー、そういえばあるある、(出資金に応じた配当金の)お金がもらえるんですよね。
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生協によって違うと思いますけど、利率が銀行に預けるよりもいいところもあるので、知っているひとは限度額いっぱいまで出資しているようですよ
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もちろん、それって上限があるんですね。だって、上限がなければ、お金持ってる人がいっぱい預けて、すべてその人のものになってしまうから……。
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配当金が返ってくるというのは、恥ずかしながら知らなかったです。

 

世界初の生協はイギリス

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生協という仕組みがあるのは日本だけですか?
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世界中にあります。世界最初の生協はイギリスのロッチデールという町の織物工の労働者が作った「ロッチデール公正開拓者組合」が最初ですね。

世界初の生協は1844年、レンガ造りの倉庫を改造した店舗で、小麦粉、砂糖、バター、オートミールの4品を取り扱ったのが最初だ。

当時、イギリスの労働者は、非常に低い賃金で長時間労働をさせられており、薄暗く不健康な住宅に住み、混ぜ物の入った劣悪な商品を、量目をごまかした上に、高い値段で売りつけられるというひどい生活をしていた。

そこで、労働者がお金を出し合い、「混ぜ物のない正しい食品」、「正しい目方」、「掛け値なしの値段」、「現金買い」、「余剰金の配分」、「教育の重視」などの理想を掲げて作ったのが、協同組合の始まりだ。

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ロッチデール公正開拓者組合」(wikipediaより)

 

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みんなでお金を出し合って何かするっていう仕組みは、日本だと「講」ってやつですよね。富士講とか伊勢講みたいに、お金出し合って富士登山とかお伊勢参り行くみたいな。あるいは落語によく出てくる無尽講(相互に金銭を融通しあう講)とか。
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日本でイギリスのロッチデールに習った協同組合は、明治時代にできてます。さらに大正時代には、のちに日本最大の生協になるコープこうべの前身、神戸消費組合と、灘購買組合を賀川豊彦らが設立しています。賀川豊彦は、ノーベル平和賞の候補者でもあった社会活動家です。
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賀川豊彦(Wikipediaより)

 

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生協設立の経緯をみると、いわゆる労働運動と関係が深いことがわかりますね。たしかに生協っていうと、共産党とか(昔の)社会党のイメージが若干あるんですが、実際、関係はあるんですか?
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コープこうべに関して言えば、設立の経緯をみてもらうとわかりますけど、関係ないです。ただ、戦後にできた生協は、学生運動をしていた人が設立しているところもあるので、理念が近いところもあるのはたしかです。

 

いろんな生協があるけれど……

 

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この前、医療生協というものを見かけてびっくりしたんです、生協の病院があるんですよね。
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古賀さんが発見して思わず撮影してしまった医療生協

 

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生協はいろんな種類があるんですが、まず「地域生協」というのがあります。これは、宅配や店舗事業を行っている生協ですね。「パルシステム」だとか「東都生協」みたいなものがそれにあたります。
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他には「職場職域生協」(役所や大きい工場の従業員が利用)、「大学生協」(大学の学生、教職員が利用する)といろいろあって、その中に「医療福祉生協」というのがあるんですが、生協の病院というのはそれですね。僕もインフルエンザの予防接種が安かったんで入りましたけど。
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医療福祉生協は他のものとはちょっと違いますね、他のは出資している対象の名前が入ってますけど、医療福祉生協はサービスの名前ですよね。
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医療福祉生協は、公的資金からの収入が多いので、出資配当が禁止されてます。ですから、他の生協とはちょっと違いますね。ただ、この医療福祉生協はどこも経営が厳しいところが多いという話は聞きますね。
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組織あるところに生協ありなんですよ。
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そうですね、まとまった人の繋がりがあれば、作ることができるわけです。普通の生協は主婦繋がり、大学生協は大学生と教職員繋がりで、農協で繋がればエーコープ、なんでもあるんです。
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エーコープって、農協のコープなのか。
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エーコープの「A」はAgriculture(アグリカルチャー・農業)のAですね。
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あー、そういうことかー。

日本最大のコープは「コープみらい」

 

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えーと、ものすごく基本的な話で恐縮なんですが……生協の店舗(コープ)で買い物って、組合員じゃなくてもできるんですよね。
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できます。できますが、本来は組合員のための店舗ですから、出資して組合員になって利用してもらうのが基本です。ただ、いまはポイントカードシステムになっているので、出資して組合員になっている……という意識はあまりないんじゃないかな。

コープは、数千円程度で組合員になれる。上で述べたように、出資した生協に利益がでれば、出資金に応じて、配当が戻ってくる。退会する場合は、出資金は返金されることになっている。 

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かつて日本最大だった「コープこうべ」がある阪神間はコープの世帯加入率は100%越えてるらしいです。
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コープこうべ(Wikipediaより)

 

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ど、どういうことですか?
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つまり、おばあちゃんが入ってて、おかあさんも入っていれば、それで200%ですよね、家族で複数入ってるんです。だから、100%超えるんです。阪神間は店舗がめちゃくちゃあるから、みんなポイントカードの感覚で組合員になるんですね
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阪神間ってそんなにコープの店舗がいっぱいあるんですね。知らなかったです。
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百貨店タイプのコープもあるんです、JR住吉駅にある「シーア」っていう店舗ですけども。ただ、コープこうべの売上は阪神大震災のころがピークで、そのころ、約3800億円ほどあって日本最大だったと思うんですけど、いまはちょっと下がって2000億ぐらいという感じですか。
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それでもかなりの規模じゃないですか。
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今は2013年に東京、埼玉、千葉の生協が合併してできた「コープみらい」が日本最大かな。そして、2位が「コープさっぽろ」です。「コープさっぽろ」は北海道全部が営業地域なんです。
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(日本第2位の規模は)北海道の面積がでかいから?
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いや、そういうわけでもないんですが、市町村単位で活動していた生協を吸収合併していって、大きくなったんです。でも、店舗の拡大路線が祟って経営危機に陥って、日生協(日本生活協同組合連合会)から財政支援を受けたりしましたけど、それ以降は、なりふりかまわずいろいろやっている感じですね。新しい取り組みなんかも積極的やってるみたいです。
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コープさっぽろ(Wikipediaより)
 

 

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いま日本最大のコープはみらいなんですよね。
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そうです。昔は都道府県単位で活動を行うという法律の規制があったんですが、少し前に法律が変わって、県を越えての活動が可能になったんです。それで、東京、千葉、埼玉のコープが合併して「コープみらい」になりました。
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コープみらい(Wikipediaより)

 

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そうだ、そういえば「コープとうきょう」見かけなくなったなーって思ってたんだ、思い出した。「みらい」か、合併して銀行みたいな名前になりましたね。
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もともと生協として強かったのは「コープさいたま」なんですよ、店舗が多かったんで。
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店舗が多いところが強い?
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そういうわけでもないんですが、そもそもなぜ店舗ができるかというと、組合員さんが店舗を作ってくださいという要望があって、それに応える形で作るのが店舗なんです。べつに、配達だけでいいというのであれば店舗作らないんです。
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店舗が欲しいという思いが強まると店ができるんだ!
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ただ、店舗作りすぎて赤字になると、今度は組合員さんの声があり、やめにくいという面もあります。
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あー、前にテレビのニュースでもみました。やめられない事情というのを。組合員が「買い支え」するんですよね。みんな「作って欲しい」ということでできた店舗だから、思いが強いんですよね。

 

縄張りの規制がゆるくなって、戦国時代に

 

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生協は、活動地域が決まっているという話でしたけれども、例えば、大阪の枚方市と京都の八幡市なんかは、町の中を府県境が走ってますけど、県境越えて配達できないんですか?
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できないです。宅配なんかでも、こっちの家は注文とってもいいけど、県境越えた向かいの家はダメ。みたいな例はありますね。ただ、さっきもいいましたけど、法律が変わって、隣の県まで行けるようになった。だから、コープみらいみたいに、越境して合併したり、活動したりすることはあります。
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国取り合戦みたいだ。
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かつて日本最大だった「コープこうべ」は、ダイエーとガチンコ対決してたんですけど、阪神大震災でどっちも大ダメージを受けて、ダイエーの方に至っては、イオンの子会社になっちゃった。で、それでコープが勝ったというわけでもなく、外から他のスーパーがどんどん攻め込んできているという状況ですね。
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戦国時代だ……。
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